愛されたかったモノ
幸せってなんだろうね?
形がないからわかりにくく。
幸せだから気付けないこと。
私は・・・幸せだ。
なんだ・・今夜も話を聞きたいのかい?
別にいいが・・・どんな話がいいかな?
そうだな・・・愛されたかったモノの話をしようか。
昔から大切に使われた物や心を込めて作った物には命が宿ると言うだろう?
それは俗にいう九十九神というんだ。
これはそんなモノのお話。
あるところに物を作るのが好きな青年が居ました。
彼は木や竹や石や土を使ってどんな物でも作りました。
彼が作るのは歪で形が悪いけど心が籠っていました。
ある日青年は恋をしました。
自分より年の離れたまだ若い少女でした。
青年は少女の誕生日にプレゼントを渡すために作り始めました。
心を込めて木を削り。
心を込めて石を削り。
心を込めながら形を少しづつ作っていきました。
そして出来上がったのは一つの宝石箱でした。
色も塗ってない少し歪んだ宝石箱。
青年は少女の誕生日にその宝石箱を持ち向かいました。
そこでは数多くの人が集まり少女を祝福していました。
ようやく少女に宝石箱を渡せる番がやってくる。
だが、青年が渡す前にとある貴族のお坊ちゃんが少女に宝石が散りばめられた宝石箱をプレゼントしたのです。
それでも青年は宝石箱を手渡しました。
少女は宝石箱を嬉しそうに受け取ってくれました。
でも、貴族のお坊ちゃんはそれが気に入らなかったみたいで・・・
誕生日が終わった後にその宝石箱を盗み出し売り払ってしまったのです。
青年はそのことを知らずにただ過ごしていました。
だけど、貴族の嫉妬は青年と少女にも及びました。
青年が少女に会いに行ったときに青年は轢き殺されてしまいました。
少女は陰ながら好いていた青年の死に耐えられず病にかかりました。
そのまま少女は死んでしまいました。
宝石箱はたった一人の嫉妬で世界を回りました。
様々な人に出会い、一度も大切に扱われることなく・・・朽ち果てて行きました。
それから宝石箱だったモノは人間に愛されたいがため人の姿を取りました。
でも誰一人モノの事を大切にしてくれる人はいませんでした。
それからモノは自分を作ってくれた人のもとにたどり着きました。
粗末な小さな墓に眠る生みの親の事を知り。
モノは壊れました。
愛されるために生まれてきたのに・・・
なぜ・・・
なぜ・・・
こんなことなら生まれてこなければよかったと・・・
愛されたかったモノをそれから見たものは誰一人としていない。
どう?
とても悲しいお話でしょ?
誰が一番悪いと思う?
貴族?青年?少女?宝石箱?それとも宝石箱を買った人?
誰も悪くなんてないんだ。
人それぞれの価値観の中で悪い悪くないなんて些細な事さ。
だから君はこの話を聞いたのだからよく考えてみて。
それだけでいいんだ。
それじゃ・・・また。




