05 『グールの大掃除』
おもちゃ4日目、今日は特に担当の人はいなくオフの日だ。
なんでも、週に一度の大掃除をするかららしい。
俺は日課の素振りを終えると、お茶を持ってきたシルヴィアさんに聞いてみた。
「この屋敷って大掃除するほど汚れてましたっけ?」
「ふふふ、大掃除するのは館じゃなくてグールですわ」
「グールを?」
「ええ、そういう契約なんです」
話を聞くと、この屋敷に100体以上いるグールのメイド達は雑用をこなす代わりに週に一回お風呂に入れてメンテナンスをして貰う事を契約にしているらしい。
不死だが放っておくと体が腐ってしまうグールにとっては、定期的なメンテナンスは生命線といってもいいが、関節が固まっていて自分ではそれが出来ない為、こうして契約して誰かにやってもらう必要があるそうだ。
俺は魔界で出会ったグールはどれも腐っていたが、ここのグールは生身の人間とほぼ見た目が変わらない事を思い出す。
相当丁寧に手入れしないと、あれだけ良い状態には保てないはずだ。
俺達は遅く起きてきた2人も連れて、朝食を食べ終えると大浴場へと向かう。
そこには既にたくさんのグールが待機していた。
「一人当たり25人ほどがノルマなのだわ」
「あの、俺が体を洗っても彼女達は大丈夫なんでしょうか?」
「ふふ、そんな事気にしてたの? あなたは犬や猫に体を見られても平気でしょ、それと同じよ」
いや、彼女達が平気でも俺が平気じゃないんだけど。
俺はシルヴィアさんとお風呂に入った事を思い出す。
あれは彼女が俺を男として認識していなかっただけなのか。
なんか負けたみたいで悔しい。
「それじゃ、始めよっか!」
モナちゃんはそう言うと、近くにいたグールの服を一気に脱がせてから浴場へ連れ出す。
俺も仕方なく、適当なグールを選ぶと服を脱がせることにした。
「よろしくお願いします」
「……グルルゥ……」
グールは軽く唸る。
恐らくこれは肯定を意味するんだろう。
俺は彼女が着ているメイド服に手を伸ばす。
ん? 意外と難しいぞ。
関節が曲がらないグールの服を脱がすのは思っていたよりもかなり難しい。
「グルゥ?……」
グールはどうしたの? と言いたげな顔でこちらを見る。
あどけない少女のような顔でこっちを見つめられると、かなり背徳感がある。
10分ほど格闘して、俺は何とかグールの服を脱がせることに成功した。
服を脱いだグールの肌は人間となんら変わらず、触れた感触もモチモチしていてこれがグールだとにわかに信じがたい。
俺は全裸の少女を引き連れて、浴場へと入った。
「えーと、タオルかなんかで洗えばいいんですか?」
俺は近くにいたアリナさんに質問する。
1体目のグールをほとんど磨き終わっていたアリナさんは手を泡だらけにしてこちらに振り向いた。
「タオルなんか使ったら駄目なのだわ。この子達の肌はデリケートだから強くこすると傷ついちゃうの」
「え、じゃあ何で洗うんですか?」
「これよ」
アリナさんは俺に手のひらを向ける。
俺の目が正常ならば、彼女の小さな手には何も握られていないように見えるんだが。
「もしかして、手洗いですか?」
「そうよ」
マジかよ……。
既に椅子に座ってこちらを眺めるグールの純粋な視線が俺に突き刺さる。
取りあえず頭でも洗いながら考えることにしよう。
俺はシャンプーを手に取ると、グールの頭を洗い始めた。
「……グルルゥ!」
少女は気持ちよさそうに洗髪される。
グールの髪は人間とは違い油分をほとんど含まない為、週に一度のお手入れでもすぐに泡が立つ。
この分なら慣れればノルマも片付きそうだな。
肩甲骨の辺りまで伸びた少女の黒髪を丁寧に洗っていく。
「グル……グルルゥ……グルグルゥ……」
少女はリズムよく唸り出した。
もしかして、気持ちよくて歌っているのか。
丁寧にリンスまで付けた俺は、少女の髪を洗い流す。
「よし、ここからが本番だ」
