偶然
あ、さっきのあのヒトか…。
なんかこんなの慣れてる感じだったし…。
メールには
『おつ〜!先輩と公園でキャッチボールしてるとこ。めーこは何してる?』
ん〜やっぱり慣れてる感じ。絵文字とか使い方もマメだし…まぁ、トモダチならいっか。
『お疲れさまでした。あたしは先輩とカラオケ来てるよ』
すぐに返信が来る。
『どこのカラオケ?俺も行こうかなぁ』
『エコーだよ。でも遅いからもうすぐしたら帰るけど…』
メールはそこそこにカラオケの盛り上げ役に徹する。
一通り盛り上がってきたとこで先輩に合図を送り
『すいませ〜ん、お疲れ様でした!』
ひとりで帰るかぁ…。駅まで少し距離があるけど、そこでタクシー拾えばいいし。飲んだ分、カロリー消費しなくちゃ。
駅までの道。田舎だから商店街も12時回ると照明が落ちて薄暗くなる。
人影もなく静まり返ってるとシーンとして怖かったりする。
早足になるあたし。
プルルルル…
携帯がなった。剛からだ。
『もしもし?』
『もしもし?』
『今キャッチボール終わって帰ってるとこなんだけど…まだカラオケしてる?』
『もう遅いから帰ってるとこ』
『そうなんやぁ〜。車?酒飲んでなかったっけ?』
『うん。だから駅でタクシーひろうんだ』
『あ、俺、車だから送ってくよ』
『いい、いい!もうすぐタクシーのとこだし』
何だか慣れてる感じがすごーく嫌で、このまま電話を切ってタクシーに向かおうとした時…
『あれ?めーこちゃん?』
バッタリ剛に会ってしまったのだ。
『ちょうどよかった、車すぐそこだから送ってくよ』
突然また偶然出会ってしまったことに
ドキドキしてしまうあたし。
電話で話す時と違って、嫌な感じはしなかった。
『あれ?でもお酒飲んでなかったっけ?』
『俺はウーロンしか飲んでないよ』
『そっか…』
気が付いたらちゃっかり助手席に座ってた。
変なとこに連れてかれたりしたら…なんて考えてしまう。
でもなぜかまだ一緒に居たいと思った自分もいた。
『今日さぁ、年上多かったね』
剛が話し出す。
『うん。30歳ぐらいのヒトが多かったね。誰かいいヒトいた?』
『友達増やそうと思ったけど、年上はなぁ…。俺と同じ歳ぐらいの女って結婚願望が強くてメンドクサイんだよな。』
『そうかな?あたしも結婚願望あるけど?』
『うーん…2歳の差は大きい気がする』
『だから年下の友達増やしたかったんだ。よろしくな!』
『う、うん…』
あたしを気に入ってくれたんぢゃなくて
あたしの年齢を気に入ってくれたんだね。
チョット寂しくなる。でもさっき会ったばっかだし、これが当たり前だよね?
駅から家まで近いからすぐに着いた。
『ありがとうございました…』
複雑な気分のあたしは
丁寧に挨拶した。
『またな!』
そう言うと車は見えなくなった。