襲い掛かる赤き魔物達
久々の戦闘描写です。
遂にたどり着いた、赤い魔物が多く潜んでいる森。俺と魔女は、魔剣士を含めた騎士団と共に森へ侵入した。
昼間にも拘わらず、暗かった。本当に何が飛び出してもおかしくない雰囲気だ。
だから、いつでも対処できるようにと、騎士団長や少女騎士に団員の殆どが警戒を強めている。もちろん、俺もそうしている。
ふと、魔剣士の様子を窺うと、鋭い目付きで辺りを見る。つまり、殺気だ。
魔女の方は…………真剣な顔つきだ。馬車で弁当を食べていた時とは別人だ。
そう思っていると、突如、魔女は言葉を発した。
「…………お主たち、よく聞いてくれ。無数の殺気が近づいてくる」
魔女の言葉を聞いた、全員は驚いて行進を止めた。殺気が近づいてくる? 俺は感じないけど。
「殺気? どういうことだ?」
「言葉の通りだ。離れた距離からどんどんと殺気が無数に近づいてくる」
「…………何故、わかる?」
詰め寄ってくる魔剣士に魔女は答える。
「説明は後だ。警戒を解くのはよせ」
魔剣士は納得出来なかったが、仕方なく警戒をする。
少女騎士は警戒しつつ魔女に尋ねる。
「どこから来るのですか?」
「…………下からだ」
魔女が言うと同時に、地面から真っ赤な腕が飛び出てくる。
その場にいた全員が驚愕した。そこを付いて、腕は団員数名の足を掴んだ。
腕から頭と胴体も出てきた。それは真っ赤な食屍鬼だった。
食屍鬼は生き物の死体を餌として食べる。その為に殺戮をすることを本能にして生きている。
突如の食屍鬼に団員達は怯えてしまう。これはまずいと、俺はすぐに剣を抜いて動いた。団員の足を掴む食屍鬼の腕を斬り捨てた。
剣士と同じように動いた魔剣士も食屍鬼の腕を斬り捨てた。
腕を斬られた食屍鬼達は激痛で叫びをあげる。そして、剣士と魔剣士に首を刎ねられたり、頭部を真っ二つにされて絶命した。
「た、助かりました」
「おしゃべりは後だ。まだ来るぞ」
魔剣士の言う通り、全方向の地面から新たな食屍鬼がぞろぞろと出てくる。
そんな最中に「…………よし」と魔女は呪文を唱える。
「冷気よ、この大地を凍てつかせよ!」
一瞬の内に騎士団の周辺が全て凍てついてしまった。そこにいた食屍鬼達は氷漬けとなって動けなくなった。
「凍らせておけば、出てくることは出来ない」
す、凄い。地面を一瞬で凍らせるなんて…………。
あっ、俺以外の全員が驚愕のあまりに声も出せないようだ。そういえば、彼らは彼女の魔法を見るのは初めてだな。流石の魔剣士も驚愕しているな。
「ま、マジで魔女だったのか…………」
「…………これが魔法なんだ」
騎士団長と少女騎士は信じていなかったみたいだ。まあ、無理もないか。
「む、また殺気が近づいてくるぞ」
空気を読まない魔女が知らせてくる。って、これは正しい対応だよな。
確かに、殺気を放つものが現れた。それは、真っ赤な小鬼達だった。
「…………かつて、会った小鬼よりも殺気に満ちているな」
魔女は前に遭遇した小鬼を思い出していると、魔剣士が魔剣を抱えて走り出して小鬼達を一瞬で薙ぎ払った。先ほどの驚愕していたのに、素早い対応の変更だ。
「お、おい、俺達もやるぞ!」
騎士団長の号令で騎士団は我に返って、小鬼達の討伐を開始する。もちろん、剣士もだ。
それに対して、殺気立った小鬼達は恐れもしないで騎士団達に向かっていく。そんな小鬼達を騎士団は必死で討伐していく。
その結果、小鬼達は全滅。氷漬けされた食屍鬼も止めを刺しておく。
剣士や魔剣士、そして騎士団も疲労で息を切らした。
「もうこれで……」
「いや、まだ来るぞ」
「ええっ、また!?」
「こんな頃合いに…………狙っていたのか?」
新たなる殺気を感じた魔女は指をさした。さした方向から物音が轟く。それは木を倒す音だった。
それは、猪のような顔と熊のような胴体をした、真っ赤な魔物だった。
「猪熊か。こいつも真っ赤で凶暴化しているな」
魔剣士は魔剣を上段に構えると、猪熊は突進して襲い掛かる。魔剣士の間合いに入った瞬間、魔剣は素早く振り下ろされた。猪熊は頭から胴体を一刀両断にされた。
あっという間に猪熊を倒した魔剣士を目の当たりにした剣士は息をのんだ。
「…………やはり、アイツは恐ろしい」
俺は魔剣士に勝つことができるのだろうか。
いかがでしょうか? 猪熊は自分のオリジナルです。感想があれば嬉しいです。