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天才魔導士とカナンの猟犬  作者: もにみぃ
魔導士アレットと亡国の姫君
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第44話:初めての感情

「まったく、貴女という人は……きちんと反省しているのですか?」


 ミレーヌは冷たい床に跪き、気まずそうにクリスから視線を逸らした。広めの部屋にはベッドが二つ並んでいる。いまアレットが居るのは、ジャンとクリスの二人部屋であった。


「わたくしのせいでご迷惑をおかけして、申し訳ございません。ですが、わたくしになんの情報共有もなく置き去りにした皆様もあんまりですわ」


 ミレーヌはしおらしい態度を決して崩さなかったが、悲し気に目を伏せて皆の同情を誘った。控えめな声色と上品な仕草がなんとも哀れで愛らしい。しかし、そんなハニートラップもクリスには何の効果もなかった。


「それは貴女の勝手な単独行動の言い訳にならないでしょう」


 クリスの冷たい視線に、ミレーヌは小さく唾を飲み込んだ。せっかく屋敷を出たというのに、日中は棺から出られないミレーヌは皆と一緒に過ごせる時間が極端に少ない。そればかりか、情報共有すら碌にできない。どうやらミレーヌの棺は日の光を完全に遮断できるようで、その造りのせいで音や匂いすらも感じないらしい。吸血鬼の優れた五感すら遮ぎる棺だ。少なくともその中に居る間、彼女は無防備である。


「それも劇団に入団するなんて……」


 彼は大胆過ぎる彼女の行動に頭を痛めていた。情報共有の問題を解決しなければ、今後も同じことが起こる可能性は大いにあった。人の理を外れた彼女が人の世で目立ってしまうことは、どう考えても良くないことである。加えて、彼女はラヴィアでは有名人である。

 カルラとジャンは宿に戻ってきてすぐに、劇団長へ話をつけに出掛けた。


「カルラは奴隷商に捕まり、追われていたのですよ? 見捨てればよかったと仰るのですか?」


「そうは言っておりません。やり方を考えろという話です」


 二人の口論は徐々に激しくなっていく。このままではジャンとカルラを含めた情報共有も空気が最悪になりかねない。アレットは二人の間に入り、口論を止めた。


「まぁまぁ、クリス。終わったことは仕方ないじゃん。ミレーヌも反省してるし、まずは彼女との情報共有について、今後の対策を話し合おう」


 ジャンとカルラの姿が見えないことで、彼女は幾分か普段の冷静さを取り戻していた。

 アレットの進言によってクリスはそれ以上の小言をやめた。場の空気が落ち着いたところで、アレットはずっと抱えていた疑問をクリスへぶつけた。


「実はクリスに聞きたかったことがあるんだけど……ミレーヌの別荘で”魂を分けた器”の話をしたでしょ。あの時は器より先に生存者を見つけて有耶無耶になったけど、ミレーヌはその器を持って来てるんだよね?」


 すると彼は珍しく曖昧に視線を泳がせた。アレットの問いに答えたのはミレーヌだった。


「わたくしの魔力を通せば魂のない物体を意のままに操ることは可能です。確かに、そのようなことが可能になったのは人の血液から魔力を摂取するようになってからですが……”魂を分けた器”などというものは存在しませんわ」


「えっ……そ、そうなの?」


 アレットは思わずクリスの顔を見た。彼は気まずそうに視線を床に落とし、首を縦に振った。


「アレット。これはわたくしからの忠告ですが、神官、商人、貴族、男の順で信用してはなりませんわ。味方といえども平気で嘘を吐く生き物です」


「商人や貴族ならなんとなく分かるけど、神官と男は偏見なんじゃ……」


「聞くに堪えぬ暴論ですな。アレット殿、決して真に受けぬよう」


「でも、器の話は嘘だったんだよね?」


「あ、あの時は……お二人にあの場を離れていただくために――」


 両手を振って慌てるクリスを見て、アレットは耐え切れずに噴き出した。


「責めてないよ。私達がいたから遠慮なく力を振るえなかったんだって理解してる」


 アレットのフォローが彼の良心を更に抉ったのか、クリスは短く呻いた。


「そうして甘やかすのは賛成いたしませんが……今は貴女の考えを聞かせて欲しいですわ。何故、今になってその器のことが気になったのです?」


「もし”魂を分けた器”があるなら、それを私達が持っていればいいんじゃないかと思ったんだよね。そしたら本体が棺の中にいても、どうにかして情報共有できないかなって」


 途端、クリスとミレーヌは神妙な面持ちで押し黙った。蝋燭の火が怪しく揺らめき、なんとも言えない緊張感に包まれた。


「は、発想自体は悪くないと思ったんだけど――」


「いいえ。悪くないどころか、名案ですわ」


 ミレーヌに続き、クリスも感心したようにアレットに視線を向けた。


「むしろ、何故気付かなかったのでしょうな。魔力で遺体を意のままに操れるなら、応用が利くやもしれん」


「棺の中は五感の一部が遮断されますが、魔法は使えますわ」

 

 早速、試すことになった。彼女は自ら棺に入り、棺の中から魔力を通してアレットの魔導書を宙に浮かせた。魔導書は浮いたままアレットに追従し、隣の部屋までついてきた。棺から離れすぎると操れなくなるのか、宿の外に出ると魔導書は地面に落ちた。次に、意思の疎通を試みた。アレットが魔導書のページを捲るように指示すると、本はひとりでに開いてパラパラとページを捲ってみせた。どうやら、魔導書に込められた魔力を通して伝わっているようだ。


「この方法を使えば、私たちの情報は共有できそうだけど……ミレーヌの意見を聞くことはできないね」


 アレットがそう嘆いたあと、一拍置いて彼女の声が直接脳に響いてきた。


 “アレット、聞こえていますか?”


