表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣~魔女と剣士が旅をする物語~  作者: 氷刃竜
出会いから始まりへ
18/22

馬車での対話

今回は闘いはありません。

 朝方、領主の屋敷の外側にて、騎士団長の号令と説明が始まった。その際、俺と魔女が騎士団長の背後に立っていた。おまけに、隣に魔剣士もいた。

 そして、騎士団長の、豪快な説明が始まった。


「お前ら、話を聞いて気合を入れやがれ! ここの領主殿の情報によると、例の赤い魔物は、東のはずれの森で何度か目撃されたらしい。その森を調査することと決定した! 森なだけに赤い魔物以外にも魔物が潜んでいても不思議ではない。だから、全て現れる魔物は敵だと思え!」


 大声で分かりやすい説明。騎士団の皆さん、流石に緊張しているな。


 俺はふと、魔女を見る。魔女は呑気に朝食のサンドイッチを食べて満足している。

 おいおい、この魔女は自分の立場をわかっているのか? ちゃんとやらないと、命を奪われると言うのに。


 昨夜の領主が申し出た、魔女助命の条件。それは、東のはずれの森へ行き、赤き魔物達を退治する。それを魔剣士が見届けて報告する。雇っている魔剣士の報告次第で助命が許される。


 問題は、魔女が赤い魔物を退治できるかどうかだ。そこで、俺も助っ人として同行したいと領主に掛け合って承諾を得ることができた。


「そう、不安になるな。運がいい事に、魔物撲滅しか考えていない冷血魔剣士様がついて行くことになったぜ!」


 うわっ、酷い紹介。この騎士団長は冗談で言っているのか? 豪快だから、素で言っているのか?

 でも、当の魔剣士は気にしていないようだ。


「魔剣士、お前から何か言うことは?」


 魔剣士はため息を吐きつつ、騎士団の前に立って、こう言った。


「足を引っ張るな」


 これを聞いた騎士団は、


「ざけんな!」「死ね!」「なめんな!」と当然の如く怒り出した。


 …………確かに冷血だな。


「がっはっはっはっ! やる気満々になったな!」


 なるほど、これは騎士団長の作戦か。流石は、騎士団を率いているだけのことがある。


「あのう、剣士さん」


 少女騎士が二本の剣を手に抱えてやって来て、俺に差し出す。


「良ければ、これを使ってください」

「この剣は?」

「私の、予備の剣です」


 俺は一本の剣を取って、抜いてみた。その剣の刀身は綺麗で質が良さそうだった。


「良い剣だ。俺の持っていた剣よりも」

「はい、騎士団の武器はそれに似合った質の良い武器を支給されるんです」

「ということは君は強い騎士だね」

「そ、そんな…………」


 少女騎士は顔赤くして照れてしまうと、


「ほめ過ぎだ。そいつは、まだガキだ」


魔剣士が余計な一言を言ったので、少女騎士は顔を赤くしながら睨みつける。魔剣士は全く気にしていない。

 

「えーっと…………本当に借りてもいいの?」

「勿論です。危険な場所へ向かうんですから。武器を持たないと」

「…………ありがたく貸してもらうよ」


 俺は二本の剣を受け取り、腰に携えた。

 ふと、魔女は何を持っていくのだろう? とりあえず、聞いてみよう。


「そういえば、魔女が持っていくものは?」

「うむ、お弁当だ」


 魔女はお弁当が入っているらしいバスケットを掲げて見せる。

 

「………どうしたの、そのお弁当?」

「ここのメイドに頼んで作ってもらった」


 よく作ってくれたね、メイドさん。てかっ、自分の立場をわかっているのか?


