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金剛のアルムス  作者: ミササギリョウ
序・前日譚
1/9

ちょっとした運命の回折

俺リムドはここ数カ月の修の旅で最大の危機に瀕していた。

もともと住んでいた村を飛び出し、自然豊かで大陸最大の国土をもつアリスモーズ連邦のこれまた大陸最大の砂漠であるモーズ砂漠を昨日から探索しているのだが、コンパスは壊れ、そろそろ水がそこを尽きる。食糧もない。

そんななか背中の馬鹿でかくてどうしょうもないくらい重い剣が日に照らされて、追い打ちをかけるがごとく体力を奪ってくる。

はやくオアシスか町を見つけなければ確実に死ぬ。そう考えていると、今死なれては困ると天は考えてくれたのだろうか、視界はついに砂以外のものを捉えた。商人の車である。助かった、きっと水や食料が売っているはずだ。車相手に追いつけるかどうかも考えず、俺は夢中になって走りだした。しかし車の様子がおかしいことに気がついた。止まっているのだ。もう少し近づいてみると車の脇から数人の人影が見えた。1人は太った緑のおっさん、こういう見た目のやつは商人と相場が決まっている。あと見るからに野蛮そうな男が3人強盗だろうか。

なんとなく事態を把握した。砂漠で商人が強盗に襲われるということは度々あるらしい。

これはチャンスだ。強盗を倒し、商人を救えば、きっとお礼が貰える。うまくいけば近くの町まで乗せてもらえるかもしれない。たいへん打算的な良心を携え強盗たちに走って向かっていく。わずかな希望のおかげで、さっきまでの疲れは一時的に姿をくらましていた。ある程度近寄ったところで背中の大剣をすて、勢いよく強盗の1人に飛び蹴りを食らわせる。

その一撃は見事に1人の盗賊の脇腹に食い込んだ。あまりの痛みにその盗賊は座り込んでしまった。

「なんだてめぇ!いきなりなにしやがる!」

「悪いな、俺の命のために、さっさとくたばりやがれ!」

こうして対盗賊戦が幕を開ける。相手は曲剣を構えて襲ってくる。こちらは素手だ。だが毎日重い大剣を扱うために鍛えているから腕力と脚力には自身がある。また、まだまともに振れない大剣しか装備をもっていないため体術もすこし学んだ。とにかくあのデクノボウのおかげで常人とは比べものにならないくらいの戦闘能力が丸腰でもある。相手の動きを見極めて、攻撃をかわしつつ確実に一撃ずつ食らわす!

そんなこんなで10分たったのだが。

「はっはっは!ぼうず、さっきまでの威勢はどうした!もう限界か?」

「無理もねぇ、相手が俺らじゃな。俺たちはこの道10年のベテランだ!丸腰のガキなんざ敵じゃねえんだよ!」

限界です、命だけはお助けを、ガキがふざけただけなんで助けてくだせぇ。

悔しいがもう無理だ。さっきまでいなかったはずの疲労がハーイなんて上機嫌で帰ってきたみたいだ。

しかも一度倒れた盗賊の1人も復活し、3対1の圧倒的不利な状況、ここは財布を差し出して命乞しいをするしかないのか。そんなことしたら恥ずかしくて死ねるわ。しかしまだ死ぬ時ではなかったようだ。

「うおおおおお!ぶっ飛べー!」

どこからともなく現れた剣士がなぜか剣の側面の平たい部分で盗賊の顔面を強打した。

「ぎゃー!ちょっと顔切れたー!」

盗賊のリーダーぽい男は情けない声をだして座り込んだ。

「アニキ!大丈夫すか!」

「てめぇよくも!アニキの男前の顔を!」

「どこが男前だ、鼻変な方に曲がってるし、眉毛繋がってるしよ!」

いや、鼻をやったのはあなたです、とはいえなかった。というか本当に眉毛繋がってる。

「くそ、まずお前をぶっ倒す!」

「死ね!ブサイク剣士!」

2人の盗賊が同時に飛びかかる。しかし剣士は全く動じることなく1人をかわし、1人の顔面を強打する。

「ヒャー!」

「誰がブサイクだ、鏡みてから言え。」

ブサイクっていった方を殴るとは、なかなか大人げない。続いて剣士はもう1人に鋒を向ける。

「ひっ!」

「相手が悪かったな盗賊さんよ!俺はこの道5年のベテランだぜ!」

そう言うと剣士は盗賊のズボンの紐だけ見事に切り裂いた。そして醜態を晒すことで最後の一人1人も戦意を失った。この後彼らが地元の警察に引き渡されたのは言うまでもない。

