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心中戦隊  作者: nasuda
7/10

七 都合が良すぎて

 七海に諭されたものの、誰もいない明希のデスクを見るとやはりイライラしてしまう。

 いないなら、伝言の一つも残せば良いのに。

 あたしはイライラしながら、デスクに向かっていた。

「楡松警部だけど、県警から苦情が来てるんだけどなにやったか知らない」

 先ほどまで電話に向かって頭を下げていた同僚の刑事が、電話メモを片手に聞いて来た。

「知りませんよ、勝手にフラフラしてるんだから」

 つい声が大きくなる。

「え、ああ、そうとにかく、連絡が来たら伝えといてね」

 同僚の刑事は、多少引きながら自席に帰って行った。

 だめだなー、もう関係ない人にも当たり始めてるじゃん。

 あたしは軽い自己嫌悪を抱えながら、席を立った。

 課内の目が、あたしをじっと見つめている。

 あたしは、そそくさと逃げるように刑事課の部屋を出ると資料室に向かった。

 大島医師が言うとおり、五人がなんらかの特殊な捜査に従事していたなら、捜査資料に何か記録が残っているはずだ。

 とりあえずは、被疑者死亡の事件とか、未解決事件とか表向きは有耶無耶になっている事件をピックアップしてみることにした。

 ざっくりと4、5年ぐらいの期間でデータベースで検索すると、意外な事に結構な件数の事件が表示された。

 そこから、共通する内容が無いか、事件を一つ一つチェックした。

 放火、爆破それに誘拐。

 これらは共通して、被疑者死亡で終了している。

 事件発生日や概要をメモすると、あたしは一度図書館に向かう事とした。

 ピックアップした事件は結構な重大事件なのだが、あまり記憶に残っていなかった。

 おぼろげに記憶にある気もするので、報道が目立たないようにコントロールされているかも? と思い、過去の新聞を確認することにした。

 しかし、何のためのコントロール?

 首をひねりながら署のエントランスまで行くと、大島医師に出くわした。

「おや? 確か関根さん?」

「あ、先日はお忙しい中、ありがとうございました」

 社交辞令的に挨拶して、さっさと逃げよう。

 としたが、大島医師に先手を打たれた。

「いやいや、その、後事件はどうですか?」

「全然進展はないですね」

 というか、公安が情報を出さないから進んでないんですけど。と、イヤミで返さなかったあたしはえらい。

「また、何かあったらご連絡しますんで」

 それじゃあ、失礼します。とその場からあたしは退散した。

「あ、関根さん、この前のカウンセリングの話、遠慮しなくていいですから」

 立ち去るあたしの背中に、大島はこの前と同じキモい提案を投げてきた。

 いやマジで、あんたには相談しないって。

 何の成功体験なんだか、自分が相談されやすいタイプだと思い込んでないか?

 内心毒つきながら、あたしは図書館に急いだ。

 署を出て五分ぐらいの場所にある図書館は、街の中央にある大きな図書館ほどではないが、数十年分の新聞を読むことができる。

 もっともここ数年の新聞をざっと確認するだけで、目的を達成できた。どの事件も扱いは大きくはないが、小さく紙面に掲載されていた。

 そしてどの事件も、「死者は犯人と思われる一名のみ、負傷者は軽傷のみ数人」という終わり方だ。

「出来過ぎじゃない?」

 コピーした新聞を見ながら、あたしはつぶやいた。凶悪犯だけ自動的に死んじゃうとか、便利すぎないか?

 そりゃまあ、あたしたちの仕事は減って楽かもしれないけど。

 犯人が死んだんじゃ、解決になってなくない?

 一連の、一連というか少なくない被疑者死亡の事件に公安が絡んでたとして、目的がわからない。

 というか、なんで犯人殺しちゃうかなー。

 死因に詳しく触れてないし、公安とか警察の仕業なら、これはもう暗殺なのでは?

 ぐるぐる考えながら、再び署の資料室に向かった。これらの事件、犯人の死因に共通点はあるや、なしや?

 資料室にある端末に向かうと、急いで一連の事件を確認した。

「あれ?」

 どこを見ても、死因についての詳細がない。

「あれ? あれれ?」

 そう言えば、さっき検索した時にも詳細があったような、なかったような。

「どうだったかなあ」

 散漫な我が注意力を、恨むしかなかった。

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