表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実の行方  作者: hiraji
5/32

5

浦和警察署の会議室は重苦しい空気に包まれていた。

原因はたった今見終わった8分あまりの動画である。

会議室には7人いるが6人はこの動画を初めて見たところだ。

残り一人はこの動画を見つけ出した七瀬巡査部長になる。

マミちゃん動画と呼ばれるGIF動画をアップしてるサイトに片っ端から連絡を取り

どこからその動画を手に入れたのか聞き取り

慣れない英語を駆使して何人ものアメリカのブロガーとメールでやり取りをし

やっと中東の動画サイトの存在に辿り着いた時には既に2025年の3月になっていた。

そうして手に入れたマミちゃん動画のオリジナルは

血や死体は出ないものの

日本語の分かる人にとっては充分に衝撃的な動画だった。

動画の始まりの時点で既に涙と汗で化粧が崩れている30~40歳くらいの女性が嗚咽まじりに

自己紹介をし、自らの罪を告白し、最後に罪を償うためにこれから死ぬと宣言し

母親に別れを告げて動画は終わる。

問題はいくつもあった。

まずこの動画を撮った時に明らかに第三者がいたことが窺われることだ。

動画の中に時折挟まれる無音の時間があるが

その無音の間も女性は返事をしたり首を振ったり頷いたりしている様子が動画には写っていて

明らかに画面に写っていない第3者が命令なり指示なりをしていると思われる。

つまりその女性の発言は第三者に強制されたものの可能性が高い。

そして罪を償うために死ぬ。

自殺する、ではなく死ぬということは殺されるか、死ぬような状況に追いやられることも

可能性として含まれる。


七瀬巡査長は重苦しい空気を掻き分けるように説明を始めた。

「まずこの女性が間違いなく中村真実さんなのかどうかを確認しなければなりません。

自己紹介自体が第三者に"言わされている"可能性がある為に

この女性が中村真実であると自己紹介したからといって本人であるとは限りません」

「次にこの動画を誰がアップロードしたのか確認しなければなりません。

既に動画サイトの管理者とプロバイダーにメールで連絡を送りましだが返事はまだありません。

サイトの管理者もプロバイダーも中東にあり

そもそも英語が通じるかどうかもまだ分かりません。

県警のサイバー犯罪対策課に協力を受けられる見込みですが

まずアラビア語の通訳を探すことが必要かもしれません」

「それともう一つ重大な問題がありましてこの動画は今も件の動画サイトから誰でも閲覧、ダウンロード出来る状態になってます。

アップロードした人物のIPアドレスとプロバイダーを問い合わせるメールで動画の削除も要請はしましたが

すんなり削除されるかどうかはちょっと期待出来ない状況だと思います」

「この動画が日本で出回ったら大変な騒ぎになるぞ?」

石原管理官は腹から絞り出すようなうめき声で指摘した。

七瀬巡査長は頷きながら沈痛な表情のままそれに答えた。

「はい、しかし時間の問題かもしれません」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