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影取りババア

 ちょっとした昔話だ。

 ある人間と、呪いの話。


「我々は呪われている。が、その呪いは解くべきではない」


 彼は一国の王だったが、自分の国に降りかかった呪いを無くそうとは思わなかった。

 

 彼は呪いを解除する方法を知っていたが、それを国民に教えようとしなかった。

 


 むしろその逆。



「我々は呪いを受け入れ、未来永劫生きていこう」


 彼は呪いの解除方法をひた隠し、一人打ち震えていた。


「ゆっくりと……しかし確実に、着実に期を待とうじゃないか。この国の呪いは、いずれ大いなる災いとなるだろう……フハハハ…………――」

 アスランの放ったサイコキネシスにより、地面から露出された手の持ち主は自由を失った。

 

「さあ! 僕たちの前に姿を現してもらおう!!」


 アスランが念じると、露出した手は、だんだんと地上に引き上げられ始める。

 アスランに操られた手は、抵抗しているのか、プルプルと小さく振動していた。


 そして、ついに二人を強襲した者の正体が明らかとなる。


 その正体は……!



「わわわーっ!! 何故なに不思議パワーに操られて地上にこんにちはーしちゃいました私ぃー!!」



 アスランが引っ張り上げたのは、泥まみれになったハイテンションガールだった。


「ん? 女の……子?」


 アスランは拍子抜けしたといった具合に首を傾げた。


「おっさん……」


 少年はちょっと引き気味に一連の流れを見ていた。


「少年? 僕は何も悪くないよね?」 


 アスランが困り顔になる。


「いつになったらおろしてくれるんですかぁー! もしかして、私のカラダが目当てなのっ!?」

「へっ?」

「おっさん……」


 まるで年端もいかない少女に乱暴をする中年の図だ。

 少年はアスランから距離を離し、ドン引きしていた。


「ドン引きっすわー。できれば一緒にいたくないっすわ―」

「やめてよ!? なんで地の文で説明したことを言うのさ!? これじゃあまるで僕が……」


「早く離してくださぁーい!! この、変態!!」


「……ッハ!!」チーン


 アスランは魔法を解き、その場に倒れた。


「キャッ!」


 少女は、アスランの魔法が解かれたことによって地面へと直行して落ち始めた。


「(ぶつかる!!)」

 

 少女が地面との激突を予感して目をグッと閉じて、覚悟を決めたとき、


「危ない!」

「ほぇ?」


 少女の体は、地面に落ちる寸前に少年が受け止めていた。


「大丈夫か?」

「……うん」

 

