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第十一話 特別強化試験ーー始まり

「はあ!」

 俺が振り下ろす直剣が人型魔獣の首元に突き刺さり、三つ目の試験は終わりを迎えた。

 人型魔獣五体、芋虫型魔獣三体と言う今までと比べるとはるかに難しいレベルになった適性試験だが、立派な武器も獲得したおかげで戦闘時間は前回の二倍程度に抑える事が出来た。

 アリスは最初の所で魔法の研究をしていたり、村人にばれないような森の奥地で訓練をしている。

 アリスは強い。ホーリーアローがあれば普通の魔獣くらいは倒せるはずだからと言われたので注意をするようにとだけ伝えた。


「ステータス、職業変更」

 俺がそう唱えると、職業変更画面が現れる。

 今回の試験で新しく追加されたのは、特殊戦闘員。聞いたことの無い職業だ。

 身体能力40、魔法適性7と身体能力は騎士より上で魔法適性は騎士より劣っている。そして特殊能力は陸地以外の場所で戦闘するとステータスが上昇する、とのことだ。

 まだ穴の先に行くつもりだからステータスは低い方になるだろうが、汎用性は高い様だから使う場面は多いだろう。


 とりあえず今は更に先に向かおう。

 俺は穴のさらに奥に進む。


 いつもと同じような部屋に出た所で俺は

「物理系適性試験4」

 とこれまたいつもと同じように唱える。


「……あれ?」

 しかしなかなか試験が始まらない。

「物理系適性試験4」

 もう一度唱える。


 しかし始まらない。


 何かあるのかと思い、入り口の看板を確認する。

 そこには特別強化試験1と書かれていた。


 今回は試験の名前が違うのか。

 名前からしていつもとは一味違う事が起きるかもしれない。いつもより気を引き締めて挑もう。

「特別強化試験1」


 ゴゴゴ……


 洞窟内が大きく揺れる。

 俺は剣を胸の前に構え、戦闘態勢を整える。

「さあ、何が来る……!」


 シュー―


 少し時間が経って、揺れは収まり、次に来たのは蒸気が噴き出るような音。いや、様なではなく本当に蒸気が噴き出ている。

 洞窟の壁、地面、天井のいたるところから白い蒸気が噴出されている。そして蒸気が熱を帯びているのか、時間が経てば経つほど、洞窟内の温度は上がり、汗が服に滲み始める。


「ああぁ!」

 突如、手首に痛みが走り、思わず剣を落とす。


 痛い!……のは一瞬か。

 でも、なぜかもう手首に力が入らず剣を持てない。

「がああ……!」

 もはや蒸気によって見えなくなった視界の奥から野太い唸り声が聞こえる。

「いきなり何だ!」

 叫ぶ。

 が、何も起きない。手首のような痛みは起きないし、蒸気の中に敵影も見えない。


 取り敢えず進んでみよう。

 そう考えた俺は蒸気の中を進んでいく。


 熱いな……。


「ああ、くそっ」

 集中力が削られていくのが分かる。

「はあ……はあ……」

 熱で汗が滴る。服に滲んで、多分もう搾れるレベルまでになっている。

「はあ……はあ……」

 眩暈がする。手首の違和感が焦りを助長して、より体温が上がる。

 苦しい。辛い。一度戻ろうか。


 そうだ、死んでしまったら意味がない。


 俺は踵を返して、歩き出す。しかし歩く速度は遅く、安定しない。


『彼らにだって人権はあるはずです!』

 どこからともなくそんな声が聞こえる。

 人権? 彼ら? 何のことを言っているんだ。

『所詮はステータスに支配された無感情な存在だ。思考も抵抗もしない連中が我らと同じであるはずがなかろう』

 ステータスについて何か知っているのか。

 思考も抵抗もしない存在とは俺らの事を言っているのか?


 思考も抵抗もしない?


 くっ……

「そんなわけがないだろうが!」


 次の瞬間、辺りがいきなり明るくなった。


「なんだこれ……」

 そして、目の前に広がる空間に瞠目する。


 青い空に浮かぶ……雲と島。

 いくつもの浮かぶ島が空に存在していた。


 そして、俺の服は黒色のシャツに、白色を基調とし金色の刺繍が入ったのローブを羽織り、同色のズボンと言う、明らかに貴族が着るような服装になっていた。


「一体、これはどういう事なんだ……」


「全く、探しましたよ。ご主人様」

 俺の服のズボンをスカートに変えただけと言った服装で、低身長。白髪のショートヘアの少女がいきなり、そんなことを言いながら駆け寄ってきた。


「一体あなたは……?」

「ご主人様? 一体何を言っているのですか?」

 少女は首をかしげる。

「いや、君は誰でここはどこなのかと思って」

「えっ……ご、ご主人様?」

 少女はわなわなと唇を震わせる。

「ご主人様が……ご主人様が、記憶喪失になっじゃっだーー‼」

「ちょっと大丈夫?」

 少女はいきなり泣きだして、膝をつく。


 膝をつきたいのは俺の方なんだけどな。

 まあ、どうやら俺はこの少女とどこかで面識があるようだし、きっと元から泣きやすい性格なのだろう。

 こんな意味の分からない状況だ。なにが起こってもおかしくない。

 そんな心持で、どうにかここを脱出しなければ。

「大丈夫ですか?」

「ご主人様は自分の国民に対して敬語使ったりないようー」

「自分の国民? 何を言っているんだ?」

「だから‼ 魔王さまは配下に敬語使わないっていてるんです」


「……はっ?」

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