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キルギス国での婚約式

前半:キルギス国-ソフィア目線

後半:キルギス国-ロバート目線

ソフィアはキルギス国の第一王女として生まれ、今年で18歳になった。


真っ白な肌に、蜂蜜色の髪、青い目を持つ美しい女性で、昔からキルギス国で読まれている絵本「火の国と氷の国」に出てくる氷の精霊に似ている。氷の精霊はこの国の名所であるネモフィラの丘に住んでいるとされていて、やや引きこもり気味であまり人前に現れない事から、いつしか人はソフィアの事を「ネモフィラの丘の精霊姫」と呼び始めた。


ソフィアは小さい時から人見知りで、外で遊ぶより、1人で読書をしたり、刺繍や編み物をするのが好きだった。社交界デビューをしてからも、どうしても出る必要があるパーティーやお茶会以外は王宮内の自室、図書室か温室で過ごす事が多かった。


だから国同士の絆を深める為にハバナ国の王族との結婚話が出た時も、兄とハバナ国の王女が結婚すると思っていたので、まさか自分も同時に結婚するとは思ってもいなかった。


しかもその相手が遊び人と噂されるハバナ国の王太子ロバート様。


王太子妃となれば、将来は王妃として国を代表しなければいけない。人見知りだからと言って許されるものではない。


でもソフィアは人前に出る事は苦手だが、一対一で慣れている相手なら、しっかりと意見が言える。

永久凍土の貴公子と言われる兄に意見を求められたら、自分の意見を理路整然と堂々と言う姿はいつものソフィアからは想像できないほどだ。


そして今、ソフィアは婚約式の為にロバート様から送られてきたドレスを前に固まっている。これを私に着ろと。。。いくらハバナ国が暑いとはいえ、これは布面積が少ない気がする。


メアリーは可愛いと言っているが本当だろうか?羞恥心を隠して、何とかドレスを着て、婚約式の会場の入り口で初めてロバート様とお会いした。


ロバート様は小麦色の肌、金髪に緑の目の背の高い爽やかな青年だった。歳は同じ18歳のはず。


「これはソフィア様、初めまして。私の贈ったドレスが素晴らしく似合っている。こんなに美しい方の婚約者になれて、私はなんと幸せな男なのでしょう」


スラスラと言われる甘い言葉に私は真っ赤になって何も言えなくなってしまった。


ロバート様はそんな私の手をとって、私を会場の中にエスコートしてくれた。


ロバート様は噂通りとても社交的で、どの方とも気さくに話されている。そしてその間もロバート様は私の手を握ったままだった。私はその握られた手が気になってしまい、婚約式の間の記憶があまり無い。


なのでロバート様に私の渾名の由来になったネモフィラを見てみたいと言われた時はびっくりしてしまった。どうやら、私が上の空になっている間に他のゲストから聞いたらしい。


「ロバート様、ネモフィラの咲く時期は春の季節の初めの2週間なので、もう時期が過ぎてしまいました」と言うと。


ロバート様はにっこり笑って、

「では来年の結婚式前に一緒に見にきましょう」と言ってくれた。


婚約式が終わり、私を部屋までエスコートしてくれたロバート様は、私の手をとり、指先にキスをして「おやすみ僕のお姫様」と言って部屋に戻って行った。


ロバート様の第一印象は噂と違い、優しくて誠実そうな方だった。


…………………………………………………


3日間の船旅を終え、俺はキルギス国の港に立った。雪で閉ざされている国と聞いたが、今は春の季節なので暖かく活気に満ちている。


船旅で体が鈍ってしまったので、荷物だけを馬車に乗せて、俺は従者と街を歩きながら王城に行くことにした。


従者は「ロバート様、ここには婚約式で来ているんですからね、貴方はこの街では目立つんですから、素敵な女性がいても追いかけてはダメですよ」


「わかってるよ、未来のお花嫁さんに悲しい思いをさせる訳にはいかないからね。それにしてもキルギス国の女性は色白で清楚系美人が多いな。我が婚約者殿に会うのが楽しみだ」


王城に着くともうすでに先に送っていた荷物はソフィア様に届けられたとの事だ。


俺も案内された部屋で着替えをして、婚約式の会場の外でソフィア様を待つ。


ソフィア様は本当に美しい女性だった。俺の贈ったドレスがよく似合っている。ハバナ国の伝統的なドレスと言ったが、俺好みでややスカート丈などが短くなっている。俺の従者はそれを見て、こっそりため息をついていた。


しかし、彼女は人見知りなのか何を言っても、真っ赤になってしまう。

この手のタイプは男慣れしてないから、優しく、誠実な男を演じればいい。


手を握っただけで真っ赤になったり、ネモフィラを見に行く約束をすると本当に嬉しそうに笑った。ソフィア様を部屋までエスコートをして、自分の部屋に戻ってきた。


「ロバート様お疲れ様でした、婚約式はどうでしたか?」と従者がジャケットを取りながら聞いた。


「楽勝だね、僕の婚約者様はもう俺にメロメロなんじゃないかな」


「さすが、いろんなタイプと節操なく付き合ってきたロバート様、どんなタイプでも完璧対応ですね」


「お前それは褒めてないだろう」


ソフィア様の第一印象は扱いやすそうな女だった。もう少し骨のある女の方がよかったが、美人だし問題はない。でも何か心に引っ掛かるものがある。




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