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真実の行方  作者: hiraji
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渡辺和則の尾行、行動確認担当は二人一組、1日交替のシフトで張り込みをした。

が、釈放された後は一度だけアパートに帰り

その後はずっと会社に泊まり込みをしていた。

アパートの方には週刊誌の記者が何人か張り込みしていたようだが

会社の方には来ていない。

以前、渡辺和則への取材、面会を求めて幾つかの記者が会社の方に来ていたが

あの社長が対応して追い払ってからは全く来なくなった。

渡辺和則が会社に泊まり込みし続けているのは週刊誌の記者対策でもあるのかもしれない。

渡辺和則の同僚への聞き込みによると渡辺和則が泊まり込みで仕事をするのは珍しくなく

二つある仮眠室の内のシャワー室がある方は事実上渡辺和則専用の私室状態になってるらしい。

昼飯は会社がまとめて注文する宅配の弁当を食べるため

渡辺和則が会社から出るのは夕食の時だけで、その夕食は100%会社の近くの牛丼屋。

牛丼屋で食事を終えた後はコンビニで恐らく翌日の朝食にするのであろう

サンドイッチかオニギリを買ってまた会社に帰る。

その繰り返しだった。

三日に一度は赤字に白のストライプとブランド名が入った派手な大きめのスポーツバッグを持って夕食に行く。

それは帰りにコインランドリーに寄る日だ。

スポーツバッグにはコインランドリーで洗濯する着替えが入っており

コインランドリーで洗濯乾燥して持ち帰る。

渡辺和則の尾行、行動確認班がそのパターンに慣れきった12日目にそれは起きた。


「彼、遅くないですか?」

いつも通りに夕食を取るために会社を出た渡辺和則はスポーツバッグを肩から下げていた。

コインランドリーに寄る日だ。

が、いつもなら牛丼屋に入って二十分するかしないかで食事を終えて出てくる渡辺和則が

今日に限って三十分過ぎても出てこない。

「あと10分待ってそれでも出て来なかったら俺が店内に確認に入る。」

尾行班の二人は渡辺和則に顔を覚えられたく無いために

駐車場に停めた車から牛丼屋の出入口を監視していたのだ。

40分を過ぎて店内に入った尾行班の内の一人は食事している客の中に渡辺和則がいないのを横目で見ながら

確認の為にトイレへ入って驚いた。

トイレの中は無人で、洗面台の下には赤地に白のストライプとブランド名が入った

渡辺和則のものと思われるスポーツバッグが置き去りにされていたのだ。

そのスポーツバッグを見た尾行班の捜査員は無意識の内にポケットから白手袋を出して嵌めてからスポーツバッグを開き、中を見た。

中には渡辺和則が会社から出た時に着ていたシャツとズボンが入っていた。


渡辺和則を見失ったと報告を受けた西武巡査部長は尾行していた二人の捜査員をそれぞれ

渡辺和則のアパートと会社の張り込みに向かわせて

渡辺和則が何時に帰って来たかを確認するよう指示した。

その上で西武巡査部長自身は件の牛丼屋に向かい、防犯カメラを見せてもらう為の手続きをした。

本来なら防犯カメラ映像も個人情報保護法の対象であるために

建前上は警察と言えども簡単には見られない。

が、そこは建前上の話であって証拠としてカメラ映像を提出してもらうのは

後で正規な手続きを取ることにして

それとは別に西武巡査部長は店長の厚意で画像を見せてもらうことが出来た。

渡辺和則は牛丼をあっという間に平らげるとトイレに行き、

トイレから出てくる時には若者風のパーカーにジーンズ、茶髪のカツラを被り

黄色いフレームのファッションメガネを掛けていた。

そして牛丼を持ち帰りする人が待つための席に座り、少し待ったのちに他の三人組の客が帰るのに合わせて

その三人組の連れに見えるような距離で三人組の後から退店していった。

その牛丼屋は食券制だった為に退店するときに食事代金を受けとることがなく

そのせいで服装が変わった客の存在に気付かなかったようだ。

ベージュのスラックスに白ワイシャツ、それに大きなの赤の派手なスポーツバッグ。

そういう分かりやすい記号で渡辺和則を確認していたが故に

全く違う印象の服装と髪の色は尾行班の捜査員達の死角になってしまっていた。


「やられたな。」

変装した渡辺和則が牛丼屋の防犯カメラに向かって指二本を立てて敬礼して出ていく映像を見ながら

西武警部補は呟いた。

しかし、同時にこれはチャンスでもあるとも西武警部補は思っていた。

渡辺和則は尾行を撒いてまでして何処に行き、何をしたのか、或いはしたかったのか

それが分かれば中村真実失踪事件の手掛かりになる筈だと西武警部補は考えたのだ。

そしてその答えかもしれないことが三日後に判明した。

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