「さて、大丈夫かボウズ。」

「あ、どうも、助かりました。」

「なに、いいってことよ。それにしても素手で盗賊3人相手してるの見た時はびっくりしたぜ。」

「いやー、本調子なら行けたと思うんですけどね。」

「ははっ、今度からは気をつけろよ!」

どうやら冗談として流されたようだ。本当にいけたと思うんだがな。

「ところで、こんなところでなにしてたんだ?ここは子どもが来るところじゃないぞ。」

「子ども、ですか…やっぱそう見えますよね。」

「違うのか?」

「14です。」

「じゃあ子どもだな。で、なにしてた?」

なんだか気に食わない男だ。ここはありのままに話すか。

「旅の途中?君がか?面白いこと言うな。丸腰で?」

「武器はあれです。」

そういって例の剣を指差す。

「あれか?でかいな。とてもじゃないけど…」

「扱えません、持ってるだけでも十分トレーニングになるレベルです。」

「まあそれはいいとして、冒険ごっこも大概にしろよ。俺が来なかったら今頃どうなっていたか。」

「そこには感謝しますがごっこではないです。」

「またまた〜。」

そんなやりとりを繰り返しているところにさっきの商人がやってきた。

「あの〜、すみません、助けていただいてどうもありがとうございます。」

「いえ、なんのお役にもたてませんで。」

「え?どちら様?」

剣士はてっきりどこのだれとも知らない子どもだけを助けたと思っていたらしい。

「私旅の商人でして、トゥリーアの町に向かう途中で盗賊に襲われたんです。そこをこちらの少年に助けていただいて。だからお二方にお礼をしたい。どうぞ車に乗って一緒にトゥリーアまで来てください。」

どうやら結果オーライだったようだ。

「ありがとうございます、助かります。」

地面に倒れこみながらそういう。剣士も一瞬考えたがすぐに了承する。

「あー、じゃあお言葉にあまえて、ちょうどトゥリーアに用事があったんです。」

そういって剣士は車に乗り込んだ。

「さあ、あなたもどうぞお乗りください。」

「その前にひとついいですか?」

「なんです?」

「水を下さい。」

もう疲労が人の体内でパーティーを開きだしたていた。


30分ほどするとトゥリーアの町についた。オアシスの近くに建っていて、ここアリスモーズ連邦で3番目に歴史の古い町らしい。

そこの伝統料理店で昼食を奢ってもらうことになった。

「これは!美味しい。まさかこんなゲテモノがここまでの味を引き出すとは。」

「独特の旨味とそれを引き立てるハーブの香りがあいまってこってりとした味わいながらそれを感じさせない爽やかさを感じる。」

訳のわからん食レポに商人は少々戸惑っている様子だ。

「しかしよーぼうず、幾ら何でもその年で自分の身長くらいある大剣背負って、モーズ砂漠1日歩くとか正気か?状況的に本当ってのはわかったけどよー。そもそもお前の年で1人旅とかどうよ?」

「どうもこうもねーよ。俺はこの大剣を使いこなせるようにならなきゃいけないんだ。 そのためにもっと旅を続けて、経験積んでやるんだ。あとおれはぼうずじゃねー、リムドだ、ちゃんと覚えとけ。」

