トラブル
魔術学院の入学式から、一週間――。
少年、いやアレンはイジメられていた。
アレンは真面目で、どこか引っ込み思案なところがある。
そんな性格を見抜かれ、昼休みの度に同級生たちの標的にされていた。
暴力、罵倒、嘲笑。
そして――アレンの指にはめられた、光を放つ指輪。
同級生たちはそれを見逃すはずもなく、面白半分に奪おうと手を伸ばした。
***
かなり離れた場所。
レイナは、突然立ち上がった。
胸の奥に、ぞわりと冷たいものが走る。
――嫌な予感。誰かが、死ぬ。
「お母さん!! お父さん!! やばい!!」
職員室のドアを勢いよく開け、レイナが叫ぶ。
ライカとレオンは顔を見合わせ、すぐに真剣な表情になる。
レイナの魔法――第六感。
“これから起きる不吉”を、直感的に察知することができる特異な力。
「説明して、何があったの?」
「分かんない! でも……ヤバい! 誰かが死ぬ気がする!」
ライカは目を閉じ、鋭く耳を澄ます。
「レオンさん……訓練場の方で悲鳴が!」
レオンは即座に加速魔法を発動し、訓練場へと駆けた。
そして――その場に着いた瞬間、目に飛び込んできたのは、
倒れこみ腰を抜かす生徒と、殺意を宿した目でトドメを刺そうとする別の生徒だった。
レオンはその生徒を蹴り飛ばし、吹き飛ばす。
鈍い音。壁に叩きつけられた生徒は気絶――
……手加減を、誤った。骨と内臓の損傷が深い。
レオンは急いで回復魔法を全力でかける。
すると遅れて、ライカとレイナが駆けつけた。
「お父さん! この落ちてる指輪!!」
レオンが拾い上げ、眉をひそめる。
――見覚えがある。
これはライカがかつて身につけていた精神安定の指輪と同系統だ。
だが……魔力の密度が、段違いに強い。
ライカは震える生徒に声をかける。
「君たち……これはどういうこと?」
「外したら……勝手に、あいつが……」
レオンは指輪を再びアレンの指にはめ直す。
その瞬間、場の空気が少し落ち着いた。
服が破れていることに気づき、レオンがめくると――
身体中に青あざ。
「君たち。この子の服、ボロボロで、身体中にアザがあるけど……知らないのか?」
イジメていた生徒たちは、目を逸らして答える。
「……知らない」
「嘘。」
ライカが低く言った。
その瞳が冷たく光る。
「私は五感が鋭いんだよ。匂い、心拍、呼吸――嘘は全部わかる。
次はないけど……今回は見逃してあげる。だから正直に言いなさい。」
「……俺たちが、やりました……」
レオンとライカは同時に、大きく溜め息をついた。




