少女騎士の失敗
今回は、少女騎士が主役です。
剣士が裏側からこっそりと屋敷内に侵入した時に、団長と少女騎士率いる聖騎士団がやって来た。全員、馬に乗っている。
私達、聖騎士団は赤い魔物の調査を続ける中、夜も更けるので、この地の領主殿に野営の許可を貰おうと、屋敷までやって来た。
目的の屋敷の手前でいったん止まると、少女騎士は屋敷の門で酒盛りをする門番を見かける。
あっ、何、あの門番らしき男達。まだ仕事中に酒を飲んでいる…………呆れた。
「騎士団長。私が言付けをします」
「はっはっはっ、喧嘩になるなよ」
団長は信用していないな。私だって聖騎士団の一人よ。……よーし、大人の対応を見せてあげるわ。
「大丈夫です」
少し意地になった少女騎士が門番達の前まで駆け寄って、馬に降りてから対応を始めた。
「失礼します」
「……あん? お嬢ちゃん、どうかしたの?」
「私は聖騎士団所属の者です」
「聖騎士団? …………はっはっはっ、こんな田舎に聖騎士団が来るわけないじゃん!」
「もしかして、憧れてごっこしている子?」と門番達は大笑いをする。
し、失礼な! この恰好を見てわからないの!? いくら酔っぱらっているからって、目が節穴じゃないの! けど、我慢よ。冷静に対応しないと。
「よく見たら、お嬢ちゃん、可愛いね?」
何、この酔っ払いの門番が私に寄り付いてくる。…………嫌だな。
「おじちゃん達と飲まない?」と聞いた瞬間、お尻を触って来た。
「きゃああああああああああああ!」と叫んで、お尻を触った門番の手を掴んで、そのまま投げ飛ばしてしまった。
我に返って見てると、門番は壁に叩き付けられて気絶していた。もう一人の門番は、この瞬間を目の当たりにして唖然している。
…………しまった! 条件反射でやっちゃった! 失敗しちゃった。恥ずかしい!
「…………ああっ、悪いな。うちの部下が迷惑を掛けてしまって。おおい、すぐにこいつの治療を頼むわ」
治療係の聖騎士が門番に治療してくれている。ありがとうございます! そして、ごめんなさい!
「俺は聖騎士団の団長を務めている者だ。悪いけど、この屋敷の主に問い合わせてくれないか?」
「えっ、本物!? すぐに問い合わせます!」
…………結果、オーライ…………って、誤魔化してもしょうがないよ!
しばらくしてから、騎士団長と少女騎士は屋敷内に招き入れられ、領主が出迎えてくれる。
「これはこれは、聖騎士団の団長殿。このような田舎へ、良くぞ来られました」
「いや、なかなか良い土地ですよ。それよりも、うちの部下が迷惑を掛けてしまい、申し訳ありません」
「本当に申し訳ございません!」
団長と少女騎士は深々と頭を下げた。
「いやいや、非は門番にもあります。余りお気になさらずに」
「そう言っていただけると、気が楽になります」
団長が開き直っていると、魔剣士が現れる。それに気づいた団長と少女騎士は驚いた。
ああっ、ま、魔剣士殿! なんで、貴方がここに居るのですか!?
「おおっ、久しぶりだな、魔剣士」
「ああっ、あんたも相変わらずだな。小娘も」
「小娘って言わないでください!」
この人は相変わらず、私のことを小娘と呼ぶんだから。本当に嫌になっちゃう。何よ、笑っちゃって。
「お前さんがいるってことは、凶悪な魔物が現れるのか?」
「俺もあんたに聞きたいことがある。赤い魔物についてな」
「えっ、何で知っているんだ?」
「ここに捕らわれている、魔女にな」
「魔女?」
「口で説明するより、直に案内する。いいな、ご領主」
「…………わかりました」と渋々承諾する領主。
魔剣士殿は魔女のいると言う部屋に案内してくれる。
ところで、魔女がいるなんて、情報は初耳だわ。それが赤い魔物と何か関係があるのかしら。
あれ、誰かと誰かが口喧嘩しているみたい。若い男と女の声だ。けど、どこかで聞き覚えがある。
すると、魔剣士は団長と私を止めて、こっそりと様子を窺った。
団長も私もこっそりと覗いてみると、あの時の剣士殿と黒髪の女性だった!?
なんで、あの二人がここに居るの!?
少女騎士の魅力は伝わりましたか?