新居
村に帰る。
ライカは家の支払いを済ませ、二人で中へ入る。
村の家にしては高い値段だと思ったが、納得した。
既に家具や寝具などが一通り揃っていて、何も買わなくてもすぐ住める状態だったのだ。
そんなことはどうでもいいと感じながら、二人はベッドに横たわり眠りにつく。
昨日は人間の体では眠っていない。
ライカも同じだ。
ホテルを出るとき、ライカは少し不機嫌そうな顔をしていたが、魔物の潜む森を一日かけて抜けたのだ。疲れて当然だろう。
……まあ、帰り道で魔物を倒したのは全部私だったが。
目を覚ますと、机の上にご馳走が並んでいた。
ライカが作ったのか?と思ったが、ライカは起きた時に隣でまだ寝ていた。
やがてライカも目を覚まし、匂いを嗅ぐとすぐに言った。
「……あ、お母さんだ」
残り香から家に入った人物を特定する。
こいつ、本当にすごいなと感心する。
そういえば鍵を閉め忘れていたなと、魔王は思い出した。
二人で食事をとりながら雑談する。
「そういえば母親は了承してたみたいだが、父親は?」
「あー、知らないです。でも、そもそも私の年齢的にもう親の了承はいらないですよ」
そりゃそうかと思いつつ、魔王はライカの父親がこの状況を知ったら青ざめるだろうと想像した。
「家は引き払っておいてよかった。荷物は袋に詰めたし、あの街に戻らなくてもいいか」
食べ終わると、魔王は愛用の袋から魔術書を取り出して読む。
「これ、本当に便利だな」
袋を見ながら思う。
素材はリスの魔物。
逃げ足が速く、私の加速魔法でも人間の体ではなかなか捕まえられない。
感覚とコツが必要だった。
数匹のリスの魔物を加工して作った袋は、小さな見た目に反して中が広い。
この魔物は食べ物を巣に貯蔵せず、二つある胃袋のうち一方に空間拡張魔術で蓄える性質を持っている。
その構造を再現して作られたのが、この袋だ。
魔術書を読んでいると、ライカがぽつりと呟く。
「……私って、魅力ないですかね」
尻尾がしょんぼりと垂れ下がっている。
ホテルにいたときは勝負に勝ち、大儲けして家まで買った勢いで、いわばハイになっていたのだろう。
「まぁ、可愛いんじゃないか? 普通にサキュバスと同レベルの容姿だぞ」
「サキュバス?」
しまった、と思いながら魔王は説明する。
「人を魅了する魔法を操る魔物……いや、獣人だな」
「そんなのいるんですか? というか、レオンさんの魔物の知識ってどこから来てるんです?」
不思議そうに尋ねるライカ。
魔王は冷や汗をかきつつ答えを濁す。
「まぁ、知り合いに詳しいやつがいてな」
唯一の救いは、魔王が加速魔法を使えると知る者がほとんどいないこと。
身体強化魔法でも似たようなことはできるため、誤魔化しが効くのだ。
「……まぁ、とにかく可愛いってことだ。要するにな」
その言葉に、ライカはようやく笑顔を見せた。




