やり始め初日
ぼちぼち頑張ります。
「うーん」
昨日までと同じ朝6時に目覚めてしまった。
「ふぅ、今日から仕事に行くわけじゃないのにな」
私は昨日で定年退職したおっさんだ。年金はもうちょっと先だが、それなりに貯えもあるし、嫁と息子夫婦は海外で暮らしている。まあ、家族として色々あったってことだ。でも、たまには連絡くらいしてるぞ。
一人で生活するのも何年にもなるし、今日からは何をするわけでもなく、のんびり過ごしていけばいいんだ。
ピンポーン!!
「お届けものでーす!」
ん?何だ?
ボンヤリ、テレビを見ていたらお届けもの?
配達の人も朝から大変だなぁと思いながら受け取った箱は、息子からのものだった。
開けてみると、手紙と、また何かの箱。
おー、久しぶりだなー。
「父ちゃんへ。退職お疲れさん。父ちゃんのことだから、これから適当にのんびりと考えてるだろうけど、何かやってないとボケるよー。また面倒くさいって言って、出かけたりしないだろうし。そういうことで、うちの会社のゲーム送るから、楽しんでね。特典サービスも付けてるよー。かわいい息子より。」
ゲームかー。以前は結構やってたなあ。息子が買ってきたゲームで気がつけばレベルカンストしてて、でもストーリー進めて無くてビックリされたり、なんとかドグマってのでは、ストーリーについて熱く語ったり……
うん、おっさんちょっと昔思い出して、うるってきたぞ。おっさんは、想い出に弱い生き物なんだ。お前らもそうなるんだぞ。
誰に語ってるんだ。
さてと、どんなのだろう?
「ザ ワールド なんとかかんとか日本語版」
うん、スタンドか。いや、ちょっと英語って苦手なんだ。おっさんだからね。まずタイトルなどどうでも良い。息子は父の好みを把握してるからタイトルなど良いのです。大事なことだから2回言っておく!えらい人にはそれがわからんのです!
さてと箱の裏を見ると、よくある剣と魔法のRPGぽいネットゲームらしい。さすがだ息子よ。
専用のヘッドギアっぽいのが本体なんだね。
ネットの接続して、これ付けてみればいいのか。
………接続完了っと。さてと、まぁやってみますか。
「ブィーン」
お、何かスゲー。起動してすぐに「データがありません。スキャンを開始します。……終了しました。チュートリアルを開始します。あなたの名前を……」
とりあえず、指示に従ってキャラメイクのようだ。
名前はラーズ、何となくゲームで使っていた名前だ。
その他の見た目とかは、デフォルトの設定をちょっといじったり、色を変えてみるくらいでよいだろ。
いや、待て待て。今日から毎日がフリータイムなんだから、色々やろう。
うん。こんな感じで良いかな。
そこには、おっさんとは似てもいない、長身細身のキャラがいる。イメージしたのは、若い頃読んだ小説の主人公、吸血鬼ハンターさん。イメージカラーは全身真っ黒です。
「職業、サブ職業を選んでください」
職業ねぇ、剣士、魔術士やら色々ある。ネトゲらしく、プレイヤーでパーティー組んで進めるようだ。生産職もあるので、迷うが、問題は、私は以前からMMOでもソロばかりであるのだ。とあるゲームでは、4人パーティーでも4キャラ自分で作ったくらいだ。まぁそのゲームでは、コマンド入力だったし、フレンドの応援キャラはAiが適当にやってくれたわけだが。
その頃はチャットをするのも面倒くさいって考えてたからなぁ。でも、今回もソロだろうと思う。そうすると、某有名なゲームにもあった魔物使いみたいなのが正解だと思う。
探してみると召喚士とテイマーというのが、それっぽい。どっちかだな。いっそのこと、それをメインとサブに……いやいや、あかんだろ。よく説明見よう。
ふむふむ、なるほど。召喚は契約した魔物や精霊を魔力を使って呼び出すのね。呼び出したら維持するにはコストかからない。テイムは、魔物を手懐けて仲間にする。食事とか必要だが成長の過程で進化するというのは同じかな。
