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「当たり前の話だけど俺の力は裁判で証拠採用されない。」
西武警部補は続けた。
「ただ誰が犯人なのか分からない状況で証拠を集めたり聞き込みをするよりは
犯人が分かった上で、それを証明するために証拠を集めたり聞き込みをしたりする方が
効率的で効果的だ。」
「確かにそうですね。」七瀬巡査部長は答えた。
七瀬巡査部長は先ほど西武警部補が話していた指名手配犯を職務質問して逮捕した話を
別の先輩から既に聞いていた。
また、見つけた指名手配犯は三人じゃなくて本当は四人だとも。
四人目は非番だった為に勤務中の同僚警官に連絡して同僚警官の手柄にしたらしい。
西武警部補は完全に自分を信じきっている七瀬巡査部長の目を見て危ういものを感じた。
「七瀬巡査部長、俺を信じすぎるな、俺の力は科学的に証明された真実というわけじゃない、正体不明なものだ。」
はい、と七瀬巡査ブログは答えたが単に相槌をうっただけで西武警部補を信頼してますという態度を崩すことはなかった。
「まぁこの話はもういい、問題は渡辺和則だ。」
西武警部補は頭を切り替えて如何にして渡辺和則の殺人を証明するかを考え出した。
「取り調べの時の渡辺和則の態度を見て感じたんだが押収したパソコンやDVDに中村真実殺害に関する証拠やデータどころか
児童ポルノに抵触するような画像や動画も無いような気がする」
「確かに家宅捜索の時の渡辺和則の態度は落ち着いて不安を感じてるような様子が皆無でしたね。
まるで家宅捜索されるのが予想通りというか予定通りみたいな態度でした。」
七瀬巡査部長は家宅捜索の時の様子を思い出すかのように遠くを見るような目をしながら話した。
「渡辺和則の目を見た瞬間、間違いなくコイツがやったな、と思って用意してた写真集を使ったんだが
ちょっと早まったかもしれん。」
西武警部補の発言を聞いて、あー、やっぱりか、と思いつつ七瀬巡査部長は聞いた。
「児童ポルノの単純所持で起訴したらヤバくないですか?」
「ヤバいな、かなりヤバイw」
苦笑しつつも西武警部補は言葉とは裏腹に不安を感じていないようだった。
「あのアパートやパソコンから中村真実の失踪や殺人に関与した証拠が見付からない
という前提で捜査を進めよう。
中村真実が失踪した当時の渡辺和則の足取りや失踪当時の渡辺和則の周りの人間への聞き込み、
あの謝罪動画自体を更に詳細に、科学的に分析することで分かること、証明できることもあるだろう。」
「会議室の準備してきます」
七瀬巡査長は命じられる前に捜査会議の準備に向かった。




