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当初、運転免許証の偽造、及び行使の罪で渡辺和則が逮捕されたことは
マスコミには伏せられていた。
前回、渡辺和則にしてやられたことを踏まえ
確実に中村真実の失踪に関与した罪状で逮捕状を請求できるまで
発表は控える方針だったのだ。
「インターネット喫茶で渡辺和則の指紋が一切出なかったのが不安材料ですね。
パソコンやマウスやドアノブは客が帰ったら消毒薬で殺菌するために
拭きあげられてしまうので仕方がないかもしれませんが
入会手続きの用紙からも店員以外の指紋が出なかったのが痛いです。」
七瀬巡査部長はそう言ってマスコミに発表することに反対した。
だが本命は中村真実の行方不明事件なのだ。
捜査チームは七瀬巡査部長の懸念を重視していなかった。
そして・・・・
「七回村にある渡辺和則が祖父母から相続した住宅の庭を掘り返したところ
女性ものの服と下着を発見しました。どちらもかなり傷んでいるので断定は出来ませんが
中村真実が行方不明になる前、最後に同僚に目撃された時の服と酷似しています。」
渡辺和則の祖父母宅の家宅捜索チームからの電話による報告を七瀬巡査部長は浦和警察署で受けた。
「死体や骨は無いのか?」
七瀬巡査部長は連絡してきた現地の捜査員に質問するが答えは否だった。
「骨もありましたがこれは恐らく猫の骨じゃないかと思います。」
渡辺和則は隣家の老夫婦に猫の死体を埋めたと言っていたのを七瀬巡査部長は思い出していた。
これは良くないパターンだ。服が中村真実のものだったと証明できなかった場合
渡辺和則の猫の死体を埋めただけ、という主張が通るかもしれない。
「西武警部補はそっちにいるんだよな?話できるか?」
七瀬巡査部長は電話してきた捜査員に西武警部補と電話で話せるか聞いた。
少々お待ち下さいと言われて待ったが一分もしないうち同じ捜査員が出て
「今は取り込み中で話が出来ないそうですが西武警部補は七瀬巡査部長に
中村真実の母親と連絡をとって出来ればここに連れてきて欲しいとのことです。
服が中村真実のものかどうか母親に確認させたいそうです。」
考えることは自分も西武警部補も一緒か、と苦笑いしながら七瀬巡査部長は
了解と返事をして電話を切った。
中村真実の母親と連絡付けるのは多少手間取ったものの
七瀬巡査部長は日暮れ前に七回村にある渡辺和則の所有する家に
中村真実の母親を送り届けることが出来た。
「絶対に間違いありません、これは私が娘に買った服です。」
中村真実の母親は自信を持って断言した。