「飯食ったら急に元気になりやがって。しかも態度でかっ!」

「悪かったなロルンさんよ!」

車の中で自己紹介はすませた。このむかつく剣士はロルン。仕事でトゥリーアまで来たらしい。なんの仕事かは教えてくれなかったが。

「だいたいそんなコンディションで戦ったら負けるのは明らかだろ。これだから子どもはダメなんだよ。」

「さっきから子どもだのぼうずだの好き勝手いいやがって!いいか、おれが本気をだしたらな、お前なんか瞬殺だ!」

「はいはい、喧嘩は相手みてから売れよ。さっきの盗賊との戦いみてもわからなかったのか?」

「ふん!本調子ならあの程度、お前よりはやく倒せたよ。」

「あのなー、年上にむかってお前とか、ちゃんと言葉遣いくらい学べよ。いくら強かったと仮定してもマナーは大事だぞ。」

「仮定ってなんだ!」

「まあまあ、喧嘩は程々に。」

「でもおっさん!こいつ言いたい放題いいやがるんだよ!」

「お互い様だろーが。あー、これだから子どもは。」

「またいいやがったな!もう我慢なんねぇ、表でやがれ!」

「いやいや、戦いにもならんから。」

「どうした?怖いのか?」

「そんな安い挑発にも乗らん。」

「へー、いいのか?じゃあ!」

この瞬間剣士の腰の剣を奪って店外へ駆け出した。

「あっ!てめー待ちやがれ!」

昼食べて十分に水分を補給したので、身体がかるい。大剣背負ってもかなり動ける。ロルンは必死に追いかけてくるが追いつかれる気がしない。

「やっぱただの剣士じゃそんなもんか?」

「舐めた真似しやがって!武器返せ!」

「そんなら勝負してくれよ、一回本物の剣士とやってみたかったんだよ。」

「だからー、無理だって言ったんだろ。」

「無理って言うなら追いついてみろ。」

「こっちは鎧着てるんだよ!」

「俺は大剣背負ってるぜ!」

その追いかけっこは20分ほど続いた。結局ロルンは折れて、町の修錬場で模擬戦をやることになった。武器が真剣ではなく木刀であることは不満だが仕方がない。

「言っとくが手加減はしないぞ。聞き分けのないガキにはお仕置きが必要だからな。」

「そういうのいいから、はやく始めようぜ。本物の剣士の実力を見せてくれよ!」

商人のおっさんと数人の観客が見守る中、決戦の火蓋は切って落とされた。

最初の打ち合いが始まる。ロルンはこの大陸のムーロ王国という場所の剣術をつかうようだ。正統剣士らしい真っ直ぐな一撃が伝わってくる気がする。対する俺はフリースタイル。剣技なんて呼べる代物ではないが、力とスピードで押し返す。最初のうちは様子見だ。そこから徐々に加速していき相手がどこまでのスピードが出せるかを探る。おそらくさっきの追いかけっこからすると彼はパワータイプ。短期決戦型の戦闘スタイルだろう。ならばスピードとスタミナで押し切れる。

「へー、意外とやるじゃないか。子どもの割りにはよ。」

「まだまだ、このくらいでおどろいてんじゃねーよ!」

そういってさらに剣を加速させる。相手の反応がすこし遅れ始めるのを感じた。もう少しはやくすれば確実に隙を作れそうだ。

しかしさすがは剣士、スピードで負けても勝負では負けないという気迫が伝わってくる。

さっきから一撃一撃の威力が上がっている。

どうやら戦術を変えてきたようだ。パワーで対抗してこっちのスピードを殺しにかかってきている。ならば…

「なに!」

木刀と木刀がぶつかる。その時にロルンの腕が一気に弾き返された。

瞬間的に今までの数倍の力で打ち返すことで相手の態勢を崩したのだ。

そして相手が剣を構え直す前に水平切りを一撃を入れる。しかし反射的にロルンは後ろに反り返りギリギリで攻撃をかわす。そしてそのままバク転して起き上がる。

「惜しかったぜ、あと少しだったんだけどな。」

ロルンはすこし笑うと、一気に距離を詰めてきた。そして先ほどまでよりさらに速く、強い攻撃をを繰り出してくる。

「わりぃ、子どもとおもってまだどっかで手加減してたみたいだ。でもどうやら本気でやれそうだぜ。」

まだ相手は速く、強くなる。先ほどまでとは形勢が逆転し、後手後手に回ることになった。やはり正統剣士ともなると今までに戦ってきた盗賊や野武士とは違う。面白くなってきた。ここでロルンが右側、続いて左側と今までとは格の違う威力の二連撃を決めてきた。1度猪に突撃されたことがあったがそれを思わせる。この威力だと受け止めてから態勢を整えるのに時間がかかる。そして反応が遅れたところでロルンが腕を振り上げて最高威力の一撃を決めてくる。

