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「男なのにマミっておかしいと思わなかったの?」
『中村』名義の免許証で入会手続きをしたインターネット喫茶の店員は
捜査員に詰問されていた。
「自分もアレ?とは思ったんですけどフリガナには『ナカムラシンジツ』と書いてあったので・・・
そういう名前もあるのかな、と。」
店員に言われて見ると入会申込書のフリガナ欄には確かに『ナカムラシンジツ』と書いてあった。
そして入会申込の際に店員に提示した免許証は予想通り偽造されたものだった。
恐らくパソコンのスキャナーで免許証の画像を読み込み、
証明写真の部分を変装した自分の写真に差し替え、有効期限を書き換え、それをプリントアウトして
免許証サイズの型紙に張り付けてラミネート加工したものと思われる。
申込書に店員が書き写した免許証番号を警察の端末でチェックしたところ、
なんと更新されずに失効した中村真実本人の免許証の番号と一致した。
つまりこの偽造された免許証を使った男は中村真実の免許証を持っているか、かつて持っていたと考えて間違いない。
当たり前だがインターネット喫茶側には免許証番号を警察に照会するような機能も権限もない。
単に書類に書き写すだけだ。それでその免許証の真偽が分かるわけもない。
そして何年も前から個人情報保護が言われ出してからは
免許証のコピーをとって保管することも出来なくなっているので
店に残された唯一の物的証拠である入会申請の用紙はビニール袋に入れられて指紋採取に回された。
渡辺和則の指紋はかつての痴漢事件の際に警察のデータベースに登録済みだ。
指紋が見つかれば運転免許証の偽造及び行使で逮捕することができる。
それに加えてその店でその人物が使用したパソコン自体も押収し分析することで
何をしたかも証明できる。
中村真実の動画を削除した履歴があればその男が中村真実失踪に
なんらかの形で関与したか、関与した人物と接触したことを証明できるだろう。
今度こそ絶対に逃がさない。
中村真実失踪捜査班の士気は上がった。
「県警のインターネット犯罪対策課から報告書が来ました」
遂に待望のレポートが届いた。
インターネット喫茶の入会申請書から指紋は見つからなかった。
記入時に全ての指の腹に透明なテープか何かを貼ってあった可能性が指摘されていた。
あれだけ用意周到に偽造免許証を作るくらいだから指紋を残すような初歩的なミスはしないのだろう。
だが本命はこっちだ。
パソコンの操作履歴を消し、隠蔽しようとしていたのは確かだが
インターネット喫茶所有のパソコンであるために物理的な消去が出来るわけもなく
そうであれば時間は掛かっても何をしていたかは再現可能だった。
「間違いありません、あの偽造免許証で入店した人物が中村真実の動画をあの動画サイトから削除しています。」




