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荒野天変・後編


 異次元の空。

 アルトとセラは、戦略部隊の神髄を目の当たりにする。



 ズシンッ……! と重く響く音が足元を伝ってくる。


「この音は!?」

「十中八九アレがやったんだろうよ。左、見てみな……」


 セラが指差したほうを見る。

 そこには、透明な何かが建物を消し飛ばしている様が広がっていた。


「これが、さっき戦略部隊が言っていた……」

「百億結界封殺陣ってやつね」


 存在していた物体がキレイサッパリ消し飛んでいる。

 単純な威力も、並みの魔法の数十倍はある。


「アルト! 結界が消える!」


 セラがそういったあとすぐに僕たちのすぐ左を消し飛ばした結界がドット状に分解されて消失していく。


「ザメイルがこれだけで終わらせるはずない。ここから離れるんだ!! 次が来る!!」

「逃げるってどこへ!?」

「とりあえず止まっちゃだめだ!!」


 セラの手を取り、被害の少ない建物の奥へと逃げ込む。

 最初の攻撃は多分牽制だ。

 もしザメイルが僕たちの居場所を知っていたなら次こそは殺しに来る。

 

「ザメイル様……っ!! どうかお助けを!!」


 戦略部隊の男は膝をつき祈りを捧げていた。バカかアイツ!


「何してんだよお前!! しにたいの――」


 轟音、爆音にアルトの声は途切れる。

 結界による一斉攻撃が行われたのだ。標的ターゲットは言うまでもなく、さっきまで僕たちがいた座標。

 つまり、戦略部隊が座っていた場所半径五メートル四方。


「諦めろアルト! あれじゃもう助からない……それより目の前の敵をなんとかすることを考えろ!!」

「……くそっ………」


 ザメイルは部下を自らの手で殺して何とも思わないのか!?


「まずはこの建物から出たほうがいいかもね。あたしが壁を破壊するから、アルトはそこから外に出て」

「セラはどうするの」

「あたしはその後をついていくよ。大丈夫、絶対ザメイルを打ち取ってやるから」


 セラが壁を破壊するカウントダウンが始まる。


「三、二、一!!」


 強化の魔法を三重にかけ、豪快に大穴を開ける。


「とうっ!」


 間の抜けた掛け声で飛び出す。

 そして、飛び出して今さっきまでいた場所の高さに気付く。


「ここ三階じゃぁぁぁぁぁん!!!」


 落下するように地面に激突。

 粉塵が舞い、視界が奪われる。


「ゲホッ、ゲホッ!」


 何とか生き延びた……でも早くしないと次の攻撃が来る。ここから離れないと。

 

 煙が晴れてきた。セラはちゃんと降りてきたのだろうか。


 僕は煙が晴れるのを待ってセラが開けたであろう大穴を探した。


「……えっ」


 結果的に大穴は見つけた。上を見るだけですぐに目に入ったのだ。

 しかし、その大穴はセラが開けたものではない。


 それは、ザメイルが結界のドットで形成した巨大な槍が突き開けたものだった。


 それが意味するのは、セラの……死。


「うわぁああああああああああああああああああああああ!!!!」


 我を失って開いた風穴を確かめる僕は、ザメイルによるもう一撃が来ていることに気付かなかった。


           ☆


 遡ること少し前のこと。



 部屋の外からはドアを叩く音と一緒にアルトの声が聞こえる。


「マリナ……君は戦略部隊を舐めすぎだ」

「舐めすぎ? ……どういうことかしら」

「フッフッフッフ……すぐにわかるさ」


 その態度にイラッと来る。


「貴方がいくら強くても――」


「うわァァァァァァァァッッ!!」


 っ! この声は……!


「アルト君!? どうしたの!?」


「アァーハハハハハ!! 大丈夫な訳ねえだろ!! アルトはもう死ぬんだよ! 絶対に助からねえ。ほら、聞こえてくるぞ?」


 ザメイルがそう言った直後だった。

 私の耳に激しく噴き出す地の音が聞こえたのは、


「聞こえたか!? 元気に血を出す音がよォ!! これじゃあもうアルトも助からんだろうな!」


 嘘……ホントに死んじゃったって言うの? そんな訳……。


「アルト君がもう助からないって? 笑わせないでよ……アルト君は死なないわ。だって――」


 アルト君は、マリナを残しては死ねないんだから―――


          ☆


 ……あれ? 僕、まだ生きてる……?

