呪いの因縁
なかなか感想がこなくて困ります。
宴会が終わったのは深夜ごろだった。食堂は店を閉め始める前に町の人々は自分の家へ帰っていく。みんな、上機嫌に帰っていったな。
聖騎士団の面々は町の外でテントを張って置いてそこで寝るらしい。本来なら、町の中の宿屋へと貸し切りにできるらしいけど、それは事前に手紙か早馬で知らせて予約しておくものだが、突然の来訪であったために、騎士団員全員分が泊まれる程の部屋は空いていないようだ。その代わりに俺と魔女が泊まることなった。代金は聖騎士団の団長が立て替えてくれた。本当に義理堅い人柄の持ち主である。
俺は浴場で旅の汚れを落として疲れを癒した。お風呂の温かさが身体に心地を与えてくれている。呪いが解かれて本当に良かった。
俺は天井を眺めながら、魔女との出会ってから此処までの出来事を振り返る。短い間だったが、不思議な体験だった。魔女の魔法をこの目で見たり、呪いを受けたり、今までにない魔物と戦ったり、聖騎士団に遭遇して呪いを開放してもらった。命の危機にさらされたはずなのに、悪い気がしないのは不思議だ。俺が普通じゃないのかな?
さて、充分に温まったので、部屋に戻るとするか。
俺が部屋に戻ってみると、部屋で休んでいた魔女がいなかった。何処へ行ったんだ? 探してみよう。
俺はお店の従業員を見かけたので尋ねてみた。
「すみません、俺の連れを見かけませんでした」
「ああっ、先ほど教会へ行くと言って外に出ましたけど……お止めにならなかったのですか?」
「お風呂に入っていましたので……」
「駄目じゃないですか! 昼間に魔物が出たばかりなんですよ!」
「それはもう退治されましたよ」
「また出るかもしれないじゃないですか! 聖騎士団様達が外にいるとはいえ」
「は、はぁ……」
「しかも、お腹に赤ちゃんがいる身なのですよ!」
従業員は烈火の如くに怒った。そう、この人は勘違いしているのだ。
急いで教会に着いた俺は彼女を探そうと周辺の辺りを見渡すと、丸々とした物体を見かけた。
それは…………お腹が丸々と膨らんだ魔女だった。もう一度言おう、お腹が丸々と膨らんでいる人が、あの魔女だ。
魔女はハンバーグやグラタンにフライドポテトなどと色んな料理を食べ続けた結果、文字通りに腹がいっぱいとなったのだ。当の本人は「これぐらいにするか」と言って、苦しむ様子はなかった。
こんな状態の魔女と一緒に宿屋に入ったら、魔女を見た主人や従業員は「まあまあ、大事な体でよく来ましたね」とか「いつ頃生まれになりますか?」と言って、妊婦さんと勘違いをしたのだ。一応、誤解だと説明したけど、信じてもらえなかった。
「ところで、俺に何も言わずに何しにここへ来たんだ?」
「私が用があるのは教会ではなく、これだ」
魔女が指したのは、真っ赤な人狼の死骸だった。倒した後、聖騎士団は死骸が不死の化け物にならないようにと、死骸に鎖で巻き付けて縛り、聖水で清めてから聖なる教会の傍に置いておいたのだ。念入りな作業である。
「これがどうかしたの」
「もう清めておるから感じないが………倒された直後に呪いを感じ取ったのだ。あの時の呪いと同じものを」
「……えっ?」
「お前が倒れて駆け付けた時、お前のかかっていた呪いの影響が急速に強まっていた。余りに不自然にな。その時、この人狼からも同じ呪いを感じたのだ」
何だか真面目な話になってきているぞ。丸々と太った姿で言うのも不自然だが。
「それは本当か? ………確かに人狼に止めを刺そうとした時に急激に苦しみだした」
俺も不審に思うと、魔女は懐から、呪われていたペンダントを取り出した。
「それをどうして」
「あの店に行き、ペンダントを返してもらうように頼んだら、あっさりと返してくれた」
「そのペンダントをどうするの?」
「明日になってから家に帰って調べてみようと思うが、君はどうする?」
「えっ?」
「一応、知っておいても損はないと思うぞ。これは何かの巡り合わせかもしれん」
「…………わかった」
とりあえず、俺と魔女は宿屋に戻った。
翌朝、目覚めてみると、隣で寝ていたはずの魔女がまたいなくなっていた。とりあえず探してみる。食堂へと行ってみると、魔女は呑気に朝食を食べていた。しかも、お腹が元通りにへこんでいた。
従業員が「妊婦さんじゃなかったのですか?」と恐る恐る尋ね来る。俺はどうやってお腹をへこませたのかと尋ねてみたい。
魔女の太った描写はいかがでしたか?