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渡辺和則が中村真実失踪捜査チームの尾行、行動確認組を撒いて姿を消した日、
姿を一時的に消した渡辺和則が会社に帰って来たのは日付が変わってからだった。
尾行を撒いてからは概ね6時間後、つまり片道3時間以内の場所だろう。
所轄内の防犯カメラをしらみ潰しに調べながら足取りを追うが
途中で浦和駅に入ってからは範囲が広くなりすぎて成果は芳しくなかった。
それを一気に進展させたのは埼玉県警のインターネット犯罪課からの電話だった。
「例の中村真実の動画のオリジナルがアップロードされていた海外の動画サイトから例の動画が削除されてました。
ウチは外務省を通して件のサイトに動画の削除を継続的に要請していましたが
この削除は動画サイトが日本側の要請に従ったからでは無いようです。
動画サイトのファイルの履歴によるとこれは『動画投稿者自身による削除』となってます。」
動画投稿者自身による動画の削除。
つまり中村真実のあの動画を撮影し、アップロードした人物があのサイトに再びアクセスしたということだ。
動画削除時のIPアドレスを辿ることが出来ればその人物に近づける。
そして何よりも西武警部補が注目したのは動画削除された時間である。
サイトの履歴にあった動画削除の時間は日本時間にすると渡辺和則が
尾行行動確認組を撒いて行方をくらましていた時間のど真ん中だった。
「JR宇都宮線と湘南新宿ライン、京浜東北線の沿線全てのインターネット喫茶に聞き込みをする。
コンビニ等のWi-Fiスポットを使った可能性もあるがそれらは数が多すぎるし
店内に入らなくても駐車場から利用できる場合もあるので聞き込みの効果が期待できない。
故にそっちはIPアドレスで大まかな場所の確認が出来たらその範囲内で調べることにする。
今は取り敢えずインターネット喫茶からだ。」
渡辺和則の尾行行動確認組以外の全ての捜査員がそれまでの捜査を一端止めて
条件に会うインターネット喫茶の聞き込み作業に投入された。
インターネット喫茶自体の数が想定していたゆり多く無かった為に
直ぐにそれらしき人物を見つけることが出来た。
インターネット喫茶のカウンターで入会手続きをする男。
黄色いファッションメガネを掛けた茶髪の男。
牛丼屋から出ていった渡辺和則の服装とほぼ同じだがマスクをしているところが違った。
防犯カメラの解像度がそれほど高くない為に間違いなく渡辺和則と断言できないのがもどかしい。
そしてその男が入会手続きの時に店に提示した身分証は運転免許証で
名義はなんと、『中村真実』だった。