 僕はあの時ザメイルの結界に気付くのが遅れて……


 死んだはず、なのに。


「んっ……眩しい」


 暗闇しかとらえていなかった僕の目はどうやら閉じていただけらしい。


「そうだ! セラは……ッ!?」


 眩しさに慣れた目で辺りを見回すと、仰向けになって倒れている少女を発見した。

 それは、さっきまで一緒にいたはずの……。


「セラ!? なんでこんな……っ!」


 僕なんかを庇って……。

 その言葉はセラが小さく唸り声をあげたことで、呑み込まれた。


「セラ? 大丈夫!? しっかりしてよ!!」


 必死になって目を覚ますように呼びかける。


「うぅ……アル……ト?」

「っ!! セラっ! 僕だよ!! アルトだ!!」


 やった! セラが目を覚ました! 早くここから離れないと――。


「早くここから離れないと、ア・ブ・ナ・イ・ヨ?」

「ッ!!?」

 

 戦略部隊だ。ザメイルの攻撃を受けて死んだはずじゃ無かったのか!?


「クカ、クカカカカカカッカッカカカカカ」

「なんだこいつ……様子がおかしい……」


 まるで、からくり人形のような。


『ごめいとぉぉう!! そこの雑魚の体は俺が乗っ取ったんだ』


 この相手を逆撫でするようなムカつく声は……。


「ザメイル……!!」

『またまたご名答。しかしアルト、お前もよく生き延びるなぁ……本来なら最初の刺客で死んでいる算段だったのによお、それがどうだ? 今となっては俺の最大魔法まで使う羽目になっちまった。これをさ……どうオトシマエつけてくれるんだ!?』


 ザメイルは拡声器的な何かで音声を発しているのか、時折ノイズが邪魔してうまく聞き取れない。

 しかしザメイルが何を言おうと知ったことではない。


「そんなことよりマリナは無事なんだろうな!!」


 怪我とかさせたら僕はザメイルを殺してしまうことすら躊躇わないだろう。


『あのクソ女か。あんな奴知らねえよ。ま多分生きてんじゃねーの?』 


 あんな奴知らねえ? 一体どういうことだ?


「知らないって、お前がマリナを部屋に閉じ込めてたんじゃないのかよ!」

『あーそうだよ閉じ込めてたよ! だがアイツは俺の結界の本質を知ったとたんに消えちまった……まさかアイツ? そうかそういうことってわけか……』

「おい、何か分かったのか!? 教えろ! マリナはどこ――」

『教えるわけねーだろバーカ!! フハハハッ、どうしても教えてほしけりゃ俺をぶっ倒してみろ!! そしたら知ってること全部洗いざらい教えてやるよ』


 遠くのザメイルが宙に浮かび始める。

 いや、そうじゃないぞ。あれは……。


『このおれ、ザメイル=スローバーグの百億の結界が織り成す無数の陣に打ち勝てるならなァッ!!!!』


 結界一個一個のドットで構成された巨大な一つの物体。

 あれだ……僕とセラが見てしまったもの。

 まずその巨大さに圧倒され、次にその動きに惑わされ、そして――。


「……クソッ! なんでっ、足が震えてっ!!」


 本能が感じているんだ。

 目の前の異質な『それ』は、ほかのどんなものより危険なのだと。


『おら、こうしている間にそこのターナメントの嬢ちゃんは死んじまうぜ?』


 ザメイルの声に反応してセラのほうを見る。

 あの男、戦略部隊の刃物がセラの喉元を狙っている。


「間に合え…っ!!」


 しかし、その手は……届かない。


 またか……また僕は守れずに見殺しにするのか……。


 

 嫌だ。


「届けよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」









「届いてるよ。君の声は」

「えっ……」


 確かに聞こえた。


「カカカクカックカカカックカカッカカカカカ!!!!」

「邪魔だ――――ッ!!!」


 操られた戦略部隊の体が上空に吹っ飛ぶ。


「次はお前がこうなるんだ。ザメイル!!」


 セラがザメイルを指差しながらそう宣言した。


『ならねえよ!! 俺が全員殺すんだからなぁ!!!』


          ☆


芸術(アート)だ! 結界の中に微量の質量を構成してそれを他の結界内の質量と合体させる。その工程を繰り返して大きな質量の物体を結果的に造り出したら――』

 

