09 ご近所様への愛が今試されている。
毎年流行るものがある。
それは風邪でもなければ恋でもない。
子どもたちのスカート捲りだ。
誰が最初にやり始めたのか、毎年決まって必ず始まる最早伝統といってもよいのではないだろうか。さて今回、毎年の行事に異変が起こった。
うちのミルが大好きなおねえちゃんを攻撃されて激怒したらしいのだ。
これには私も驚いたがご近所様達も驚いた。
なんといってもあの小柄でおねえちゃんっ子で人見知りのミルである。
ミルが男の子をやり返した。
これには毎年叱りつけている奥様方も呆然。私も呆然。
毎年必ず参加する男の子達も呆然。過去の参加者達も呆然。
ミルは小さい手を血で真っ赤に染めながら痛いだろうに隠していた。
ミルに叱ったが、何だかあんまり効いてる気がしない。ヴァーグ似の性格だからだろうか?まだやらかす気がする。
夜にヴァーグにも叱ってもらおうと連れて行ったら頭を撫でて誤魔化していた。
翌朝、井戸端で奥さん連合の緊急会議。私はひたすら頭を下げたが、男の子のお母さんのミランダは強かった。
「子ども達のことは子ども達にまかせな!」
この言葉で全てが終わった。
心配性な奥様方には、
「子どもの手綱はしっかりとりな!悪いのはスカート捲りなんてするうちの子だからね!巻き込まれないようにするんだよ!」
と喝を入れていた。格好いいと思ったが一番手綱を握れていない人だと後で気付いた。
その日の昼、事態が動いた。
ミルに感化された女の子達が立ち上がっていた。所謂スカート捲り被害者友の会といったところだろうか?
これに反応したのが加害者側。男の子達だ。
素直に謝ればいいのに何故かムキになって結束しだした。スカート捲りたい派閥が生まれていた。
男の子達にダメな大人が後見人になっていた。
「スカート捲りは男のロマン!それを止める事は永遠にない!!スカート捲りは不滅!!」
訳が分からない。
それにうちの旦那が噛みついた。
「うちの娘達に汚ねえ手で近寄るな!!見るな触るな消え失せろ!!」
埋まりたい。
何かを察した奥さん方が後ろから肩を叩いてくる。いい笑顔と暖かい笑顔が傷口に染みる。
「ははは!今までナアナアにしていた問題が一気に解決しそうじゃないか。良い機会だよ!男に躾は大事さ。」
ミランダさんは強かった。