 少女は頬をちょっと紅く染めていたが、少年はそれに気付かなかった。


「おっさーん、さっさと起きろや!」


 少年はアスランの顔面を靴で蹴った。


「痛いっ!! ……はっ!?」


 アスランは目を覚ましたと思ったら、瞬時に立ち上がってから両手を地面につけ、頭を勢いよく振り下ろした。


「すいませんでしたー!! まさか襲撃者が女の子だったとは思いもしなかった……!!」


 おっさんの土下座は貫禄があるなぁ、と少年はアスランを見ながら思いふけっていた。


「まあおっさんもこんなに謝ってんだ。許してやってくれ」

「いいですよ全然大丈夫!」


 少女はにっこりとほほ笑んだ。少年に、


「本当かい!? 良かった~、ところで……」


 アスランは飛び跳ねるように体を起こし、少年を見て言った。


「何故にお姫様抱っこ?」



                ☆



 とある部屋の一室――


「おやおや……今宵もまた、命知らずが一人……ヒヒヒヒ……」



                ☆


「わぁーっ!! すごーい!!」


 アスランは少女を喜ばせるために様々な魔法を披露していた。

 その曲技の数、およそ三十七。


「もっとすごいのないの?」

「もっと!?」


 アスランはギョッとした。


「もう魅せ技残ってないんだけど……」

「えー? もうマホウないのーっ?」


 少女は駄々っ子のように文句を垂れ始めた。


「しょうねーん! 何かいいアイデアはないのかい?」


 アスランは少女の横で一緒に魔法を見ていた少年に助けを求めた。


「アイデアねぇ……」


 少年は提案した。



「この子に魔法を教えてあげればいいんじゃないか?」



 少年は、少女の頭をポンポンしながら言った。


「私にも使えるの!? 楽しそう!!」

「魔法っていうのはイメージだからね。君だってちょっと訓練したらすぐ使えるようになるさ」

「じゃあ私おじさんが最初にやったやつやりたい!! あのフワーってするの!!」


 少女が隣の少年を促す。


「ねえねえおにいちゃんもマホウ使えるの? フワーってするマホウ教えてーっ!!」

「あぁ、いいよ。あれぐらいなら多分俺も出来ると思う」

「僕のサイコキネシスをあれぐらいって……」


 サイコキネシスは日常的に使う部類ではなく、使い慣れるには練習が必要な魔法だ。まともに物体を操ったりするには相応の練習期間を要する。アスランは今のレベルまで使いこなせるようになるまで三か月ほどかかっている。


「じゃあ試しにあそこの石っころを持ち上げてみるか……」

「初心者がサイコキネシスを使うのは至難の業だぞ? あっちの軽そうな小石にしたらどうだい?」


 アスランはそう言ったが、実は彼が勧めた方の小石は、自分の魔力でちょっとだけ浮きやすく、つまりサイコキネシスを使いやすく細工を仕掛けておいた。まあなんてことはない、これはアスランなりの親切だ。

 少女が期待を込めた目で見ている手前、失敗するのは少年も恥ずかしかろうと思い、手を貸してやることにしたのだ。


 だがアスランの思惑は外れた。


「出来なかったらそうする……俺としても、記憶喪失になってからの初めての魔法だ。自分がどんなレベルの魔法を使えたかなんて覚えていない。だからこれはちょっとした試験のつもりなんだよ」

「……いいのか? 失敗したら恥ずかしいよ~?」

「そんときは俺もおっさんに魔法を教えてもらうとするよ」


 少年が魔法を使う体勢に入った。


「見てろよ嬢ちゃん! これが、サイコキネシスだッ!!!」


 結果、サイコキネシスは発動した。


「わぁお……すごーい!!」

「……なんだ、少年……君は…………」


 発動したサイコキネシスはアスランが細工を仕掛けた小石でもなく、少年が定めた小石でもなく……


「君は、一体何者なんだ!?」


 少年のサイコキネシスは、彼らの眼下数メートル地点の地面を抉り取った。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!! やべええええええ!!!」

「おにいちゃんカッコイー!!!!」

「なんて魔法力だ……ただのサイコキネシスで岩盤ごと持ち上げるなんて……」

「まさか俺にこんな力が備わっていたなんて……驚いたぜ」


 少年は完璧に岩盤を操りながら笑った。そしてそのまま岩盤を地面に降ろす。


「まっ、これが魔法だよ多分。すごそうに見えるけど、これたいしたことないから多分」

「私も! 私もそれやりたーい!!」

「よしきた! 俺が魔法の使い方、とくと嬢ちゃんに教えてやるぜッ!!」



 そして十分後―――、


「きゃぁぁぁぁ!!! 出来たぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 少女は少年から教わったやり方通りにサイコキネシスを行うと、すぐ傍の小石をかろうじて浮遊させることに成功した。


「僕が何か月も練習してやっと出来るようになったのに……」


 アスランは二人との才能の差を感じ、地に手をつき悲しみに暮れていた。


「いやぁまさか嬢ちゃんも使えたなんてな。もしかしてサイコキネシスって簡単な魔法だったのか?」

「念力系統の魔法は目に見えない分容易に使える魔法じゃない筈、何だけどねえ……」

「魔法を使う上で一番重要なのは『想像力(イメージ)』だからなぁ。それ次第なんじゃねーの?」

「ねえ二人とも、見て見て!」


 少女は後ろで話していた二人のほうを振り返った。

 月のような天体が彼女を照らし、とても少女に見えないような色気を纏った彼女。



「これで、私もお兄ちゃんたちと同じ『マホウツカイ』だっ―――」


 少女は途中で言葉を止め、目を大きく見開いた。

 

