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あいつはなんだ
魔王は静かに言った。
「あいつはなんだ?」
魔術師は答える。
「肉体を持たず、魔力だけで構成されていた……血を摂取すれば強化される。」
魔術師の声が低く響く。
「血を摂取すれば強化される……。
その前に、私たちが魔法を使えるのはなぜか?
答えは、体内にある菌が血を摂取して魔力を排泄しているからよ。なら菌は一体どこから来たのか――」
魔術師は視線を遠くにやり、推測を口にする。
「奴らはこの世界の存在ではない。報告例もなく、突如現れた知的生命体だ。恐らく大昔、転移魔術によって向こうの世界とこちらを繋いだ。しかし研究は途中で頓挫し、開けられた穴は小さく、空気に混ざった私たちの体内の菌以外は通れないほどだった。
時間が経ち、人が通れるほど大きく穴が開き……私たちの血が奴らを強化することが知られてしまったのだ。」
魔術師は微かに笑む。
「推測に過ぎない、どこか間違っているかもしれない――」
だが、推測は正しかった。
魔王はそれを聞き、魔王城のある方向に目を向ける。
──復活するかもしれないな、と静かに思うのであった。