 超巨大の腕、なように見えた。

 実際はもっと悍ましくて形容しがたい。


「セラっ!!」

「任せて! こんな程度じゃあたしのブーストは止められないよっ!!」


 あまりにも巨大すぎるその腕のようなものは僕たちのはるか上空から叩き付けるように落ちてくる。


「はぁぁぁぁぁッッ!!」


 きれいなフォームでジャンプした彼女は、驚異的なスピードを保ったまま結界の海に突撃していった。

 そして、結界の腕は中央に修復不可能レベルの亀裂を生じ、砕け散った。


「どうよ! これがあたしの本領っての!!」


 勝ち誇るセラの背後からは彼女が気付かないような軌道で結界の槍攻撃が来ていた。


「セラ後ろ!!」

「大丈夫よん」


 否、セラはしっかりと死角からの攻撃を見抜いていた。

 空中で振り返って踵落しを決める。


『まだまだいくぜェ!!』


 セラの踵落しで砕かれた結界は個々に分裂して再びセラに襲いかかる。


「やらせないよ!」


 結界封じの効果を乗せた水属性の水弾、というより申し訳程度の水鉄砲でセラを援護する。

 水鉄砲には威力などないのだが、合成させた結界封じが功を奏してセラへのダメージをほぼゼロにする。


「ナイスだアルト!」


 セラは結界を足場にし、ザメイルのもとまで走り出す。


『猪口才な……クソガキどもがぁああああああああッ!!!』


 ゴバッッ!! と結界の槍による三百六十度全方位攻撃がセラを囲む。

 逃げ場のない包囲網……ヤバいぞ。ここからじゃ援護することも出来ない!


『死ね! 異端分子の反乱者がァァァァァァアアア!!!!』


 ザメイルの声と同時に結界の槍がセラを刺殺すために加速し、突き刺さろうとしたした瞬間。


 一つの輝きが僕の視界を妨げた。


「この光は……!?」


 光源はセラだった。のだろうか……僕の位置ではいまいち視認できない。


 しかし、


『何が起こっている……この光は何だってんだ!!』


 ザメイルは明らかにこの光に疑問を抱いている。

 それで確信を得た。この光は――。


「最大魔法――極光拳舞踊レーヴァテイン!!!!」


 セラが放った最大魔法、レーヴァテイン。

 溢れんばかりの光の束がザメイルの百億結界封殺陣の上空に、セラを守護するように、この異次元のようなザメイルの世界を破壊しつくすように展開される。



 そして、セラの合図でそれは行われる。

 