「喰らえ!パワースウィングトライデント!」

この3連撃の技名だろうか。わざわざ叫ぶ必要はないと思うが威力は名前に見合うものだった。ギリギリ態勢を立て直し木刀でなんとか受け止めたがかなりの衝撃が体に走る。その重みを受け止めるために膝をつかされた。

「へへ、どうよ!これが大人の本気だぜ!」

相手が負けず嫌いなのはわかった。特にパワーには自信があるのだろう。さっき態勢を崩された仕返しといったところだろうか。大人げない。

「まだまだいけるよ。4連撃ならよかったのにな。」

「そうだな、また今度開発しとくぜ!」

再び打ち合いが始まりそうだったその時、勝負は中断されることになった。外か大急ぎで人が入ってきた。

「た、助けてください!魔物が、魔物がぁ!」

その報告を受けて一時試合を中断した。

魔物のタイプは四つ足の獣。3体で町に入ってきたらしい。2体は爪がすこし鋭くなって凶暴化しているだけの獣。しかしもう一体は加えて身体が鎧に覆われているような状態らしい。この町の自警団では手に負えないレベルの強さで、しばらく前から町を襲っていたらしい。

「勝負に水をさされて残念だがちょうどいいな。探す手間が省けた。リムド、お前はくんな!これは俺の仕事だ!」

「はっ?なにいってんだ、行くに決まってるだろ!てか仕事って?」

「ああ、正式なクエストだ。自警団が盗賊団の大規模遠征に行っている間、最近よくこの街に現れる魔物を発見及び討伐する。だから余計な手出しすんな、俺の攻撃で膝ついてるようじゃ足手まといだ!」

「まだ俺は本気だしてねーよ!」

「うるさい、待ってろ!」

そういってロルンは飛び出していった。だがついてくるなといわれて引き下がる訳もなく当然後を追いかけた。


さっきまで楽しそうに賑わっていたメインストリートだったが今は混乱の渦。たった3体の魔物に市場は蹂躙されめちゃくちゃになっていた。たどり着いた時にはロルンと自警団の人がすでに交戦していた。ロルンが鎧をまとっている1体、自警団員三人がかりで弱そうな方二体を抑えている。ロルンは中々戦闘経験豊富なようで獣相手にもうまく対応しているが、自警団の方は3人でも不安だ。まだまともに振ることもできない大剣を地面に刺し露店から武器を借りる。片手剣、趣味ではないが木刀よりマシだ。そして自警団の方に加勢に入る。

「あっ、おまえ、くんなって言ったろ。」

「うるさいな。そんなの聞くわけないだろ!俺の方がおまえより強いって言ってるだろ。」

喧嘩はほどほどにして、敵に集中する。さすがに獣、スピードは速い。しかし凶暴化して暴走しているためか攻撃は単調。これならいける。ロルンも同じようにおもっているのか表情に余裕が見て取れる。一撃を確実に受け止め攻撃の機会を探っている。こちらの敵は爪や牙でなければわりとどこでも攻撃は通る。しかしロルンの相手は腹意外は鎧を纏った獣。攻撃のチャンスはそう多くはない。はやく加勢にいかなければ。

俺はとりあえず一体を集中して倒しにかかる。まずは自警団のほうの二体のうち一体を誘導して引き離した。これなら自警団のほうの負担も軽減できる。それに1グループ一体のほうが意識を分散させる必要がないので戦いやすい。獣一匹に対して1グループという構図で戦闘は続く。おれもロルンも優勢、自警団は手こずっているが、俺らのうちどちらかが動けるようになるまで持ってくれればすぐにかたずくだろう。

そう思っていた矢先、予想外の出来事がおきた。魔物の攻撃を受けたロルンの顔が一瞬にして曇ったのだ。 そして剣で受けるのではなく攻撃を回避し始めた。まさか、剣にヒビがはいったのだろうか。確かにこの魔物の爪はかなり頑丈だ。受け方を間違えれば武器が壊れてもおかしくはない。

