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第一章 一節 ”理由”

僕はあの後、連絡先をマリナに教えて家に戻った。

でも、帰った時には既に僕の知っている日常は無くなっていたんだ。

「……どうして…………」


 まず初めに出た言葉は目の前の出来事に対する問いかけだった。


「父さん? 母さん?」


 無人の居間で両親の名を呼ぶ。


 返事は、ない。


「なんで……なんでだよ! どうして……っ!」


 理解したくなかった。

 分かりたくなかった。


 悲劇を否定したいがために首を横に振る。


 違う。

 父さんは二つに裂けてなんかいない、

 母さんは頭が半分になってなんかいない――……


「……どうして」


 ポツリと漏れた言葉は、たったそれだけで感情を抑えきれなくする。


「どうして父さん達が死ななきゃいけないの!!?」


 どうしようもなくなった思いは声となってこの部屋を駆け巡る。

 しかし、それに反応してくれる人はもう、いないのだ。


「そうだっ! ケイトとメアリィは!!」


 僕の妹と弟、二人なら何か知っているかもしれない。

 二人のいる部屋へ急いだ。


「ケイト……? メアリィ……? どこ……どこだよ!?」


 二人は部屋にはいなかった。この時間は必ずいるはずなのに――

 その代わりなのだろうか。ドアとは反対の壁には乱雑にこう書かれていた。


『アルト=ランドレット。お前の家族は預かった。返してほしかったら王都まで来い。

 聖ドレット教会治安維持隊 コルネガ』


 何だよ、それ。


「何だっていうんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 地に膝をつき、無機質な天井を仰ぎ泣き叫ぶ。

 一瞬で家族を失った絶望。マリナと出逢ったというわずかな幸福の後の大量の不幸。


 だが、不幸は、それだけでは終わらない。



「やっほうアルト=ランドレット。絶望してるかい?

 ボクの名前はバンディーノ=ドレイク。以後お見知り置きを」



「誰だよ。お前……」


 金髪にピアス。いかにもチャラそうな男だ。

 表情は常に薄ら笑い……まるで僕を嘲笑っているかのように。


「知りたい? キミ、ボクのことが気になる?」


 僕に聞いておきながら、彼は今すぐにでも言いたそうで堪らないといった様子だ。


「……」


 気に入らない。

 こんなやつとは決して相容れないだろう。


「いいねぇその顔! キミみたいな子はボクの大好物だ」

「そう? 僕はお前みたいなやつ大嫌いだ」

「……ふーん。そうかいそうかい……なら教えてあげるよ」


「――聖ドレット教会治安維持隊。それがボクの所属だよ」

「っ!!」


 聖ドレット教会……それは…………。それは……っ!


「そう! ガキ二人を連れ去ったのはボクの部隊。そしてキミの両親をこの場で殺したのは他でもない、このボクだ!!」


 その宣告は、僕を精神的に追い詰めるにはあまりにも十分だった。


「うわあぁぁぁぁあぁぁぁああああぁあああぁぁぁぁぁぁああぁあああああぁあぁぁぁぁぁぁあああぁあぁぁぁ!!!!」

「ハハハハッ!! そうだ! その怒り、その嘆き、その痛みが! ボクに快楽を与えるんだ!」

「殺す、絶対に殺してやる!!」


 普段の僕なら100%こんな感情的に行動することはなかっただろう。

 でも、今この瞬間は!


「お前を殺さないと僕の気が済まない!! 覚悟しろ!!!」

「殺れるものなら殺ってみろ!! アルト=ランドレット!!!」



 熾烈な運命は、もう始まっていたのだ――――


                     ~黄金要塞編~  開幕

先週はいろいろあって更新できませんでした。

そう、いろいろあったのです。

今週からはちゃんとしていきたいです。


ここで新コーナーだよ!

一気に家族を全員失ってしまった主人公アルト君。

彼の怒りの矛先は両親の敵、バンディーノに向けられた。

自他共に認める魔法不得意少年に果たして勝機はあるのか……

次回! 『魔法を使うということ』


後書きが一番書くのが楽しい。

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