剣士を襲う小鬼
戦闘描写ありです。
一刻も早く呪いを解きたい俺は教会がある町を目指す。
隣に俺に呪いを移してくれた魔女もいる。
俺に呪いを移した責任と、森の外に興味があるという理由だ。俺は後者が一番の理由だと思っている。
俺はふと魔女を見ていると、気づかれてしまった。
「なんだ、私の顔に付き物でもあるのか?」
「いや、森の外に出て大丈夫かなと思って」
「うむ、興味があるから不安は無い」
「けど、旅には野宿や危険があるから……」
「それは旅を続ける剣士様に頼る」
「俺任せか」
この魔女、しっかりしてるようでいい加減だな。
「それで、衣以外は何も持っていないと?」
「そう見えるかな?」
俺は魔女を改めて見てみる。
「見える」
「ところがそうでは無いのだ」
楽しげに焦らして見せる魔女は腰に身に付けて皮袋を取って見せびらかす。中身の無さそうだ。
「中に何か入っているの?」
「いや、入っておらん」
袋の中を見せられた。中には入っていなかった。
「からかっているの?」
俺は呆れた。すると、魔女は袋の中に手を入れていた。
「しかし、手に入れて取り出すと」
俺は驚いた。取り出した手はサンドイッチの入った篭を掴んでいた。
「な、何で!?」
「驚いたか? これは魔法の皮袋と言って、色んな物を入れて保管することができるのだ。食べ物を入れても腐ったりしない」
「すげぇー」
「他にも……」
魔女は更にティーポット、ティーカップ、敷物、小さいヤカン…………なんか、ピクニックみたいだな。けど、何でも出せる皮袋を持っているなんて。彼女はやっぱり魔女なんだな。
「昼御飯にするか?」
「まだ早いと思うけど……」
その時、俺は気配を感じる。殺気という気配を。
向こう側から小鬼が集団でやってくる。小鬼は一匹では大したことは無いが集団で現れると厄介だ。
「見た見た、その袋から、食い物、道具、いっぱい、出てきた」
「すげぇすげぇ、欲しい!」
「寄越せ、人間。さもないと、殺す」
コイツら、渡したって殺すつもりだろう。剣に斧に槍の刃を舐めている。更に後方には弓を構える奴もいるな。
考える暇も無く襲いかかってきた。
俺は奴らよりも早く携えた愛剣を引き抜いて駆け出した。
飛び掛かろうとする三匹の中心を二刀同時に突き刺しそのまま勢い良く左右に引き裂き、残りの二匹を切り裂いた。
仲間を一瞬で殺された小鬼達は呆気に取られて動きを止めてしまう。
「や、野郎!」
弓を構えていた小鬼は怒って弓矢を放つ。剣士はそれを剣で弾いた。
「剣士」
「何?」
「小鬼ら、殺した方が良いか?」
「相手は魔物だ。殺した方が良いだろ」
魔女は少し考えてから俺の隣に立つと呪文を唱え始める。
「火よ、汝の力を使わせて貰う」
「な、なんだ、女!」
小鬼達は魔女に警戒して武器を向ける。
「悪意に満ちた小鬼共…………灼熱の業火に焼かれろ」
小鬼達は一瞬で炎に燃やされた。それを見た俺は驚愕した。
「あ、あれは、魔法使い!」
「に、逃げろ!」
残っていた小鬼達は一瞬で逃げていく。
「……凄いね、魔法」
俺は思わず呟いた。
「さて…………一息入れるか」
魔女は先ほど出した敷物を広げてサンドイッチなどを置いて、ピクニックの準備を始める。先ほどの殺し合いをしたばかりなのに。
「…………呑気だな」
「魔力を消費したのだからしょうがない。お主も付き合え」
仕方がなく、魔女に付き合うのだった。
登場人物に名前を付けた方がよろしいでしょうか?