「うわっ!! すごい破壊力だ……」


 轟音に続く轟音。ザメイルの空間結界と百億結界封殺陣にセラの最大魔法が降り注ぎ異次元の大地を抉り取る。


『有り得ねえだろうが!! この俺の最大魔法が、こんなガキ一人に……負ける訳が……ッ!!!』


 降り注ぐ無数の光を結界で耐えしのぐザメイル。

 その顔からは余裕が消え、額には汗が浮かんできている。


『戦略部隊のカス共はいないのか!? 全員出て来い、ビビってんじゃねえぞ!!!』


 降り注ぐ光の轟音に負けないぐらいの大音響でザメイルが怒鳴り散らす。



 しかし、


『……おい』



その命令に答える者は、一人としていなかった。



『調子こいてんじゃねえぞ戦略部隊!! 今出てこなかったらテメーら皆殺しにしてやる!! おいコラ、隊長の危機に誰も助けにこねーってのかよ、あぁ!?』

「助けなんて来ない」

『っ!? クソアマ……!』


 セラはザメイルの隙をついて至近距離まで接近していた。

 もうザメイルはセラの攻撃から逃れることは出来ない。


「あたしの拳を、一身に受けるんだからなぁっ!!」


 セラの極光の拳の前には咄嗟の結界など意味を持たなかった。


「がっ、ぐァアアアアアアアアアッッ!!!!」


 ザメイルの体は膨大な光に呑み込まれ、断末魔もプツンと切れる。


 術者を失った結界は消失し、元の荒野へと姿を変える。


「戻ってきた……ここは……」


 見渡す限りの砂原。照りつける太陽の日差し。

 そうだ、間違いない。


「帰ってきた! ザメイルの結界の中の世界から、僕らは戦略部隊に勝ったんだ!!」


 まさか教会最強レベルの部隊と正面から戦って生き残るなんて思いもしなかったけど……それもこれもセラのおかげだよ。


「ってセラはどこに行った?」

「あたしはここだよ」

「セラ!」


 疲れ切ったという感じに座り込んでいるセラを見つけた。


「すごいよセラ! あの魔法、僕の見た感じかなり高レベルな風に見えたんだけど……ターナメントってみんなあんなのが使えるの?」

「いや、あたしのは特別だよ。アルトには特別に教えてあげるけどあたしはターナメントの事実上のリーダーなんだよね」

「事実上の、リーダー? ってことは……」

「そう。まあ詰まる話はあたしがターナメント最強ってわけ。どうよ? すごいでしょ」


 そう言って笑みを見せる彼女は、何だかさっきまでのセラとは違ってとてもたくましく見えた。

 リーダーとか言われたからかな。


「ところでアルト。こんなところで立ち止まってていいの? マリナって子を助けないといけないんじゃない?」

「それはわかってるけどさ……」


 だからといってセラをここに置いていくわけにはいかないんだよね。


「……」


 セラが無言でじーっと見てくる。


「な、何かな?」

「あたしのことは気にしなくていいから、早くいってあげな。もし戦略部隊の残党がいたら笑い事じゃ済まないよ」

「いやでもセラが――」「だからいいって! あたしも動けるようになったらすぐ行くから!」

「むぅ……何かあったら大声で呼んでよね! すぐに駆けつけるから!」


 と言うのもザメイルの小屋はちょっと走ったら着くぐらいの距離なので、この近辺で戦闘をしたらお互いに気付けると思う。


「はいはい、何かあったら助けてーって言うから」

「うん。じゃあ後で!」


 手を振って見送るセラ。


「じゃあね。またいつか会える日を祈ってる」


 その言葉は僕の耳には届かなかった。


          ☆


「マリナー! 大丈夫~?」


 小屋の中(といっても中はとっても豪華なのだけど)をマリナの名を呼びながら歩き回る。

 

「やっぱりあの部屋にいるのかなぁ。ちょっと急いでいかないと」


 そうして走って階段を上がろうとした瞬間、


 ガシャンガシャンと地面から槍が生えてきて行く手を阻んだ。


「これは……」


 この槍、どこかで……。


「ショータイムだアルト=ランドレットぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「お前は……!!」


 そうか、疑問は晴れた。

 僕はこの槍を最初に目にしていた。


「ザメイル、スローバーグ……!」

「さっきぶりだなァ……」


 槍は等間隔でこの階段付近の空間を密室へと変える。


「お前はセラにやられたんじゃなっったっけ」


 頑張って睨みを効かせながら喋る。

 ザメイルはそんなことお構いなしに笑う。


「あれか……あれは俺であり俺じゃない存在だ」

「何だよ、それ」

「解りやすくいうと、身代わりだよ。戦略部隊の一人に百億結界封殺陣で俺に成りきるようにコーティングしたんだ。どうよ? すごいでしょ」

「お前、それは……ッ!!」

「ハハハッ気付いたぁ!? さっきの会話はしっかりと聞かせてもらってんのよ!! それにしてもいい情報じゃねーか、あの女ターナメントのリーダーなんだってな!! こりゃあいい、早く王都に帰って報告しねえとな!!」


 くそ……コイツを見ていると腸が煮えくり返ってくる……。


「……させるかよ」

「あれ? もしかして怒っちゃった? あは! かかってこいよクソガキ。俺もお前らには舐められまくりだったからよぉ……ムシャクシャが止まんねえんだよォ!!」


 槍を一本抜き取り密室にジャンプして飛び降りるザメイル。


「魔法合成!! ザメイル……お前だけは、絶対に逃がさない!!」


 想像するものは水属性を纏った槍だ。


「この俺と槍で勝負する、か」


 ブチッ。


 何かが、切れる音がした。


「図に乗んなよ、クッソガキがぁああああああああああああああああああああああ!!!!」

「っ!」


 空を切り裂く勢いで迫るザメイルに一瞬対応が遅れる。

 そのせいで蹴り上げをモロに受ける。


「ごっふっ!!」

「飛んでろッ!!」


 続けざまにザメイルは槍の手元を使って薙ぎ払いをする。


「――っ!!」

 