この状況に追い打ちをかけるように自警団員達が次々と倒れていく。3人係でこの様とは情けない。そして拘束から解放された獣はロルンほうへ向かっていく。これはまずい。

「やべーな、代えの剣買っとくんだった。」

ロルンはそうつぶやくとやってくるもう一体の敵にも注意を向けた。折れたかけの剣で二体を相手にするなんて無茶だ。その時こちらの相手が大振りの一撃をしかけてきた。。ここは確実に仕留める。爪の一撃をパリィ、仰け反ったところをすかさず斬り込む。人間とは違い反り返ってよけることのできない獣では回避する術はなく首元から腹部までを切り裂いた。獣はそのまま倒れこんで動かなくなった。だがそうこうしているうちにロルンはすこし離れたところに追いやられていた。そして鎧なしの方がロルンに飛びかかる。ロルンは回避して相手は態勢を崩した。そこ向かってロルンはを振り下ろす。しかしそこでなんと鎧を持った方が味方の盾となったのだ。全力で振り下ろされた剣は獣の鎧と衝突し、ものの見事に真っ二つに折れた。さらに獣はロルンに飛びかかる。剣を持った右腕に噛みつかれ、ロルンは悲鳴を上げる。そしてもう一体の獣が起き上がった。このままでは彼が危ない。

「うぉぉぉぉぉぉー」

全力で走り込み隙だらけの獣の背中に飛びかかる。獣がロルンに飛びかかる寸前で背中に剣を突き刺し、ギリギリ仕留められた。そしてロルンに噛みつくもう一体の敵を下から斬りあげる。とっさに獣は飛びのいた。

「たく、それでも正統剣士か?情けない。」

「すまん、今回ばかりは助かったぜ。でも剣が折れた上に利き腕やられた。まずいわ。」

「大丈夫だ、俺がなんとかするよ。しかしあいつ味方を守ったよな。」

「守ったというよりも戦略的に生かしておいたように見えた。こっちの剣の状態も多分気がつきてたし、おもってたよりこいつだけは知能が高いみたいだ。」

高い知能を持っていてかつスピードパワー申し分なく、かなりの防御力、隙がない。一体どう戦えばいいのだろうか。

その時置いてきた大剣が視界に入った。もしあれの一撃を食らわせられれば鎧もなにも関係なくたたき潰せるのではないだろうか。自在には無理でもすこしの間動きを封じてもらえれば…

「ロルン、左手でも戦えるか?」

「どうした、できなくはないが、なんか作戦でもあんのか?」

「少しの間でいいからあいつの動きを止めてくれ、武器はこれを使ってくれ。今から大剣であいつをぶっ潰す!」

「でも振り回せないんじゃ…」

「背負って走れるんだから一撃振り下ろすくらいはできるっての。おそらくあの重量なら切れるかはわからんが叩き潰せる。」

「なるほどな、じゃあ任せたよ。一番いいとこくれてやる。」

そういってロルンは剣を左手で受け取って相手に走り寄る。その間に大剣を取りに行く。大剣をつかんだが相変わらずひどく重い。昔から疑問におもっていたんだがこの剣は背負って走るときと構えようとする時では異様なまでに重量が違うように感じる。今のほうが圧倒的に重い。不思議なものだ。だから剣を背負って敵に近寄り、ある程度近くにきたら切っ先を地面につけて持つ。あとは戦況を見守る。利き手ではないにもかかわらずロルンは安定した戦い方をする。むしろちゃんとした剣を持っている分さっきよりうまく対応できている気がする。そして最大のチャンスがやってきた。

敵の大ぶりな一撃をロルンが受け止めたのだ。しかも相手が剣に寄りかかっている状態であるので、バランスをとるには剣に支えられていなければならない。つまり、身動きが取れない。

「今だ!やれー!」

「ぐをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、りゃーーーーーー!!!!」

相手に近寄り剣を振り上げる。全身の力を使っているのを感じる。腕はもちろんのことそれを支える足腰、肩、腹筋背筋、何処か一部でも力を抜けば重みに耐えかねて押しつぶされそうだ。ここから振り下ろす!

