不穏
魔王討伐祭――それは毎年行われる王都最大の行事だ。
勇者パーティの生き残りも参列しているが、五体満足なのはテイム先で魔法を扱う私と勇者だけ。他の仲間は欠損が目立ち、痛々しい姿を晒している。
欠損は勇者でさえ直せない。理由は単純だ。
回復魔法は「逆行」する。だが、魂が離れ事切れた肉体は、ただの肉塊に過ぎない。人は自らの魂を知覚できても、他者の魂までは感じ取れないのだ。ゆえに、死者を時戻しで蘇らせられるのは勇者ただ一人。
祭の熱気に包まれた会場で、不穏な気配が混じる。
私は人混みが嫌いだが、それでも足を踏み入れた。胸の奥でざわつく違和感――正体を突き止めねばならない。
魔力探知を広げると、隅に佇む一人の貴族が浮かび上がる。
その肉体は一部、異質な魔力で形作られていた。視線を送った瞬間――首がぎくりと動き、こちらを見返してきた。
……逆探知。
冷や汗を垂らし、私は足早に城を出る。城門の前で、待っていた魔王と合流した。
「……人でも、魔物でもない奴と友達なのか?」
魔王が低く問う。
「冗談はよして。人の目がないところまで逃げるよ」
そう告げ、私は魔王の背に身を預けるように覆いかぶさった。
次の瞬間、魔王は人間が到底出せぬ最高速度で、王都を駆け抜けていった。




