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魔導歴史書  作者: ルイ
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秘密と結婚

ある日、ライカが突然言い出した。

「正式に、結婚しませんか……?」


魔王は固まる。

いきなり、というわけでもない。

同棲しているし、村でも恋人として扱われている。


魔王は冷静に言う。

「断る。」


ライカは少し寂しげな顔をする。

「私のこと……好きじゃないんですか?」


「好き、という気持ちは私にはよく分からない。

ただ――守りたいとは思う。

けど自分でも整理がつかん。

……まぁ、そろそろ秘密も話しておくか。

嫌われたら、それまでだ。」


魔王は静かに切り出した。

「魔王って知ってるか?」


「昔、勇者軍に討伐された最強の獣人、ですよね?」


「まぁな。けど――魔王はまだ生きてる。

魔族の根城もこの前、ほぼ壊滅させた。」


ライカはハッとする。

「あっ! じゃあ、レオンさんの“知り合い”って……魔王のことですか?

どうりでいろいろ詳しいと思いました!」


魔王は短く答えた。

「いや、私が魔王だ。」


ライカはキョトンとした表情を見せる。


「死産になった赤子を、回復魔法で蘇生した。

それでも息を吹き返さなかった魂のない赤子に、

テイム――つまり、自分の魂を入れた。」


ライカは驚愕し、息をのむ。


「人類の敵が、ライカと結婚なんてするわけないだろう?」


「……じゃあ、私を守ってくれたのは?」


「人間も沢山殺している…。気まぐれだ。」


「村に結界を張って、魔族から守ってくれてるのも?」


「それも気まぐれだ。」


ライカの表情が冷たく変わる。


彼女は無言で風魔法を展開し、

自身の首元へ刃のような風を走らせた。


床に血が滴る――魔王の血だ。

ライカの首に当たる前に、魔王が素手で風刃を掴んでいた。


「気まぐれで守っていたにしては、ずいぶんと慌ててますね。」


「ライカ……そういう問題じゃない。自殺はやめろ。」


「自殺? するつもりなんてなかったですよ?」

ライカは静かに微笑む。

「守ってくれるって、確信してましたし。

それにレオンさん――私の力を忘れてませんか?

心音や汗の匂いで、感情くらい分かります。

さっきまでは悲しそうだったのに、今は随分と冷や汗をかいて……

心拍も、すごく速いですよ?」


ライカは一歩近づく。

「レオンさん、結婚しましょ?」


「いや、だから――」


「じゃあ、私から離れますか?」


魔王は沈黙する。


「……それは無理だ。ライカを、魔族から守る必要がある。」


「なんで守るんですか?」


沈黙が落ちる。


やがて、魔王がぽつりと呟く。

「……分かった。結婚する。」


ライカは魔王の目を見つめた。

そこには、いつもの無邪気な笑顔ではなく――

狩りに成功した狼の目が光っていた。

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