よし。召喚士だな。テイムはレベル差などに影響されたり、確率だったりすると面倒だ。おっさんは、面倒くさがりなのだ。
サブ職業は、メイン職業の半分くらいの成長だが、上位職転職を考えて決めた方が良いらしい。剣士と魔術士で魔法剣士とかありがちだな。他にも、剣士と鍛冶士で力のステータスが上がるし、武器の修理もできるようになる。まぁサブはあくまでもサブなので本職には勝てないが、制作者としては遊び方を広げたいようだ。
サブは、錬金士にした。アイテムとかポーションとか自分で作れば安くなる。ここでも、おっさんは、貧乏くさいのだ。
ポチッとな。……いや、ボタンを押すわけではないが、気分だよ。
「あなたに特典が届いています。」
いきなりアナウンスが流れてきた。どうやら、このゲーム機はおまけ付きらしい。そういえば、息子の手紙に書いてあったな。
「特典は次の通りです。それぞれあなたの職業に合わせたアイテムなどです。」
へー、何だろう。まぁよくある予約特典とかみたいなものだろう。ポーション詰め合わせとか、ちょっとだけ良い剣とか、よくそういうのに飛びついて予約してガッカリしてすぐに売り払ったなあと、おっさんは、遠い目になりかける。
いや、今回こそ良い物だと思います。息子のプレゼントなんだからね。
メニューからアイテムボックスの中にある特典を見ると、3枚のカードがある。取り出してみると
取得経験値増加の札
ポーション詰め合わせ券
職業用セット券
経験値増加の札は、使用後24時間経験値を倍にしてくれる便利なもの。多分、課金アイテムだろう。
ポーション詰め合わせ券は、10個何かポーションの類いをくれるまぁガチャだ。
装備セットもガチャのようだ。
まぁガチャで良いものが出るかもしれないし。早速やってみよう。
まずは、ポーション詰め合わせ券からね。
………………ピロリン
はい、ポーション×6、キュアポーション×4 すべてランクEつまり最低ランクですよねー。
私のガチャ運なんてこんなもの。
さてさてと、セットガチャしますかね。
召喚士だと何だろうなぁ、まぁローブと杖かなぁ。
杖のような木の棒かもしれない。期待はしない。
………パッパラパッパラパッパパー
おやや、さっきより派手な演出、ちょっと期待しちゃうぞ。
何だろう。この1メートルサイズの四角い箱があるんだが。
近づいてみると、アナウンスが流れてきた。
「ラーズ様、おめでとうございます。召喚士契約モンスターです。手をかざしていただくと、モンスターのステータスが確認できます。ステータスウィンドウを開いた状態で、付けたい名前を念じ、その名前がステータスウィンドウの名前欄に表示されれば契約完了となります。」
おお!何かすごいのきたかも。いきなり、上位精霊とかかもしれない。ワクワクしてきた。
早速、手をかざして契約だ。
ふぁんと、モンスターのステータスウィンドウが開いた。種族は…。
「ロ、ロボットだと」
…………………
剣と魔法と魔物の世界のはず。
召喚士の契約モンスターで無機物ならゴーレムとかパペットが相場のはず。
「見直してみても、ロボなんだよなぁ」
目の前にあった箱から手足と頭になるような部分が出てきた。足は4本、安定性はあるようだ。
あ、名前を付けるんだっけ。しかし、ロボは想定してなかった。おっさんは、モフモフのワンコとか綺麗なお姉さん精霊とか妄想していたのだよ。
しかし、ロボだ。
ロボはロマン。メカはおっさんは子どもの頃から大好物なのである。
何だかんだ言っても、嬉しいのである。
そうであればよく見てから、名付けるべきだろう。
全体的に青みがあるグレーで形は某白いヤツに踏台にされた黒いのをデフォルメして4本足にした……下半身はキラー◯シンみたいなだ。
うん!この子、好きだわ。おっさんは、切り替えも早いのである。
名前は、決めた!大昔からロボットといえば
「名前はロボだ」
スッとステータスに名前が入った。
契約完了!
おっさんとは、センス×な生き物なのである。