振り下ろされたその剣は魔物の胴を真っ二つに分け、爆音と砂煙とともに地についた。重量もさることながら切れ味も恐ろしいくらいに高いらしい。実践で使ったのは今日が初めてだがこれほどまでとは。あまりの破壊力にロルンも言葉を失っている。

そういって限界に達したおれは大地に寝転んだ。そして空が視界に入った。日が少し傾いている。

ロルンが剣のつかに触っているのが見えた。そして少し驚いた表情をした。

「リムド、この剣は一体。」

「うーん、たしかディアマンアルムス。親父の形見だよ。」

「そうか、すまん。」

「あー、気にすんな、俺が勝手に答えただけだし。」

「そうか、まあ行くぞ。おれもけがの手当てしてもらいたいし、そこで伸びてる自警団の人らも運ばないとな。」

「えー、疲れた。この剣持ってくれよ、クタクタなんだよ。」

「怪我人にこんな重いもんもたせるつもりか?自分で運べ。」

そういってロルンは先に歩いていく。そしてまだへたっているリムドと置いてある大剣を確認し、前を向きリムドに聞こえないようにいった。

「なんだよあの大剣、両手使えたとしてもまるで持ち上がる気がしなかった。こりゃわ俺の負けだな。」


そのあと自警団の屯所に俺たちは行き、けがの手当てと一晩の寝床を提供してもらった。ちなみに自警団の三人は事件直前まで酒盛りをしていたらしく懲戒処分になるようだ。翌日俺は町を出ることにしたが、ロルンはもう少し休んでいくことにするようだ。幸い怪我も後遺症なく完治するらしい。

「もう行くのか?もう少しゆっくりしてけばいいのによ。」

「あんたはくつろぎすぎだ。」

ロルンはベッドに横たわりあくびなんかしている。横には商人のおっさんからのお見舞いが置いてある。半分は俺がいただいた。

「まあ、なんだ。いくなら気をつけろよ、また行き倒れてても、今度は助けねーぞ。」

「同じつては二度踏まんよ、なめんな。あと勝負は次あった時までお預けな?さっさと怪我治せよ!」

「おう、そうだ、忘れるところだった!これ持ってけ!」

そういうとロルンは小汚い袋と鞘に入ったナイフを投げつけてきた。

「あぶね、刃物投げるなよ。で、なんだこれ、わ!金じゃねえか。受け取れねえよこんなの。」

「何言ってやがる。これはあくまでもお前がクエストを手伝ってくれたことに対する報酬だよ。きっかり半分渡す。これで昨日の借りはチャラだ。」

「勝手にチャラにすんな。まあもらえるものはもらっとく。あれ、でも昨日のモンスターにとどめさしたの全部俺だから、六割くらい俺の功績じゃねえ?」

「うるせえ、文句があるなら返せ。」

「すみませんでした。」

「そういうところは素直なんだな。まあいいや。お前、確か14だったよな。なら来年ルディに来いよ」

「ルディ?なんだそれ。」

「知らないのか?あの大陸でもっとも有名な専門職業者養成所ルディ。俺はそこの生徒でな。15歳から受けられる。来年の入試に来いよ、お前ならきっと受かる。」

「入試だ?めんどくさいな、いけば入れるんじゃないのか?」

「そんなわけあるか、倍率半端ねーし、まあ卒業すれば王国騎士団幹部はほぼ確定と言われるほどの学校だからな。結構面白いところだぜ?」

「学校か。でもまあロルンのいるところじゃあたかが知れてんだろ。」

「おい!そんなことねえ、おれの自慢じゃないが、おれでもそこでは中の下だ!」

「ホントだ、自慢じゃねえ。」

おれは思わず吹き出してしまった。ロルンはむきになり始めた。

「あ、てめえ、絶対ルディのことたいしたことないって馬鹿にしてるだろ!わかったよじゃあ今からルディの魅力について語りつくしてやる!!」

「おっと、そろそろ行かなくちゃ、また砂漠のど真ん中で野宿をする羽目になる。じゃあな!」

「あっ、待て!逃げんな!」

そんなロルンの静止を一切聞かず。おれは部屋を後にした。ルディか、頭の片隅くらいで二日くらいは覚えておこう。

でも今は自由で気ままな旅の途中。次の目的地はどこにしよう。ただ今は強くなることだけを考えて、また今日も旅を続けるのである。

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