「……? どうしたんだよお嬢ちゃん」

「どっ……どうして……?」


 少女に少年の言葉は届かず、眼球だけ後ろを向けようとしていた。


 その様子がおかしいことはアスランも少年も瞬時に理解した。


「おっ、おい!? 大丈夫か!?」

「少年!!」

「わかってるよ!!」


 アスランが少年を少女へと走らせる。

 そして、少女は走ってくる少年へと力を振り絞って手を伸ばした。


「お、に……ちゃ……っ!」


 だがその手は、少年が掴もうとしたときには断裂していて、もう存在していなかった。


「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」


 少女は、金切り声の悲鳴を上げる。しかし依然として倒れることはなく、まるで強制されているかのように直立を続けていた。


「少年!! 彼女の後ろに、誰かがいる!!」

「何だと!? そいつか嬢ちゃんをこんな目に合わせやがったのは!!」

「駄目……アイツが………影取りババアが、来るからっ! 逃げっ……」


 そして、少女の体からは膨大な量の血が噴出し、その肉片がバラバラに飛び散った。




「ヒィ―ヒッヒ。だあれだい? あたしをばばあなんて呼ぶ悪い子は」



 

 齢八十代のような声は、肉片となった少女の体が作り出していた影から這い出てくるように聞こえた。


「そんな悪い子には、オシオキしないとねぇ……ヒッヒッヒ」


 少女を殺害した犯人は、その姿を二人の前に現した。


「テメェ、よくも嬢ちゃんをッ!!」


 少年がなりふり構わずに妖しいババアに向かう。


「待てっ!! 死にたいのか少年!!」

「ヒィーヒヒヒヒヒ! あんたら、見ない顔だけど…」

「うるせぇ!! 死んで償えよババア!!」


 少年が、勢いに任せて光の刃のようなものを右手に纏い、ババアへ攻撃を仕掛けた。


 しかし、



「んぬ? あんた、この世界の住人じゃないね?」


 ババアは少々驚いたような声を上げる。

 

 いつの間にか光の刃が消えていた少年の右手を凝視しながら……


「なっ……!? 離しやがれッ!」


 少年が掴まれていないほうの手でババアを殴ろうとした。

 が、少年の拳は空振りした。


「ヒッヒッヒ。こわいこわい」


 ババアは、少年たちからちょっと離れた場所に移動していた。


「この野郎……どうやって俺の魔法を消しやがった!!」

「さあて、それを答える義理はあたしにゃないよ」

「チッ……」


 少年は、まだ余裕ありげなババアを警戒するように、その場に立ち止まった。

 

「さっきのを見る限りじゃああんたはこの世界、モアグリードの人間じゃない。だったらあたしはあんたらと関わるつもりはないよ。さっさとあっち(・・・)に帰るかその辺でくたばるんだね」

