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死神の少女

少女と少年が屋上に立っていた。

短髪黒髪の少年は、幼く澄んだ目を少女に向けた。

「生神」と呼ばれた少年はジーンズにシャツと随分ラフな格好をしていた。

「死神、君の考えはきっと神様も知っているよ」

少年は屋上の欄干に腰掛け、足をブラブラさせていた。

その隣の少女は少年の一歩後ろで、少年を咎めるように言った。

「あなた、人間に死を受け入れるようにするのが仕事じゃなかったの。

 どうしてあんなことを……」

あんなこととはつい先ほど、此処から飛び降りた青年に少年が「生きたい」と思わせた事だった。

青年は死の恐怖を感じながら、落ちていったのだ。

「だって、その方が面白そうだと思ったんだもん」

「サイテーね」

少女は哀れそうに少年を見た。

「そんな目で見ないでよ」

少年はクスクス笑った。

「それに君がいやに彼に入れ込んでいたからさ」

少年ははっと、欄干から飛び降り、宙に浮いた。

欄干は音も無く外れ、下に落ちる。

下は騒がしく、落ちてきた欄干に叫ぶ人間の声が聞こえた。

少女は感情の無い目で、下を見る。

血だらけの青年が小さく倒れていた。

それ以外に死傷者はなさそうだ。

「君、神様に楯突こうとしているでしょ」

少年が浮いたまま、言った。

「僕は何百年も君と一緒に仕事をしているから知っている。

 だけど、神様は君が存在したときから側にいるんだ。

 知らないはずがない」

少年は今にも笑い出しそうだ。

踊るように宙にクルクルと浮いている。

「そうかもね」

少女は言った。

風が少女の金髪を撫ぜる。

「でも、私は神様が自分の住む、天国から見下ろしているのが気に食わない。

 自分の周りは平穏で固めて、眼下に地獄を広げて、見て、楽しむ。

 その根性が気に入らないの」

少年はアハハハハと笑って言った。

「神様が血を好んでいるのは誰だって知ってるよ。

 だからこそ、君も神様に操られているのかも知れないよ」

少年は両手を天に仰ぎ、空を見つめた。

真っ青な雲ひとつ無い、空だった。

「神は眼下の地獄だけじゃ物足りなくなったかもしれない。

 自分の周りにも、血の海を作ろうとしているんだ」

そして少女に向き合って言った。

「いいのかい?

 君は人間の唯一の救い、心の拠り所である天国を壊そうとしているんだよ」

少年は泣き出しそうに顔を歪めた。

そして苦しそうに吐き出すように言った。

「神は世界を作り出した。

 世界の形は神の思うままなんだ。

 君は神を怒らせて、この世を壊していいのかい?」

「それでも、私は神を地に引きずり落としたいのよ」

少女は無表情に言った。

少年は悲しそうに言った。

「分かってくれないのは残念だ」


そして思い出したように少女に言った。

「そうだ、君は僕をサイテーだと言ったけど、僕は僕の考えがあるんだよ」

そして少女の前に立った。

「死にたいと思うより、生きたいと思う方がずっと幸せだ」

「そうね。だけど死に行く人間には酷なんじゃない?」

少女は風にはためく金髪を押さえながら言った。

少年は強い風に影響を受けないのだろうか、着ている服も動いていない。

「そうかな。

 自分に死刑を与えるんだから、人を一人殺すよりも罪があるよ」




少年が消えた空を少女は見ていた。

屋上への通行口に警察が走ってくる音が聞こえた。

少女は目を瞑った。

「やっぱり私は地獄が好き。ここも、ね」

そう言って、ドアが開いた瞬間、少女は消えた。



警察官が扉を開けたとき、そこには誰もいなかった。

「下から見たとき、女の子がいたはずなんだが……」

彼は屋上に誰もいないことを無線で伝えると

「自殺かな」

と呟いた。

読んでくださってありがとうございました。

やっと完結です。


やっぱり私は連載は苦手。途中で飽きてしまうんです……

でも、ちゃんとまとまったかな。

ホッとしています。



感想、ご指摘、ご意見、宜しかったら、よろしくお願いします。

皆様のおかげで、無事、完結です!

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