俺は手のひらで泡をたてながらグールを見る。
日焼けしていない白くモチモチな肌は綺麗にくびれている。
華奢な肩の下にある2つの膨らみは手のひらに収まるほどの大きさだが、強い自己主張を放つ。
その中央付近に位置する2対の桃色のアクセントが俺の目を引き付けた。
「……グゥー?」
グールは早く洗わないの、と言いたげな目でこちらを見つめる。
なるべく何も考えずにやるしかないな。
煩悩退散、煩悩退散……
泡立たせた手でグールの背中側からゆっくりと洗っていく。
きめ細やかな肌は、ひんやりと冷たく気持ちいい。
なだらかに放物線を描く、彼女の体を下から上になぞるようにして洗うとグールはくすぐったそうに体を揺らした。
「……グググゥー……」
「よし、次は手足だ」
俺はグールの正面に回り込む。
なるべく体の方を見ないようにしながら、ピンと伸びた手を脇の方から掴むと扱くようにして洗っていく。
筋肉がほとんどついていない少女の細腕は、何度か上下に洗うと綺麗になった。
反対側も同様に済ませた俺は、脚の方へ手を伸ばす。
少女の脚は死人とは思えないほどむちむちと弾力があって柔らかそうに見える。
俺はつま先を掴むと足裏から洗い出した。
「……ッググゥ……グググゥ……」
くすぐったいのか少女は体を揺らしながら唸る。
正面から洗っているので、少女が体を揺らす度に目の前の2つの物体がふよふよと揺れ動くのが分かる。
俺はふくらはぎへと手を伸ばした。
若干筋肉がついていてササミのように固いふくらはぎを丁寧にもみ洗いする。
グールは成長しない為、スネには毛が生えておらずスベスベで気持ち良い。
今度は柔らかそうな太ももを洗っていく。
肉付きがよくふっくらしている太ももは両手で取り囲むことがギリギリ出来ないくらいの太さだ。
非常にモチモチしており、ここで膝枕したらひんやりフワフワでさぞ気持ちいいだろう。
俺は太ももの先にある足の付け根の部分を見ないように、脳内でそんなことを考えながら2本とも洗い終えた。
「……グゥグルルゥ……」
「よし、いよいよ胴体だ」
肩先からわき腹を通って、お腹の辺りまでを洗っていく。
すべすべのお腹は手で押すとめり込むようにへこんで楽しい。
ヘソの中まで丁寧に洗い終えた俺は、グールの方を向き直る。
胸や股、尻の辺りだけ綺麗に泡がない為、なんだか非常にいかがわしい。
別に好物は最後まで取っておく派とかではなく、触るのがなんだか怖かったからだ。
意を決した俺は、まず胸から洗うことにした。
手のひら大の双丘は、触れると弾力がありとても柔らかい。
手で撫でまわすように洗っていると、胸の中央部にある2つの突起物が俺の手のひらを刺激する。
胸の谷間や下側も丁寧に洗うと、グールは気持ちよさそうに唸った。
「……グゥグゥ……ググゥー……」
「よし……、グール、腰を浮かせてくれ」
「グゥ?」
なんとか綺麗にできたので、俺は下半身に取り掛かる事にした。
まずはグールに腰を浮かさせてから、背面に回ってお尻を洗っていく。
顔ほどの大きさがある尻は、モチモチと弾力を帯びており手に吸い付く感覚がたまらない。
割れ目までしっかりと洗った俺は、正面に向き直る。
「よし、ラストだ」
「グググゥ……」
……そこから先は無心だったのでほとんど覚えていない。
ただ、なにかがツルツルだったという事だけ記憶している。
俺はグールを水で流すと、体をよくふき取り服に着替えさせる。
一度やってしまえは案外慣れるもので、その後は順調に残り24体のグールをてきぱきと洗えるようになった。
大小さまざまなグールを全て洗い終えた頃には、もう夕飯の時間になっていた。
早めに洗い終えたグールが食事を作っていたらしく、俺達は美味しい食事に舌鼓を打った。
「グルグゥ……」
「あら? ハルマはすっかりこの子になつかれちゃったみたいね」
最後に、俺が最初に洗ったグールが食事中ずっとそばを離れなかった事を特筆しておこう。