【原付転生 用語解説】
この小説には、バイク乗りにしか伝わらない専門用語や、知る人ぞ知るメーカーへの偏愛が随所に登場します。
読んでいて「?」となった方のために、登場人物たちの愛と偏見を込めた解説書をお届けします。
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■ エンジン・機構編
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【2スト(2ストローク)】
シンプル・イズ・ベスト。部品点数が少ないがゆえに、壊れない。軽い。速い。
甲高い排気音と圧倒的な加速は、一度聞いたら忘れられない。
反面、燃費は4ストの半分以下。オイルを燃やして走るため排気ガスも多い。
その排ガスを問題視した規制により、国内では2006年に新車販売が終了。
今この瞬間に2ストに乗れるのは、奇跡の在庫か、丁寧に整備された中古車だけだ。
アプリが毎日メンテナンスを欠かさない理由はここにある。
消えゆく炎だからこそ、美しい。今は亡きロストテクノロジー。
【4スト(4ストローク)】
現代バイクの主役。燃費は2ストの倍、排ガスも少なく、様々なチューンナップが可能。
デリケートな一面もあり、粗悪なガソリンや整備不足には正直に反応する。
耐久性・信頼性・経済性において2ストを上回り、スーパーカブはその頂点に君臨する。
地味だが、折れない。プレスカブが30年走り続けている事実が全てを語っている。
【空冷エンジン】
風でエンジンを冷やす。それだけ。
シンプルな構造ゆえに壊れにくく、旅向きの設計だ。
現代のバイクは水冷・油冷が主流となっているが、原付には空冷で十分である。
むしろ、走れば走るほど冷える。旅をすればするほど快調になる。
これが旅バイクの哲学だ。
【過給機】
エンジンに強制的に空気を送り込んで出力を上げる装置。
本来は自動車やバイクのスポーツモデルに搭載されるもの。
それを原付に付けるのは、正気の沙汰ではない。
くま子のモンキーに搭載されている。
燃費は当然、壊滅的に悪い。
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■ メーカー編
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【kawasaki】
本業は電車・航空機・船舶などの重工業メーカー。
バイクは言わば「趣味の産物」として開発されている。
にもかかわらず、そのバイクは世界を震撼させ続けている。
ヤンキー漫画に登場するバイクは体感9割がカワサキ。
ミーハーがカワサキを信仰する根拠は、ここにある。
「普通バイクに乗る人は全員カワサキを買う」(ミーハー談)
【SUZUKI】
とにかくアツすぎる、困ったメーカー。
他社に技術供与(OEM)を行いながら、自社バイクも作り続けるという謎の体力を持つ。
「スズキのバイクはスズキのOEMを使っている」という鈴菌の主張は、ある意味正しい。
鈴菌がSUZUKIを愛する理由は、本人にしかわからない。
ガレージの中がSUZUKI車で埋め尽くされているが、本人は至って正常だと思っている。
【aprilia】
イタリア発、世界に堂々と喧嘩を売り続ける2スト王。
RS50はその中でも「50ccでここまでやるか」という頂点に位置するレーサーレプリカだ。
ミーハーには「アププリン」と呼ばれているが、本人は知らない。
アプリが乗るRS50は、このクラスにおいて事実上の最速。
「全然無名のメーカー」(ミーハー談)
【HONDA】
日本が世界に誇る二輪・四輪メーカー。
スーパーカブは「世界一売れたバイク」の称号を持ち、その累計生産台数は1億台を超える。
本田宗一郎が「誰もが乗れる本物のバイク」を目指して作り上げた哲学は、今もエンジンの中に生きている。
ミーハーには「TOYOTA」と間違えられているが、本田は特に訂正しなかった。
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■ バイク・車種編
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【スーパーカブ/プレスカブ】
スーパーカブは、世界で最も多く生産されたバイク。
そのカブの業務用モデルがプレスカブで、新聞配達・郵便配達向けに頑丈さと積載量を極限まで高めた設計になっている。
観光には全く向いていない。
本田が乗るのは30年前のモデルで、新聞配達所からタダで貰った。
それが日本縦断を完走した。
【ヤマハメイト】
ヤマハが作り続けた業務用原付。
スーパーカブと並ぶ「働くバイク」の二枚看板として、蕎麦屋の出前や商店の配達を長年支えた。
モドキが乗るのは2スト仕様で、オドメーターが4周(約40万km)を達成している。
蔵王のエコーラインで焼き付いた。でも、必ず復活する。
【ジャイロX(Honda Gyro X)】
ホンダが生んだ、傾くことができる3輪原付。
カーブで車体がバンクする独自機構を持ち、通常の原付とは全く異なる乗り味だ。
ヤクルトレディの相棒として全国で活躍しており、ミルミルにとっては第二の人生を開いてくれた相棒でもある。
北海道ではヤクルトレディが軽自動車を使うため、ジャイロはほぼ見かけない。
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■ 文化・習慣編
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【two-finger salute】
2本指の敬礼。
ライダー同士がすれ違う際に行われる儀式で、「俺もライダーだ」という無言の連帯を示す。
左手でハンドルから2本指を立てて返すのが基本だが、MTバイクのライダーはクラッチ操作中で手が離せないためできないこともある。
このレースのスタート時、全員がこれをやった。
【ライダーハウス】
民泊ブームより遥か昔から、旅するライダーに簡易宿を提供し続けてきた文化の先駆者。
素泊まりが基本で、相場は数百円から二千円程度。
見知らぬライダー同士が同じ屋根の下で眠り、翌朝には別々の方向へ走り去る。
泊まった数だけ、旅が深くなる場所だ。
【純国産原付】
かつて日本は、原付を国内で設計・製造していた。
しかし現在、国内メーカーの多くは生産拠点を海外に移し、純粋な国産原付は事実上のロストテクノロジーとなっている。
本田が乗るプレスカブのような30年前のモデルは、日本国内で作られた最後の世代に近い。
古いバイクを大切に乗り続けることは、消えゆく技術への敬意でもある。
【ホクレンフラッグ】
北海道のホクレンガソリンスタンドが、毎年夏のシーズンにツーリングライダーへ配布するオリジナルの旗。
年ごとにデザインが変わり、コレクターも多い。
バイクの荷台に括り付けると「北海道を走っている」という証になり、すれ違うライダーへの挨拶代わりにもなる。
本田がニセコのホクレンで入手し、オロロンラインをオレンジの旗とともに北へ走った。
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以上が『原付転生』公式用語解説です。
わからない言葉が出てきたら、またここに戻ってきてください。
そして、できればもう一度、最初から読んでみてください。
きっと、景色が変わるはずです。




