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真実の行方  作者: hiraji
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「俺達は一本目を取られただけだ。」

西武警部補は渡辺和則を釈放した後の捜査会議で力強く宣言した。

「二本目を取れば取り返せるんだから負けたわけじゃない」

とは言え逮捕はしたが不起訴で釈放したというのが失点なのは事実で

捜査チームの規模は半分に減らされてしまっていた。

もし今、所轄内で他に殺人事件でも起きようものなら更に半分に減らされるだろう。

何しろこの捜査班は中村真実『失踪』事件の捜査チームなのだ。

死体さえ見つかれば、という思いが西武警部補には強くある。

「捜査チームを三つに分ける。

引き続き渡辺和則の周辺の人物に聞き込みを担当する班

中村真実失踪当時の渡辺和則の足取り調査を担当する班、

渡辺和則の尾行、行動確認を担当する班

俺は科捜件やインターネット犯罪対策課やら外事課との連絡調整をする。」

西武警部補の捜査方針は渡辺和則が中村真実を『失踪させた』と決めつけたもので

それ以外の可能性を全く考えていないものだった。

「渡辺和則以外の可能性の調査はしなくて良いのですか?」

答えは予想済みだが一応質問しておく

といった体で捜査員の一人が発言した。

「良い」

西武警部補の答えは短く、誤解のしようが無いものだった。

捜査チームのリーダーがそう決定したなら捜査員達にはもう是非もない。

「渡辺和則の尾行、行動確認の必要性が良く分からないのですが?」

他の捜査員からの質問が出た。

逮捕が間近に迫っているなら逃亡の為に姿を消すこともあるだろうが

今は逮捕どころか釈放されたばかりだ。

それに中村真実失踪は5年前で今さら隠滅すべき証拠があるとも思えない。

何の目的で渡辺和則の尾行、行動確認するのか捜査員達は推し量りかねた。

「これは純粋に俺の勘だ。釈放されて容疑が晴れた今こそ

渡辺和則は何らかの行動を起こすんじゃないかと俺は思ってる。

ただみんなの意見も充分に理解できるから尾行、行動確認班は二人一組を二組、4人のみにする。」

西武警部補の方針を踏まえて尾行行動確認班以外の担当の割り振りは速やかに決まった。

そして七瀬巡査部長は渡辺和則本人の調査担当になった。

「七瀬巡査部長」

捜査会議が終了した後、七瀬巡査部長は西武警部補に呼び止められた。

はい、と返事をして七瀬巡査部長が立ち止まると西武警部補は

他の捜査員に聞こえないように声を落として七瀬巡査部長に告げた。

「死体だ、死体が必要だ。死体さえあれば殺人事件として捜査本部が立ち上がる。

捜査本部になれば人員も予算も増えて更にやり易くなる。

お前は渡辺和則の立ち回り先を徹底的に洗ってくれ。

子供時代に住んでた場所、借りていたアパート、住んでなくても土地勘のある場所

旅行でも合宿でもなんでもいいから長期滞在したことのある場所

そういう場所で死体を埋めるなり処分したりするのに都合の良さそうな場所

そういうところを探してくれ」

七瀬巡査部長は西武警部補の『能力』を聞いていて、ある程度信じていたからこそ

その指示の重大性と西武警部補の本気度が良く分かった。

これは賭けであり切り札なのだ。

中村真実の死体と渡辺和則を結びつけることが出来れば事件は解決も同然なのだから。

「了解しました」

という力強い七瀬巡査部長の返事に満足した様子を見せて西武警部補は会議室を後にした。

七瀬巡査部長は渡辺和則の過去の足跡を辿るべく捜査車両の使用申請書を取りに総務課へと向かった。


そして中村真実失踪事件の捜査班が新たな捜査方針で活動を再開して12日後に事態が動いた。

渡辺和則の尾行、行動確認チームが渡辺和則を失尾、つまり見失ったのである。

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