表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導歴史書  作者: ルイ
42/83

魔術師と魔王

魔術師の隠れ家にて――。

魔術師は、かつて最強の肉体を持っていた魔王に向かって言った。


> 「ずいぶんと大荷物ね。……まさか、人間の死体でも入っているの?」




魔王は、そんな趣味はないと言いたげに無言で首を横に振る。

荷を開けると、中には金銀財宝がぎっしりと詰まっていた。


魔王の願いはこうだった。

「この財宝の半分をやる。代わりに、残りの半分で食料と金を定期的に運んでほしい」と。


魔術師は小さく眉をひそめる。


> 「……なぜ?」




魔王は静かに答えた。


> 「ライカ――一緒に暮らしている女がいる。魔族を恐れていて、私から離れたがらない。

そのせいで、家から出られんのだ。」




魔術師は内心でつぶやいた。

(弱みは、もう無いと思っていたけれど……。

 高跳びすると思っていたが、人間の身体になって情が移ったのかしら)


魔王はワインを注ぐ。それは魔物の血で造られた、魔王軍特産の酒だった。

勧められた魔術師は、ひらりと手を振って断る。


> 「何をしているの? ……交尾でも?」




魔術師が皮肉っぽく笑う。

魔王は即座に切り捨てた。


> 「そんな関係ではない。」




魔術師は少しだけ笑みを引き、(自分を客観視できていないな)と心の中で評価を下げる。


魔王は話題を変えた。


> 「根城は叩いた。あそこには人間はおらず、魔族だけだったからな。暴れやすかった。

一人を除いて壊滅状態だ。ゲートも閉じた。」




魔術師は肩をすくめる。


> 「意味のないことをしたものね。……ゲートを繋げる技術は、もう確立されているのに。」




だが心の中では、(抑止力としては及第点か)と思っていた。


> 「あなたのお願いは聞いてあげるわ。仕事もしてくれたみたいだし。」




そう言って、魔術師は戸棚から指輪を取り出す。淡く光る魔力が常時循環している。


> 「これは精神安定の指輪よ。魔導具の一種。

精神的ショックを緩和できるし、恋人さんも少しは安心できるでしょう。」




> 「恋人ではないが……感謝する。」




魔王が静かに頭を下げた。


魔術師はふと尋ねる。


> 「さっき“ひとりを除いて”って言ってたけど……どういう意味?」




魔王の瞳がわずかに鋭く光る。


> 「魔族の王だ。ゲートを閉じるのに専念したせいで、奴には逃げられた。

普通に戦っても勝敗は五分五分だろう。だが、残存魔力は半分以下まで削った。

あそこにいる可哀想な奴を検体に差し出せ。今のうちに討伐隊を組め。」




魔術師は小さく頷く。


> 「了解。……研究が進めば、対魔族用の魔法も開発できる。」




魔王が去った後、魔術師は独りごちた。

(上位個体はケルベロスすら凌ぐ……。弱い個体でも、上級冒険者のチームでやっと狩れるレベル。

 確かに、対策は急務ね……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