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真実の行方  作者: hiraji
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判決から二週間が過ぎ、検察からの控訴も無かった為に渡辺和則の無罪が法的に完全に確定した。

渡辺和則の日常は逮捕さたことなど無かったかのように以前の様子を取り戻した。

つまり、ブラックな勤務体制に逆戻りである。

拘置所に入れられていた間はちゃんと毎日8時間寝れてたから

天国みたいな生活だったよ。

と言われて同僚達はなんと返事すれば良いかかなり困ったという。

それでもちゃんと週一で休めるようになったのはかなりの待遇改善かもしれない。

それでも渡辺和則は相変わらず会社に泊まり込むことが多く、

泊まり込む時の夕食はやはり牛丼だった。


「今晩は」

渡辺和則が牛丼屋で夕食を食べている時、両脇に七瀬巡査部長と西武警部補が座って来た。

となりといっても1.5メートルは離れている。

コロナ騒ぎは過去のものとなったが密を避ける習慣は残っていた。

「ご無沙汰してます。」

渡辺和則は名前の知らない隣近所に住む人に挨拶するかのような

他人と知り合いの中間のような距離感で返事をした。

「渡辺君は一事不再理、は知ってるよな。」

西武警部補の台詞に渡辺和則は箸を止めて西武警部補を黙って見つめた。

「無罪の判決を受けたものは同一の犯罪について二度と起訴されることはない。

君はあの事件に関して無罪の確定判決を得ている。

故に今から君が何を語ろうが決してあの事件に関して罪に問われる事はない。」

渡辺和則は西武警部補の語りかけを聞いても返事をせず

視線を西武警部補から反らして湯飲みからお茶を飲んだ。

「痴漢冤罪によって君の人生が滅茶苦茶になったことには

心底同情する。もし自分が君の立場だったらと思うと本当に恐ろしいと思う。」

西武警部補は渡辺和則からの返事や相槌を期待せずに話を続けた。

「でもそろそろ彼女を家族の元に返してあげてはくれないだろうか。

もう君は完全に安全地帯にいる。

私の願いはあの事件について誰かを罰することではなく

何があったのか、或いはなかったのか、真実を知りたいだけなんだ。

仮定でも予想でもいい。今君は、中村真実がどこにいると考えてる?」


渡辺和則は西武警部補を無表情でじっと見つめた後静かに語りだした。


「法的には、俺は中村真実に痴漢した犯罪者ということになっている。

そして法的には中村真実の失踪とは無関係ということにもなっている。

法的な真実と現実の真実の間に解離があるのか無いのか

又聞きではなく自分の体験で、本当の意味で知っているのは・・・

生きている人間では俺だけなんだよな。」

渡辺和則はそう語ると厨房に向かって

御馳走様でした、と声を掛けて立ち上がり

西武警部補に向かって言った。

「ウチの会社の社長、アイクロソフトのゲーム部門を辞めて今の会社を立ち上げたんだけど

何故アイクロソフトを辞めたか知ってる?」

渡辺和則にそう言われて西武警部補は驚いた。

何故今その話を?と西武警部補が尋ねるよりも早く

渡辺和則は牛丼屋から出ていった。


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