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「失踪する前に問題になったなってた不倫の他に彼女のせいで破綻したカップル三組くらい知ってる」
「私が言ったと言わないで欲しいんですけど痴漢の示談金で小遣い稼ぎしていたと
本人が言ってるのを聞いた事があります。」
「自分の仕事を何も知らない入ったばかりの派遣の子にやらせていたのがバレて問題になった」
中村真実の周辺からの聞き込みは惨憺たるものだった。
失踪前後の様子を知る為の聞き込みの筈が肝心な情報は皆無で
中村真実のよろしくない評判を延々と聞かされるのだ。
捜査員達の「失踪した中村真実を見つけてあげよう、探しだそう」というモチベーションは士気とともに下がり続けた。
流石に、もう迷宮入りで良くないですか?
と実際に口に出す捜査員はいないが仕事だからという義務感だけで捜査してるのが
隠しようもなく態度に現れていた。
「科捜研から動画の分析結果が来ました。」
会議室では七瀬巡査部長が中村真実の動画の分析結果を報告していた。
渡辺和則を児童ポルノの単純所持で逮捕してから二週間と少し。
勾留を延長に延長を重ねて来たがタイムリミットの23日まであと数日という日だった。
この日の捜査会議は捜査に参加した殆ど全ての捜査員が参加していた。
人数が多すぎるからか席が足らず、会議室の後方には何人か立ち見している人もいた。
「結論から言うとあの動画から新たに分かったことは殆どありません。
デジタルデータの解析や音声の分析もほぼ無意味でした。
あの動画はオリジナルの動画をモニターで再生したのを
アナログの、恐らくVHSビデオカセットで撮影し、更にそれをデジタル画像にエンコードしています。
つまりあれは中村真実さんが撮影された現場の動画ではなく
中村真実さんの動画が再生されたモニターの動画であるため
あの動画の分析結果を以て中村真実さんがどこにいたのかを推測する事は不可能です。」
七瀬巡査長の報告を聞いて会議室の一番後ろに立っていた人が手を上げた。
「最初の発言で分かったことが殆ど無いとありましたがでは分かったことは何ですか?」
あの人は確か検察で見たことあるな、と思いつつ七瀬巡査部長は答えた。
「あの動画を撮影した人物はあの動画が科学的に分析されることを
前提にして動画サイトにアップロードしたと思われます。
そのことからあの動画をアップロードしたのは極めて用意周到な
頭脳犯だということが分かりました。」
それって何も分かってないのと変わらないのでは?
会議室にいた捜査員達の心の叫びは実際に声に出されることはなかった。
質問した当人は不満そうな顔を見せることもなく
わかりました、ありがとうと答えつつ
聞きたいことは聞けたと言わんばかりに会議室から出て言った。
あの人は確か柳沢検事だったかな、と思いながらも七瀬巡査部長は会議室を見回し、
「動画の分析結果に関する質問は他に無いようなので
自分の報告は以上で終わります」
と自分の発表を締めくくった。




