第3話「舞踏会と、優しい嫉妬」
王立学園・年に一度の大舞踏会。
それは、恋と陰謀と嫉妬が渦巻く――
乙女ゲー的・超重要イベントである。
そして当然。
原作ではここで私は、
ヒロインに嫌がらせをして破滅フラグを立てる。
……が。
「今回は絶対に大人しく過ごす」
私は鏡の前で固く誓った。
淡いシャンパンゴールドのドレス。
背中が少し開いた、上品だけど大人っぽい一着。
メイドが感嘆の声を上げる。
「ヴィクトリア様、とてもお美しいです……!」
「ありがとう……でも目立ちすぎない?」
不安になる。
目立つ=フラグ。
避けたい。
全力で避けたい。
大広間。
水晶のシャンデリアが輝き、
貴族たちが華やかに集っていた。
「……うわぁ」
圧巻だ。
その中で私は、できるだけ壁際へ移動する。
存在感ゼロ作戦。
すると――
「探した」
背後から聞き慣れた声。
……はい、失敗。
振り向くと、正装姿のエドワード様が立っていた。
白を基調とした軍服風礼装。
金の装飾が映えて、反則級にかっこいい。
(これは……国宝では……?)
思わず見とれてしまう。
……ダメダメ!
「こ、こんばんは。殿下」
「……綺麗だ」
ぽつり。
直球。
私は固まった。
「え、えっと……あ、ありがとうございます……」
視線をそらす。
すると、彼は少しだけ眉を寄せた。
「……僕と、踊ってくれる?」
来た。
原作イベント。
本来ここで私は横柄に断る。
→破滅。
なので――
「は、はい! 喜んで!」
即答。
生存優先。
音楽が流れ、私はエドワード様と踊り出す。
リードが上手すぎる。
完璧すぎる。
私は必死で足元を見る。
「……緊張してる?」
「そ、そんなことありません!」
嘘です。
心臓爆音です。
彼はくすっと笑った。
「可愛い」
やめて。
心臓がもたない。
曲が終わり、拍手が起こる。
「ありがとう。楽しかった」
「こちらこそ……!」
ほっとする。
よし、無事終了――
と思った、そのとき。
「ヴィクトリア様」
声をかけてきたのは、
伯爵家の令息・アランだった。
爽やか系イケメン。
原作では当て馬ポジ。
「次は、僕と踊っていただけませんか?」
……え。
フラグ!?
私は固まった。
断ると角が立つ。
受けると修羅場。
どっちも嫌。
迷っていると――
「彼女は、僕の婚約者です」
低い声。
隣に、エドワード様。
笑顔。
でも、目が冷たい。
「次の曲も、僕が予約している」
……予約?
そんな制度あった?
アランは苦笑した。
「失礼しました」
去っていく。
私は青ざめた。
(こ、殺気……出てたよ……)
その後。
私は飲み物を取りに一人でテラスへ。
「はぁ……疲れた……」
夜風が気持ちいい。
――と。
「どうして、他の男を見るの?」
背後。
低音。
……来た。
振り向くと、エドワード様がいた。
「え、み、見てませんよ!?」
「嘘」
即断。
彼は私の手首をそっと掴んだ。
強くない。
でも、逃げられない。
「……怖かった」
意外な言葉。
「君が、奪われる気がして」
私は言葉を失った。
「だから、少し……嫌だった」
……え。
嫉妬、可愛くない?
いや重いけど。
「殿下……」
「でも、束縛しすぎたかな」
不安げな目。
反則。
私は慌てて首を振った。
「い、いえ! そんなこと……!」
すると、安心したように微笑んだ。
「よかった」
そして、そっと額に触れて囁く。
「……誰にも、渡さないけど」
優しい声で。
怖い内容。
(やっぱりヤンデレだーーー!!)
その夜。
私は日記に書いた。
【作戦③:舞踏会で存在感消す → 大失敗】
【殿下の嫉妬、可愛いけど危険】
【逃亡計画、真剣に考える】