 なんとか僕も棒の部分でガードする。

 しかし、それだけで僕の槍の手元は大幅に破壊される。


「なんだそりゃ、紙かなんかかよ!! そんなんじゃ俺には勝てねえぞ!!」

「どうかな!」


 まだ槍は槍として機能する。

 僕は先端の刃の部分を持ちザメイルの懐に潜り込んだ。


「ちょこまかと……ッ!」


 ザメイルが足払いをする。


「わっ!!」


 それに足を取られて背中から地面に落ちる。


「死ね」


 槍の刃先を僕の頭めがけて振り下ろすザメイル。


「っぁ!!」


 変な声が出た。

 しかし間一髪でその攻撃を避ける。


「クソが!!」


 ザメイルは地面に突き刺さった槍を全力で抜こうとする。当然だ。

 早く抜かないと次に僕の攻撃が来るから。

 しかし僕はその裏を突く!


「ラァッ!!」


 思った通りザメイルは突き刺した後一秒の間に槍を引っこ抜いた。

 しかし、


「っ!? どこに――」


 計画通り、水属性の槍で少し地面の木材ごと柔らかくしておくことで高速の抜き差しを可能とさせた。

 そして僕は、


「ここだよ!!」


 ザメイルの上。

 槍を引っこ抜くときに槍を掴んでいたのだ。

 簡単に抜ける筈の槍を本気で引っ張ったら僕なんて軽く上に飛ぶ。

 逆にそれを利用したのだ。


「返り討ちだってんだよ!!」

「うぉおおおおおおおおおおッッ!!」


 落下を開始し、最後の攻撃チャンスが訪れる。

 あとは全力でザメイルの槍を回避し、トドメを指すだけ――。

 そう思った瞬間だった。


 ザッパァン。


「ぁ――」


 水属性の槍は、派手な音を立てて……ただの水となってザメイルに降りかかった。


「……」

 

 ニタァ、とザメイルは笑った。


「終わりだ」


          ☆




 その槍は、僕を、貫いた。




          ☆


「はははははははははははははは!!! いろいろあったがこれで終わりだアルト!! 内側から肉を抉り取ってや「まだ、だ」――ッ!?」


 力は出ないけど、それでも振りほどかれないようにザメイルの槍を掴む。


「てめえ……」

想像イメージする。文献上の雷神……天叢雲あまのむらくも――追加、魔法……特性付与、水分の……焼却」

「(マズイ!!!)」


 ザメイルが詠唱を効いていて危険と感じたときにはもう遅い。

 

 槍を伝って水分を焼き払う電撃がザメイルを襲う。


 水分は十分にあった。

 僕と対峙している時にザメイルの槍は僕の槍の水分に侵されている。

 水分は十分にあった。

 ザメイルの上空で槍を水に戻したことによって彼は水分に侵されている。

 水分は十分にあった。

 本来から、人間の体の70%は水分に侵されている。


 自然の雷なんて生易しい。

 神の領域による電気はザメイルを再起不能にしてもなお彼を許さない。


          ☆


 そして、荒野の結界は本当の意味で消失し、荒野に本来の天候が戻ってくる。

 雪だ。

 

 荒野の各地にいたスライムもその魔法から解放され、復活の喜びを噛みしめる。


 そしてアルトは――


「ん? この少年は……ぬっ! 酷い怪我をしているじゃないか!」


 

                    知られざる亡国編へ続く

レーヴァテインとは

過去に悪辣で非道な極悪魔導師を討ち取った英雄が持っていたとされる武器の名称、または魔法そのものであるといわれている。

確証はないがレーヴァテインは剣だった、という説が一番有力である。

史実とは曖昧に伝わっているためにレーヴァテインという魔法自体には様々な派生がある。

セラの極光拳舞踊もその派生の一つといえるだろう。

ただ彼女がこのような命名にしたのには深い理由はなく、ただ自分の戦闘スタイルが殴ったり蹴ったりだったので殴るときの『拳』とレーヴァテインの最有力説である『剣』をかけただけという。


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