「ほう、魔女なら本とか大鍋とかを持っていくのかと思ったのだがな」

「本も大鍋も家ごと燃えた」

「ああっ、領主の手先に燃やされたんだけっ?」


 騎士団長は、向こうにいる領主の手先こと、眼帯の男とガラの悪い男達を見る。

 奴らが森の案内人として付き添うことになっている。


「心配するな。頭に本の知識を蓄えておるので、読まずとも魔法は使える」

「へぇー、そうなのですか」


 少女騎士と騎士団長は驚く。もちろん、俺もだ。


あの方々(眼帯の男達)は信用できます?」

「案内したら、逃げるんじゃないのか? まぁ、それはそれで足を引っ張られなくて助かるが」


 どうやら騎士団長は信用していないみたいだな。俺も同感だ。


 準備を終えた俺や騎士団は、東のはずれの森に向けて出発した。移動は、馬と馬車。俺と魔女は馬車に乗ることにする。


 それを見届けた領主は傍にいる、使用人に指示を下す。


「すぐにここを引き払う」

「わかりました」

「…………計画とは違うが、領主ごっこはお終いだな」


 馬車の中はいたたまれない空気に包まれていた。それは、俺と魔女と少女騎士と魔剣士の四人の身だったからだ。

 しかし、魔女は意を貸さずに、呑気に食事をする。

 この空気を変えるには、誰かが会話のきっかけと。魔女は…………期待は――。


「お主に聞きたいことがある」と少女騎士に尋ねる。


 ええっ、この魔女が会話を始めた!? 一体どんなことを聞きだす気だ?


「は、はい」

「…………聖騎士団はどんな料理が出る」


 こいつ、食べてる最中に別の食べ物のことを聞いている。まだ足りないのか? 少女騎士も呆れているよ。


「…………他に聞くべきことがあるのじゃないのか?」


 呆れ気味の魔剣士が会話に参加した。


「他にとは、なんだ?」

「例えば…………聖騎士団とは何なのかとか、俺の魔剣のこととか」

「いや、興味はない」

「…………仮にも、お前を殺そうとしたのだぞ、俺は」

「…………その時はその時だ」


 魔女の突拍子ない返答に、俺も少女騎士も呆れてしまう。


「あ、貴女は自分の命を何だと思っているんですか?」

「生きている証。生きている限り生きるべしと考える」

「そ、そうじゃなくて、命の危機に瀕したら逃げようと思わないのですか?」

「うむ、可能性があれば逃げる」

「では、俺から逃げようと思わなかったのか?」

「逃げれば、お主は私を殺すことはできないのか」

「いや、逃がさずに殺す」

「では、可能性がないのなら、それまでだ」


 魔女との対話の結果、魔剣士は一本取られたと呆気に取られる。少女騎士は悩んでしまう。

 本当に、魔女との対話は相手の揚げ足を取るのが上手いな。


「…………お前の、その意を付くところには敵わないな」


 俺も魔剣士に同意見だ。しかし、納得できなかった少女騎士は会話を続ける。


「確かに生きている証と生きている限り生きるべしというのは正論です。けど、納得できないところもあります」

「納得できないところ?」

「もう少し、自分の命を大切にしてください」


 少女騎士の言葉を聞いた魔女はふと考えて、問いかける。


「では、自分の命を大切にするにはどうすればいいのだ?」


 魔女の問いかけに少女騎士は驚いて考えてしまう。


「…………病気しないように気を付ける。なるべく危険なことは避ける。お腹が減らないようにしっかり食べる…………」

「なら、食べてる私は命を大切にしているな」

「そ、それだけじゃ駄目ですよ! さっきの二つのことも気を付けてください!」

「…………これから魔物と戦うのだろう。それも危険なことではないのか。それでは、聖騎士団も自分の命を大切にしていないと言うことになるぞ」


 少女騎士は、はっと気づいて口を噤んでしまう。すると、魔剣士は言葉を続ける。


「しかし、誰かがやらなければ、誰かの命が失われてしまう。そうさせない為に自分の命を使って守ろうとする。それが聖騎士団だ」


 俺は驚いた。あの魔剣士が聖騎士団を擁護する発言をするなんて。それを聞いた少女騎士は嬉しく思ったのか、笑顔になる。


 魔女は理解したのか、頷いた。


「聖騎士団のことは理解した。誰かの命を守る為の組織だな」

「はい、その通りです」

「聖騎士団のことは理解したが、命についての疑問が増えた」

「へっ?」

「命とは自分で大切にするものなのか? 誰かに守ってもらうものなのか?」


 少女騎士は頭を悩ます。魔剣士はため息をつく。俺もあきらめ気味なる。

 けど、命に題する話は大切にしたいと思うのだった。

この魔女の、「命」に対する問い掛けは大切だと思いますので、よろしければ、感想を下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