第2話 RAVEN’S NEST始動
リーグ開幕発表配信が終了した翌日。
都内にあるRAVEN’S NEST本社の会議室には、格闘ゲーム部門の主力メンバーが集まっていた。
大型モニターには先日発表されたリーグロゴとDivision Fの所属チームが映し出されている。
神谷蓮は少しだけ緊張しながら席に座っていた。
REVOLT MAJOR優勝。
その肩書きによって周囲からの視線は確実に変わった。
だがリーグは個人戦ではない。
ここにいる全員がトッププレイヤーだ。
「全員揃ったな」
部屋に入ってきたのはチームオーナーの鷹宮蓮司だった。
その後ろには監督とアナリスト陣も続く。
自然と室内の空気が引き締まった。
「改めて言うが、今年のリーグは過去最大規模だ。12チーム、ホーム&アウェー制、そしてプレーオフ。個人戦とはまったく別物になる」
モニターには各チームのロゴが映る。
BLACK WOLF。
AEGIS。
METEOR。
GENESIS。
VORTEX。
そしてRAVEN’S NEST。
どこを見ても強豪しかいない。
「個人戦なら自分が勝てば終わりだ。だがリーグは違う。一人が勝ってもチームが負ければ意味がない」
その言葉に神谷は静かに頷いた。
九条迅が腕を組みながら笑う。
「つまり蓮、お前が全勝しても俺らが負けたら終わりってことだ」
「プレッシャーかけないでくださいよ」
「ははっ。逆だ。俺らも背負うって話だ」
その言葉に空気が少し和らぐ。
真田誠司が資料を眺めながら口を開いた。
「問題はオーダーだな。同じ実力なら相性が勝敗を決める」
「リーグ戦はそこが面白いんだよ」
黒崎豪も続く。
「誰を先鋒に置くか。誰を大将に置くか。どの相手に誰を当てるか。それだけで結果が変わる」
個人大会では考える必要のない要素だった。
神谷も理解している。
世界トップクラス同士なら実力差などほとんどない。
最後に勝敗を分けるのは相性と戦略だ。
そこへ女性メンバーの藤堂玲奈が口を開く。
「正直、PHOENIXと当たる時は大変そうね」
誰もが理由を理解していた。
皇恒一。
日本最強と呼ばれる男。
そして桐生蒼真。
白石美月。
リーグ屈指の戦力を抱える優勝候補。
神谷も自然と表情を引き締める。
REVOLT MAJORで頂点に立ったとはいえ、皇との実力差が消えたわけではない。
むしろ追われる立場になった今だからこそ、さらに厳しい戦いが待っている。
「気になるか?」
九条が横から聞く。
「もちろんです」
「いい顔だ」
九条は笑った。
「リーグは長い。焦るな。個人戦みたいに一日で終わらない。何週間も続く。その中で成長したチームが最後に勝つ」
その言葉には重みがあった。
何度も全国リーグを経験してきたベテランだからこそ言える言葉だった。
会議はさらに続く。
各チームの特徴。
予想されるオーダー。
警戒選手。
過去の対戦データ。
アナリストが映し出す資料は膨大だった。
神谷は改めて実感する。
これは個人大会ではない。
チームで戦うプロリーグだ。
会議の最後。
鷹宮蓮司が全員を見渡した。
「RAVEN’S NESTは優勝しか目指さない」
誰も言葉を挟まない。
「去年あと一歩届かなかった景色を今年は掴む。そのためにお前たちを集めた」
そして視線は神谷へ向く。
「蓮」
「はい」
「REVOLT MAJOR優勝おめでとう。だがここからが本番だ」
神谷は真っ直ぐ見返した。
「はい」
「リーグでも証明してみせろ。お前が本物だとな」
静寂の中で神谷は力強く頷く。
その瞬間、胸の奥で新たな闘志が燃え上がった。
個人王者としてではない。
RAVEN’S NESTの一員として。
日本最高峰のチームリーグが、いよいよ始まろうとしていた。




