囚われの魔女
剣士に危機が迫ります!
身体を斬られた俺は激痛のあまりに剣を持ったまま傷口を押さえた。
「残念だったな、腕がいいが、剣が良くなかった」
魔剣士はこの隙を逃さず素早く剣士の腹部を切り裂いた。
今度は腹を斬られた! 思わず腹を押さえた。傷口から血が…………あれ、出ていない!? そんな馬鹿な! 確かに斬られたはずなのに血が出ないなんて!? 痛みは感じているが。
「ほーっ、あれだけの痛みを受けているにも関わらず、気絶しないとは…………意識が強いようだな」
魔剣士はしゃがみ込んで足を狙って一直線に斬った。
足に激痛が! 痛みのあまりに態勢を崩して倒れてしまう。足は……ちゃんと繋がっている! 確かに奴の剣は俺の足を両断したように見えたが………それでも激痛が走る!
「なんで切断されていないと思っているな、当然だな」
魔剣士は魔剣を背中に携えた。
「こいつは痛みで動けない。今のうちに魔女を殺すか」
魔剣士は魔女に近づく、これはやばいぞ!
「に、逃げろ!」
俺はそう叫ぶが、魔女は戸惑ってしまう。
「お待ちください、魔剣士殿!」
あれ、魔剣士の仲間である、眼帯の男の一人が必死になって止めた。
「その魔女は屋敷へと連れていきます」
「……なぜだ?」
魔剣士は眼帯の男を睨みつける。眼帯の男は怯えるが、それでも止めようとする。
「魔女には裁判を受けてもらいます。それがご領主様の命令です」
「必要ない。退治すればよいだろう」
「それはなりません。契約の内容を思い出してください」
魔剣士は自分の立場を思い出して、渋々引き下がる。
もう一人の仲間が倒れる剣士の息の根を確かめている。
「魔剣士殿、この剣士は本当に死んでいないようですけど…………どうします?」
「勝手にしろ」
「なら……始末するか」
やばい、止めを刺そうとしている。逃げたいが逃げれない。
「待て! その剣士を殺すな!」
魔女が慌てて眼帯の男を止めた。
「ほぉ……助けてほしいのか?」
「ああっ」
「しかし、罪人であるお前を庇った、この剣士は共犯。見逃すわけにはいかぬな」
「……それでも、命を奪うのは辞めてほしい」
眼帯の男は少し考えてから思いつく。
「よし、お前が大人しく捕まり我々に同行して貰う。それで勘弁してやる」
「…………本当か?」
「ああっ、元々お前が目的だからな」
逃げろ、魔女。お前を殺そうとしているんだぞ。ここは逃げるしかないだろう。自分の命を守るためだ、誰も文句は言わないからさ。
「…………良いだろう、大人しく同行する。その代わり、剣士を殺すな」
魔女、何を考えているんだ! 俺のことは良いから逃げろよ。
「交渉成立だな」
男達は魔女の身体を縄で締め付けてゆく。
「…………この魔女、自分を犠牲にして剣士を助けるとは」
魔剣士は魔女の行動に少し驚く。
「に、逃げろ!」
俺は痛みを堪えて、必死で叫んだ。
「せっかくの生きながらえた命を大切にしな」
眼帯の男に殴られた俺は意識が失う寸前まで魔女を見続け………意識を失った。
魔剣を操る魔剣士はいかがでしたか? 感想があれば宜しくお願い致します。