「モアグリードだって……それがこの世界の名前だっていうのか!?」

「そうさね。そんなことを聞くってことはあんた二人とも別世界の住人かい? ヒッヒッヒ……こりゃあたまげた――」



「黙りやがれ」



 瞬間、笑うババアに閃光の物体が突き刺さった。


「ガッフッ!? ゴッッ……!!」

「痛いかよババア……その痛みが、その痛みこそが嬢ちゃんの苦しみだ……」

「グフッ……よっ、くも……ぉ」


 少年が、ババアへと接近する。


「覚悟しろよ……テメェは変な方法で俺の魔法を消し去りやがるから、この拳で直接あの世に送ってやる」

「ヒヒヒッ! ここは一時撤退だよ!!」


 ババアは、突き刺さったままの閃光に手をかざすと、それをあっという間に消し去った。

 そして、ババアは闇へと姿を消した。


「残念だったねぇ坊や……あたしゃここで死ぬのは御免だからねぇ、これでお別れだよ」

「ふざけんじゃねえ!! 人を殺しておいてみすみす逃がすわけねえだろッ!!」

人を殺しておいて(・・・・・・・・)かい? ヒヒヒヒッ! それはあの娘に禁忌を教えたあんたらにこそ向けられるべき言葉だよ」

「何が……ッ!!」


「ヒィ―ヒッヒッヒ……まあ詳しい説明はあの娘の母親にでも聞くんだね」


 ババアが言うと、二人の前に女性が召喚されるように出現した。

 彼女は急な出来事に動揺を隠せなかった。


「こっこれは! お前何をした!?」

「ヒィーッヒッヒ……ヒッヒッヒッヒッヒ!!!」


 ババアの笑い声だけが響いた。


「この声って……影取りババアじゃない!? なんでこんなところに……そもそもなんで私は……っ!?」


 彼女は肉片になった少女の亡骸を目撃して、顔色を変えた。


「まさかこれって死体!? でもなんでモアグリードでそんな……」

「あんたはねぇ、あたしがなんでここにいるのかわからないのかい?」

「ヒッ! いっいえ、わかりました……あの子が、禁忌を犯したんですね」

「正確にはあの男たちが禁忌を破らせるように仕向けたんだよ」

「なんてことを……! 貴方たちはなぜそのような……」


 彼女の責める目線は見えないババアではなくアスランと少年に向けられた。


「は? いやいや待ってくれよ。嬢ちゃんを殺したのはババアだぜ? 俺たちは何もしてないって!!」

「そうですよ! 僕たちはただ……」




「魔法を、教えたんじゃろう?」




 ババアが、心底面白そうに言った。


「それこそが禁忌! それこそが超えてはならぬライン!! 禁忌を犯した者は殺される……あの娘が禁忌を犯したのはあんたらが魔法なんて教えたからだよ。だから――」



 あの娘を殺したのは、あんたらなんだよ!! ヒィーッヒッヒッヒヒッヒッヒヒヒヒ!!



「ところで貴婦人さんや」

「はい……なんでしょうか?」


 ババアに貴婦人と呼ばれた彼女は、ババアの口調の変化に言い知れぬ不安を感じた。


「あんたの娘は元気かい?」

「……はぁ?」


 彼女はババアが何故そんなことを言ったのか理解できなかった。

 なぜなら彼女はババアと会ったことも、自分の娘をババアに見せたことも無かったからである。

 

 しかし今、ババアはまるで娘と会ったことがあるかのような言いぐさだった。


「娘なら確か、地上に出て遊ぶって言ってて――……」


 だんだんと彼女の顔が青く染まっていく。


「まさか……もしかしてあの女の子って……」

「そうさね。あの娘はあの二人が勝手に禁忌を破らせた結果殺された、正真正銘あんたの愛娘さね」

「そ、んな……」


 彼女が地面に崩れ去った。


「ヒィーッヒッヒッヒッヒッヒ!! そろそろあたしはお暇するよ。じゃあの、あっちの世界の魔法使いさんたちよ」


 ババアの声が遠ざかっていき、数秒後には完全に気配を消した。

 そして取り残された三人……。


「タミィが禁忌を犯したですって……嘘よ。そんなわけないわ」


「あぁ……私の可愛い可愛い娘。どうしてこんな姿に……」


 彼女は少女の亡骸へと歩み寄り、ぼそぼそと独り言をつぶやいていた。


 そこに、アスランが話をしようとした。


「あっ、あの……娘さんは残念ですが……」

「タミィ。あなたが『死ぬ』なんて有り得ないわぁ……うふふふふ」

「…!? 奥さん!! 一体何をッ!!」


 アスランが突然の出来事に驚いた声を上げる。

 その声に反応して少年も確認するために目を向けようと思った瞬間、


 クチャ…クチャ…クチッ……、


「!!?」


 彼女が行っていたのは、咀嚼だった。

 目の前の肉塊を法悦とした表情で一口一口貪る。

 

