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03 俺の娘と嫁が可愛すぎてツラい。(前)

俺の娘たちは可愛い。

年々心配が強まる程に可愛い。

心配が突き抜けすぎて毎晩妻に、

「どうしよう、娘たちが可愛いすぎて浚われないか心配。」

と相談してしまうくらいには可愛い。

その度に俺の美人な奥さんは、


「私がちゃんと見ていますし、近所の関係もよいですから、大丈夫だから安心してくださいな。」


と困ったような呆れたような目でこちらを見つつ溜め息をはいて返してくれるのだが、俺はそんな奥さんの事も可愛いと思うので心配が増すのだ。

変な虫がどこからともなく湧いてきそう。

これは本当にヤバいんじゃないだろうかと思うので毎日出勤の時に、近所の奥さんで男の子どもがいないおうちの人に必ず挨拶をする。じゃないと俺の胸が心配を溜めて破裂しそう。ツラい。情けない顔してる自覚もあるのだがツラい。

俺は自分で言うのも何だが、所謂強面という部類の見た目をしている。

結婚する前より筋肉は落ちたが、元々は国の兵士をしていたのだ。

都会生まれの都会育ちが何故こんな田舎にきたのかと言えば、妻のライラに一目惚れしたから。

あんな美人な人が護衛もつけずに田舎の村からこっちまで出てきたのだ。

どうやら女友達と一緒にやってきていて、これから始まる祭りを楽しみにきたらしいのだが、正直祭りというのはそんなに良いものではないと知っている俺としては心配で仕方がなかった。この時期はハメを外した阿呆が必ず現れて兵士は見回りにかりだされる。

騎士と違い民間兵士には鎧なんていう立派なものはあまりない為、殆ど私服警備だ。

寧ろ私服だからこそ捕まえやすいのだが、俺の場合見回りの目つきが悪すぎて周りが勝手に逃げていく。

逆に荒くれ者と勘違いされてしまうこともしばしばあった。

……その日も俺は間違われていた。

突っかかってきたのは正義感強い細身の青年。そこそこに顔がよくて金髪が光に反射してまるで青年こそが正しいと主張しているようだった。


『物陰から人をジロジロ見るなんて、スリか!』


ーあー、俺は……。


『大方、金を持っている人間に目をつけようと探していたのだろう!』


ー違う、話を……


『誤魔化そうとしても無駄だぞ、すぐに兵士の人が来るんだからな!』


最早何を言っても無駄なタイプの青年だった。嫌なのにぶつかったなぁ……と今年の不幸を嘆いていると、


『あら、門の所の兵士さん』


昨日一目惚れした女性がやってきたのだ。


青年はその後、潔く謝ってその場を後にした。

少しばかり集っていた野次馬も直ぐに離れていき、俺は女性と2人になった。

感謝をのべると、女性は何故かクスクスと笑っていた。

『だって、"なんとなく苦労しそうな人"と思っていたら次の日には本当に苦労してたからなんだか可笑しくて。ごめんなさい。』


直ぐに青年を説得出来なかったのが不甲斐なく恥ずかしい気になって、少し後悔してしまう。

惚れた女性には良いところを見せたかったと思うのは仕方がない。

何となくさっきの青年がこの女性をナンパしたそうに去っていったのが気になり、少し話しをしてみるとなんとこの女性、迷子だった。


……運が良い。


おもわず感極まった。

なんとか冷静を取り繕って連れ探しを手伝う事にする。あくまで自然に、自然に……慎重に話して了承を取り付けた。

いよっっっシ!!


女性に見えない位置でのガッツポーズ。

こんな綺麗な人と祭りに一緒にいられるなんて俺の人生で最良の日なのではなかろうか。

女性の名前はライラと言った。

紫の髪がハーフアップされていて清楚な美人にはよく似合う名前だと思った。

この日の為に薄いピンクのワンピースを着ていた。年は17。目の色は知的な灰色でもうクラクラする。

そう、俺はこの短い時間で完全にのぼせ上がってしまっていたのだ。


ーライラさん、俺を貴女の護衛にしてくれませんか。貴女のような美しい人が何の護衛もなしに街に来るなんて危険すぎます。一生守ります。力には自信があります。護らせてくれるだけでいいんです。


殆ど無意識に近いプロポーズをしていた。


考えさせてください、からの翌日2日目の祭り時また迷子になっていたライラさんは俺に会いに来てくれていた。

少し距離があるが祭りの混雑。心の距離はあったが体の距離は近い。

ライラさんが人にぶつからないように、なるべく肌に触れないように気を張って歩く。


ー中々お連れさん見つかりませんね……。


『……そうですね。ところで兵士さん、兵士さんってここの生まれなんですか?』


ーはい。生まれも育ちもここです。


『兵士さんがいまの職業になったのって、なんでですか?街なら色んなものになれますよね。』


ー俺は体が強かったのもありますが、やはり父の影響でしょうか……。父も兵士をしていて、昔から職場の話を聞いて育ったので。大抵は愚痴でしたが、俺もそこに行くんだと思って身体を鍛えてましたね。


『だからそんなにお強そうなんですね。うちの村ではみんながお茶摘みの仕事をしてますから、兵士さんみたいにガッシリした人っていないんです。街にきて新鮮でした。』


ーお茶摘み……。ああ、グラース領内の南にある所ですね。あそこのお茶はこの街でもよく飲まれますよ。香りが高い内に飲めるってことで紅茶好きの観光客もいるくらいです。


『兵士さんも飲んだことが?』


ーありますね。けど俺はあんまりお茶の違いが分からなくて……。申し訳ないです。


『ふふ、いいんですよ。大抵の方は分からないと思いますから。私のお母さんなんか、飲めればいいんだーってかなり適当なんです。普通女の方がお茶に拘ると思いません?』


ーそうですね、うちは母がお茶を好んでますけど、父が適当に飲むからたまに家庭崩壊の危機になりますよ。


『え、そんなに……?』


ーあっ、冗談です。そんなに心配そうな目で引かないでください。あれはうちのじゃれあいみたいなものなので。


『驚きました。うちの茶葉が家庭崩壊おこしたら兵士さんに申し訳なくては目も当てられません。』


ーすみません、驚かせてしまって……。あ、そうだ、ライラさんは後どれくらいこの街に滞在するんですか?


『……えっと、明日には村に戻ります。その、村に来てくれる商人の人に話はつけてあって……。』


ー………………そうでしたか。


『あ、えぇっと、』


ーライラさん。その、村まで俺が護衛したら迷惑でしょうか?


『え?』


ー昨日言った事なのですが、やはり女性ばかりの道行きだと、危険だと思いますし、昨日の人が言っていた通り、祭りの間に目をつけて追いかけてくる追い剥ぎなんかもいたり、祭りの間って結構物騒なんですよ。会ったばかりの男と村まで行くのが気持ち悪くなければ……


『……兵士さんは、気持ち悪くないです。その、ただ会ったばかりなのに、と私が困惑しているだけで……。』



ー……俺も、困惑してます。こんなに人を守りたいと思ったのは初めてで。


『…………………………。私、のぼせて倒れそう。』



そうして翌日から休暇をもぎ取り、ライラさんさんとライラさんの友達を護衛しつつ俺はテオレ村までたどり着き、ご両親に挨拶した。


今度こっちに引っ越してきますと告げて。

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