赤き魔物の正体
魔女の凄いところが見れます。
息絶えた猪熊に魔女が不要に近づく。それにいち早く気付いた魔剣士は尋ねる。
「何をする気だ?」
「これを調べてみたい」
「調べる? 魔法を使ってか?」
「いや、切り裂いて中を見る」
魔女は手持ちである魔法の皮袋から、ある小箱を取り出す。
「何だそれは?」
魔剣士の問いかけに対して、魔女は小箱の蓋を開けて見せた。それは、医者が使う手術道具だった。
「手術道具…………まさか、文字通りに切って解剖するのか?」
「そうだ」
「そんなことができるのか?」
「いや、これが初めてだ」
魔剣士は一瞬呆気に取られてしまった。
「…………初めてのくせに、やるのか?」
「やらない限り経験は出来ない」
「それはそうだが、そういうものはベテランに付いてもらうべきだろう。何事もそうだ」
「あいにく知り合いに解剖のベテランおらん」
「…………やる前に聞く。知識はあるのか?」
「うむ、人体に関する本で読んだことがある」
「そんな本も持っていたのか?」
「うむ、興味があったからな」
「…………興味本位でできるほど解剖は甘くはないぞ」
魔剣士は呆れてしまう。
「わかっておる。だから、騎士団長よ、すまぬが、団員達の手を貸してくれぬか? 」
「…………わかった。命令だ、魔女の嬢ちゃんに協力してやれ」
あっさりと許可する騎士団長に、部下である騎士団員達は驚いた。もちろん、少女騎士も。
「よろしいのですか?」
「俺も気になるんだ。少しでも原因を知りたい」
驚きつつも、騎士団長の命令に従う騎士団員達。
「沸かした湯を入れ物に注いでほしい。上半身を運んでもらえぬか?」
騎士団員達は魔女の指示に従って、猪熊の上半身を動かしてもらう。その様子をただ見守る剣士や騎士団長達。
魔女は手で猪熊の頭部に触れて摩り始める。首筋の辺りで手を止めると、ここだとメスを突き刺して切れ目を入れた。
「…………上手いな。本部で死体を解剖する医師も顔負けだ」
騎士団長は、魔女のメス裁きを褒める。彼は長年の騎士をやっている中で、医師が人間の死体を解剖する様子を見学したことが何度かあるのだ。
「…………獣でも、あまり見たくない光景です」
「見とけよ。騎士が血生臭いのに慣れなきゃ、務まらねぇよ」
少女騎士は解剖を見て、気分を悪くするが、それを諭しつつ説教をする。
「傷口を引っ張ってくれぬか」
騎士団員の二名は魔女の指示に従い、両手で傷口を掴んで引っ張ると、大きく引き裂かれる。
そして、魔女は躊躇なく腕を傷口に突っ込んだ。
それを目の当たりした全員は驚愕した。
「…………よし」と腕を引き抜いた。その腕は血に染まっていた。手に何かを握っていた。
「お湯を持ってきました」と沸いた湯を盥に入れて持ってくる騎士団員。そのまま魔女は腕を盥に入れて血を落とした。血は綺麗に落ちて、握りしめていた手を開けば、赤い蜂だった。
剣士は恐る恐ると魔女に蜂のことを尋ねた。
「それって、蜂?」
「これが違和感の正体だ」
この蜂の正体は?