 彼女のただならぬ様子に二人はやめさせるように言う。


「何をしているんですか!? こんなこと、道徳的に有り得ない!!」

「おいおっさん!! とりあえず嬢ちゃんからこの女を引き剥がすぞ!!」

「わかった!」


 アスランと少年が少女から引き剥がそうと彼女の体に触れたとたん、鬼のような形相をした彼女が二人を爪で引っ掻いた。


「触らないでッ!! そもそも貴方たちがこの子に禁忌なんて教えなければこんなことにならずに済んだのに!! 私だって自分の娘を食べるなんてことしたくないのわかるでしょ!?」


 まるで理論が成っていない。

 二人は驚愕に顔を歪ませた。

 そして、アスランが彼女の言い分に対抗するように言う。


「食べたくないのに食べるとは何だ!? 普通死人を食べるなんて有り得ない!! 異常だ!! 何故そのようなことをしなければならない!?」

「そう、貴方たちは常識すら知らないのね……いいわ」

「食人が常識だと――「止めろおっさん」


 少年はアスランの肩に手をやり、落ち着くように促した。


「少年! だが彼女は……」

「俺の記憶が正しけりゃあここでの常識ってのは俺たちが元いた世界の常識とは違うらしい……だったら、この女から話を聞いたほうがいい」


 少年の顔は今だ肉塊で赤く染まった彼女のせいで引きつってはいるが、アスランよりは幾分冷静さを取り戻していた。


「元の世界がどうとか私は知らないけどね……今後タミィのような『死人』を出さないように警告しておくわ。まず、影取りババアの存在についてよ……」


「影取りババアっていうのはさっきまでここにいたおばあちゃんのことよ。あれは禁忌を犯した者の影から這い出てきて、死に絶えるはずのない命を刈り取っていく様からつけられたあだ名よ。だからあれは影のある場所ならどこからだって現れる……」

「ちょっと待ってくれ。禁忌っていったい何のことなんですか?」


 アスランが彼女の言葉に口を挟むように質問した。


「……私の娘に禁忌を破らせたくせに何も知らなかったっていうの? 悪気がないってのが一番厄介だって解らないのかしら」

「す、すいません……」

「いいわ。言い訳なんて聞きたくないし。でもこれもタミィみたいな犠牲者を出さないためよ。教えてあげるわ」

「犠牲者……か」


 少年が悲しそうに呟いた。


「何? 言いたいことがあるならきちんと言ったらどうなの?」

「いや。なんでもない……話を続けてくれ」

「ふん……禁忌っていうのは封魔の呪いを解除する行為よ。これについては私自身禁忌を犯したくないから知らないわ」

「禁忌……」


 少年は封魔の呪いを解除する行為について考えた。

 影取りババアが言っていたことを思い出す。


『魔法を教えたんじゃろう?』



 思い当たる節はこれぐらいだ。

 影取りババアは少女が魔法を使えるようになった瞬間に現れた。


 それが本当なら、やはり少女を殺したのは俺たちなのだろうか……。


 少年は急に責任感に襲われた。


 だが、


「心配するな少年。過程でどんなことがあろうがあの少女の命を奪ったのは紛れもなく影取りババアであって、決して僕たちじゃない」

「そうね。たとえ禁忌を犯そうがあれさえいなければタミィが死ぬことはなかったのかもね」


 母親は今だ死んだ少女タミィの体を食べ続けている。


「あのう、それ、止めることは出来ないんですか? 見ているとこっちが吐きそうになってくる」


 アスランのその意見は尤もなものだった。さっきまで生きていた人間を目の前でずっと食べられていたら気がおかしくなりそうになる。

 だが、


「駄目よ。人っていうのは死んだら食べてしまわないといけないものじゃない」


 そんな二人の常識を逸脱したことを、さも当然であるがのように彼女は言うのだった。


少年たちは理解した。

この異世界、モアグリードの異常性を……。


影取りババア、禁忌、封魔の呪い。


様々なキーワードが交錯する中、二人が新たに目にしたものは……!


次回『地底の町で』

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