魔剣を使う魔剣士
新たな展開に突入します。
俺と魔女は町の外で聖騎士団の団長達に別れの挨拶を交わす。
「世話になった」
「ご協力ありがとうございました」
「いえ、それは俺の台詞です。こちらこそ、呪いを解いてくださって感謝します」
「教会が呪いを解くのは仕事。俺は当たり前のことをさせただけだ」
「当たり前って、脅かすことが?」
「こら、失礼だぞ」
「いや、あんな嫌な奴に一泡吹かせたのは、実に心地よい」
「ふっはっはっはっはっ! 言うじゃねぇか、お嬢ちゃん!」
大笑いする騎士団長に呆れてしまう俺。魔女も一緒に笑っておる。
「もう魔物を退治したから帰還するのですか?」
「いや、もう少し調査を続ける」
「お二人はどうなされます?」
「……家に戻ろうと思っている。この剣士に付き添ってな」
「なら、うちの騎士団員も付けてやろうか? 今回のような真っ赤な人狼みたいな化け物が現れるみたいだ」
「えっ、そんな化け物がうろついているんですか?」
「はい、その為に調査を続けているのです」
「そういうことなら、団員の方々にご迷惑はかけれません。自分の身は自分で守ります」
「本当に……よろしいのですか?」
「うむ、そんなに遠くではないのでな」
「大丈夫です」
騎士団長と少女騎士は心配になるが、本人達の希望と任務の優先を考えて、別れることとなった。
その後、俺と魔女は町の人々から見送られながら町を出ていく。人気のない林へと入り、魔女は落ちている木の棒を拾って地面にある物を描いた。それは大きな円の中に不思議な絵柄である。
「それは何?」
「魔法陣だ」
「魔法陣?」
「特別な魔法を使う際に必要な儀式みたいなものだ。大量の魔力を抑制すると言っても良い」
「それを描いてどうするの?」
「魔法陣には多くの種類がある。この魔法陣は一瞬で目的地にたどり着くことができる」
「一瞬で? 凄いな………けど、目的地って?」
「我が家だ」
「えっ、君の家に?」
「我が家にもこの魔法陣がある。この魔法陣があるところならいつでも瞬間に移動できる。まあ、口で言うより、共に来い」
魔女は魔法陣の中心に立つと、剣士を手招きする。剣士は恐る恐ると魔法陣の中心に立つ。
「では行くぞ。空間よ、我らをかの場所へと連れて行きたまえ」
魔女が呪文を唱えた瞬間、目の前が一瞬に変わった。そう、燃え盛る家の中に。
…………えっ、燃えている? 炎があっちこっちで燃えている!? 熱い! 熱すぎる!
「な、何!?」
流石の魔女もこれには驚愕している。
「すぐに出るぞ!」
俺は魔女を抱えて、窓に向かって、突き破った。俺と魔女は地面を転がって振り向いてみると、魔女の家が燃えていた。なぜ、こんなことに……。
「ほーっ、誰もいなかったはずなのに、誰かが飛び出てくるとはな」
突然の声に驚いて前を見ると、大きな剣を背中に携える長髪の男が立っていた。鋭い目つきで冷徹な顔つきをした奴だ。その男の背後にガラの悪い男達もいる。
「……誰だ、お前は?」
俺と魔女は立ち上がり、大きな剣を携える男に問いかけた。
「俺か? 人は俺を“魔剣士”と呼ぶ」
「魔剣士? 剣士よ、お前の仲間か?」
魔女は呑気に尋ねるよ。状況を見ていないのか?
「いや、こんな危険そうな奴を仲間なんて、ごめんだね」
「それは申し訳ない。俺は……その家に住む魔女を退治する為に雇われたのだが…………お前が抱えている女が魔女か?」
こいつ、更に眼を鋭くして魔女を見る。思わず、嘘を付こうとしたが、
「そうだが」
魔女があっさり言った。君は馬鹿か!? 魔女を殺すって言った奴に正直に答えるな。
「そうか……死ね」
魔剣士は素早く背中の剣の柄を握りしめて大きな剣を抜いて振り下ろす。
剣士も素早く二本の剣を抜いて受け止めた。
「……なんのつもりだ?」
「いきなり斬りかかるなんて、紳士的じゃないな」
「魔女を庇う奴が紳士を語るな」
魔剣士は下がって、剣を構える。魔剣士の大きい剣は刀身から柄まで真っ黒だ。俺も二刀流で構える。
「………あくまで邪魔をする気か? 邪魔をするなら容赦しない」
「彼女は俺の命を救ってくれたんでね。見捨てるわけにはいかないよ」
「魔女が命を救った? 馬鹿馬鹿しい、魔女は魔物と同等。存在など……許さん!」
魔剣士は向かってゆき、剣を打ち込んでくる。その速度は速くはないので俺は二本の剣で受け止めつつ打ち返す。しかし、魔剣士も大きな剣を盾のようにして受け止めてた。そのまま押し返した。後退してしまうが、足を踏ん張らせて止めた。止まったすぐに魔剣士にかかってゆく。
激しい攻防だった。剣士の剣と魔剣士の剣は激しく火花を散らせる。魔女やガラの悪い男達は二人の斬り合いに目を奪われる。
しかし、勝負はついてしまう。魔剣士の薙ぎ払いで剣士の二本の剣が、刀身が折れてしまう。剣士は慌てた瞬間を魔剣士は逃さず、剣士の身体を縦一直線に斬りつける。
「剣士!」
その光景を目の当たりした魔女は思わず叫んだ。
斬られた剣士の運命や如何に!?