魔術師来訪
ある日、家のドアから「コンコン」と音が聞こえた。
ライカの母親かと思いながらドアを開ける。
目の前には、にこやかな笑顔の魔術師が立っていた。
「やっほー! 愛の巣にお邪魔しまーす!」
反射的にドアを閉めようとしたが、魔術師が足で押さえて阻止した。
「呼んでないが?」
「今いる場所、聞いてきたのよ。『狼と人間のバカップルはどこ?』って聞いたら、村の人が教えてくれたわ。親切ね〜」
「どこが親切なんだ」と魔王は心の中でため息をつく。
結局、招き入れて話をすることになった。
ライカも隣に座り、静かに様子を見ている。
「魔族のこと、一部の人間にはもう知られてるわ。討伐隊も組まれてるし。あなたが作った結界と似た作用で、周囲十メートル以内に魔族を感知したら光を放つ指輪を配ってるの。それに“魔族専用武器”のワスプインジェクターナイフも効果抜群。雑魚はかなり減ったみたいね」
「……いや、ここで話すことじゃないだろ」と呆れ顔の魔王。
「ここじゃなきゃ、バカップルの進展が見られないじゃない!」
ケラケラと笑う魔術師を見て、魔王は思う。
――こいつ、性格こんなに悪かったか?
「魔族の話は終わったし。で? どこまで進んだの? 新居でしょ! 街の借家は引き払ってたし!」
「魔族があまり来ないから、ここに住むことにした。それだけだ」
「上位魔族も普通に倒せるあなたが? ふふ、隣の子が大事だからって素直に言えばいいのに」
魔王はしばらく黙り、悟った。
この理詰め女から逃げる手段はない。
「……悪いか」
「悪くないわよ! 愛する子のためだもんねっ!」
(……ほんっっっとうにウザいな)
魔王が内心でそう思う間にも、魔術師はご機嫌な笑顔で帰っていった。




