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魔剣~魔女と剣士が旅をする物語~  作者: 氷刃竜
出会いから始まりへ
15/22

魔女を怒らせて喧嘩をする剣士

大変お待たせいたしました。いよいよ剣士による魔女の救出劇です。

 夜遅くになってしまったが、やっとのことで見えてきたぞ、領主のお屋敷。


 更に近づくと、門前には見張りが立っているのが見える。予想済み何だが。けど、呑気に酒を飲みながら話し込んでいる。ちゃんと仕事をしなよ。


 まあ、お蔭で俺の近づいているのに気づいていないから助かる。気付かれると厄介だから、見張りの視界に入らないように裏側に回ろう。


 上手く屋敷の裏側に回り込めた。俺は持参する鉤付の縄を取り出して、上手く回して鉤を放り投げた。よし、上手く壁に引っかかった。急いで壁を登ろうとした時、


「おい、大変だ!」

「どうしたんだ?」


 壁の向こうから大声が聞こえてた。やばい、もう見つかったのか!? 俺はすぐに降りようかと思った。しかし、それは違っていた。


「大変な奴らがやってきた!」

「大変な奴ら?」

「とにかく、ご領主様のところへいくぞ」


 俺は恐る恐ると中庭を覗いてみると、見張りが慌てて立ち去って行った。これはチャンスだと思い、壁を越えて中庭へと降りた。さて、魔女の居所を誰かに聞きだしてから屋敷に忍び込むか。


 忍び足で歩きつつ隠れながら屋敷の様子を伺ってみると、二階の窓から外を、夜空を眺める魔女を見つけた。


 声をかけるわけにはいかない。よし、一か八かで石をぶつけて気付かせよう。


 剣士は狙いを窓に定めてその場に遭った石を投げた。石は上手く窓に当たり、魔女は驚いた。魔女は下を眺めると、隠れていた剣士に気付いた。


「あやつ、何しに来た!?」


 剣士が来ていたことで魔女は戸惑い、自分を助けに来たのだと察する。


 しかし、見つかれば今度こそ殺される。そういう訳にはいかないと、何とか帰らせようと考える。


 声を出すと気付かれてしまうから駄目だ。ならば、紙と筆を探すが見つからなかった。


「よし、動作(ジェスチャー)で伝えよう」


 魔女は早速動作を始めた。先ずは手を振って見せる。


 おっ、元気なことをアピールしているな。安心しろ。すぐに助けてやるからな。と親指立てて見せた。


「違う! 去れと伝えているのだ!」


 誤解する剣士に慌てた魔女は別の動作を見せつける。腕に巻かれた鎖を見せつける。


 あっ、腕に鎖を巻き付けられている! だが、こんなこともあろうかと鑢を持って来たから、大丈夫だ。と鑢を見せた。


「あの道具で救うつもりか? いらん! 帰れ!」


 今度は首と腕を振って拒絶を示してみる。


「もしかして…………洩れそうななのか! これは急がないと!」

 俺は急いで魔女を助けに行かないと! 魔女がお漏らししたら恥ずかしいよな。


 屋敷に入ってすぐに階段を見つけたので駆け出し、魔女がいると思われる部屋に辿り着き、ドアを蹴破った。


「助けにーー」

「この馬鹿者が!」


 ええっ、何で怒鳴られなきゃならないんだ!?


「帰れっと言ったのがわからんのか!」

「えっ、助けてほしいんじゃなかったのか?」

「あれは断りの意味を込めて伝えたんだ!」

「ええっ、あんな動作のどこにそんな意図が含まれていたの? というより…………奇妙な踊りにしか見えなかったな。特に最後のは…………お漏らししそうだから焦っていたのかと……」


 あれ? 魔女の額から青筋が立っている上に目つきが鋭くなっている。これって怒っているのか?


「…………貴様、私の親切心を馬鹿にしているのか!」

「いたっ! 鎖をぶつけるな! せっかく来たのにこの仕打ちはあんまりだ!」

「頼んだ覚えはない! そっちこそ、私の善意を無駄にするな! あと、誰が漏れそうだ! 流石の私も怒るぞ!」

「勘違いしたことは謝る! けど、自分を犠牲にすることは善意とは言えない」

「結果的に助かるのだ。その時は分からぬでも時期が来れば、納得する」

「俺としては納得できない。誰かを犠牲にしてまで助かろうとするなんてことは」

「私がこうして捕まったのは、君が魔剣士に負けたのが原因だろう」

「それは言い訳しない。だが、君を助けることは別だ」

「へ理屈で解決ほど世の中は甘くはない」

「けど、厳しくても通らなければならないのも世の中だろう」

「今は世の中の話をしている場合ではないぞ」

「世の中を先に口に出したのは君だ」

 売り言葉に買い言葉で口喧嘩が繰り広げられる。

「揚げ足を取るな。早く逃げろ。見張りや魔剣士に見つかるぞ」


「もう見つかっているぞ」として剣士と魔女の間に魔剣士が立って呟いた。


「いつの間に!?」

「さっきからだ。魔女の怒鳴り声が聞こえたので駆け付けてみれば………この通りだ」

「ああっ、君のせいで見つかった」

 俺は呆れると、魔女が目つきを鋭くして睨みつけてくる。

「違う、君がここへ来たからだろうが」

「ええっ、そんな言い草はないよ。君のそういう態度をとったりするから」

「私のせいにするのは筋違いだろう」

「自分の自己満足を押し付ける奴に言われたくない」

 俺と魔女が言い合いをしていると、魔剣士が笑った。

「何がおかしい?」

「いや………状況に関わらずに………お前達の口喧嘩が面白い」

 み、見世物じゃないないんだけど。

「はっはっはっはっはっ………」


 あれ、別の誰かの笑い声が聞こえてくる。しかもどこかで聞いたことがあるぞ……。


「まったくだぜ」

「団長、笑っているところではありませんよ」


 そこへ現れてのは、聖騎士団の団長と少女騎士だった。

さて、剣士と魔女の口喧嘩はどちらが有利でしたか?

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