最悪
パトロール中――最悪の事態が訪れた。
目の前で魔族が人間を殺す。その瞬間に鉢合わせしてしまったのだ。
避けられない戦闘。しかも相手は、最初に出会ったあの魔族と同等の力を持っている。
三人がかりでも、私が“力”を使わねば勝ち目はない。
横を見ると、ライカは尻尾を下げて怯え、警官も動揺を隠しきれていない。
私は短く息を吐き、バタフライナイフを構えた。刃から放たれる風の斬撃――だが、魔族は軽々と回避する。
想定内、魔王は加速魔法で距離を詰め、タクティカルペンを急所へ突き立てた。
次の瞬間、体ごと数十メートル吹き飛ばされる。衝撃で内臓が潰れかけたが……下に着込んでいた“魔王の毛の服”がなければ、即死していた。
その間に魔族が二人へ迫る。
私は叫ぶ間もなく、ケルベロスの魔法を同じ箇所へ叩き込んだ。
轟音と共に地面が深々と抉れる。辛うじて民家は壊さなかったが……威力は隠しようがない。
魔族はそれすら回避する。だがその位置は、すでに私の罠の範囲内。
仕込んでいたピアスを砕き、回復魔法で増幅させた“血の斬撃”を放つ。紅の刃が奔り、魔族の肉体を斬り刻む。
悲鳴すらなく、死体は粒子となり虚空へと消えた。
……最悪だ。
“力”を使う姿を、二人に見られてしまった。
しかも、魔族を殺した。
人間の凶悪犯なら「危険を排除した」として許されるだろう。だが魔族は違う。特徴的な“死に際”――粒子となって消える姿まで、二人は見てしまった。
その後、我々三人はそれぞれ別室で、個別に事情聴取を受けることになった。