「あ、聞こえる。すごい……どうやってるの?」


 “これは魔導書を操っている魔法とは別の、精神干渉の応用ですわ。ドニにはよくこれで仕事を指示していましたの。ただ、物体を操る魔法と併用すると効果範囲が限られてしまいますので、会話は一人ずつが限度ですわね”


「充分だよ。ただ、日中これだとずっと魔力を流しっぱなしになるけど……」


 “眷属からの供給さえあれば、問題ありませんわ”


「そっか。じゃあ、これでなんとかなりそうだね」


 アレットは追従する魔導書と共に、クリスが待機している部屋に戻った。意志の疎通が上手くいったことを彼に報告していると、上機嫌な様子でミレーヌが棺から出て来た。


「まさかこんなにあっさり問題が解決するとは……」


「アレットのおかげですわね」


「上手くいったのはミレーヌ自身に魔法の才能があるからだよ。魔力のコントロールが得意なのはもとからなの?」


「……どうでしたでしょうか。身体強化や精神干渉は人の血を飲むようになってから習得いたしましたが――」


 控えめに目を伏せたミレーヌに、アレットは湧き上がる探究心をぐっと堪えた。いくら便利な魔法が扱えても、彼女にとっては不本意なことかもしれないからだ。


「そ、そっか……あっ、そういえばミレーヌに渡したいものがあるんだった」


 アレットは己の探究心を誤魔化すように、鞄からヴィミックのぬいぐるみを取り出した。


「市場で見つけて可愛かったから買っちゃったんだ。ぬいぐるみなら棺に入れても大丈夫かなって」


「まぁ。それを、わたくしに……?」


 酷く戸惑った様子のミレーヌに、アレットはぬいぐるみを掴んだまま硬直した。考えてみれば、ぬいぐるみなんて子供っぽいものを彼女が喜ぶとは思えなかった。ミレーヌの好みそうな珍しい香水や豪華な装飾品とはかけ離れた贈り物だった。加えて、ヴィミックが血を吸う獣であることも、皮肉や嫌味にとられてしまい兼ねなかった。

 ヴィミックを見て彼女を連想してしまったことは確かだが、アレットに”可愛い”以外の他意はない。歳の近い同性の友人が少ないアレットは、淑女が好みそうな品に疎かった。


「ご、ごめん! 要らないなら無理に受け取らなくていいから! ヴィミックなのは可愛かったからで別に深い意味は――」


「い、いえ。違いますわ。人から贈り物をいただいたのは何年振りかしら。久々だったので反応が遅れてしまいましたの。嬉しいですわ。ありがとうアレット」


「……本当に? 無理してない?」


「ふふ。ヴィミックはかつてのサリアでも人々にとって身近な生き物でしたわ。わたくしにも馴染があると考えて選んでくださったのでしょう?」


 彼女はアレットの手からぬいぐるみをそっと受け取り、愛おしげに眺めた。


「わたくし、この子に意識を移して同行いたしますわ。本や武器より断然かわいらしいと思いませんこと?」


「えっ……」


 予想外の提案に、今度はアレットが戸惑った。そして、ヴィミックのぬいぐるみが浮遊しながら自分達に追従する様を想像する。どう客観的にみても不自然だった。


「ええっと……それは、ちょっとどうかな……?」


 アレットは彼女が贈り物を気に入ってくれたことに安堵したが、その意見に賛成していいものか決め兼ねた。無意識にクリスに視線を投げると、彼は柔らかい表情を浮かべて頷いた。


「魔力を通して扱うなら、少しでもミレーヌ殿に馴染むものが良いでしょう」


「そ、そう? 二人がいいなら……それでいいか」


 頭を悩ませていた目下の問題が一つ解決した。アレットはそう考えることにした。この際、不自然かどうかなど、些細なことだ。ジャンとカルラの素性がはっきり分からないことも問題だが、一番は傭兵団だ。

 彼等が劇団に話をつけて戻って来れば、嫌でもその問題に向き合わねばならなくなる。アレットは今一度、ミレーヌに向き直った。問題が複雑化する前に、聞きそびれていた腕輪のことを確認したかったのだ。


「ミレーヌ。立て続けで悪いんだけど、腕輪について知っていることを、できるだけ詳しく教えて欲しい」


 彼女はアレットの申し出に快く頷いた。


「わたくしの知る範囲で、貴女の質問にお答えしますわ」


 気になることは山ほどあるが、先ずは互いの距離が離れても腕輪が反応しなくなったことだ。恩師のクライブも意味深なことを言っていたが、アレットにはなにが条件で作用しなくなったのか見当もつかなかった。


「アカデミーに来る前までは彼と距離を取るだけで異変が起きていたのに、それが急になくなったの。原因について心当たりがあれば教えて欲しい」


「これは推測の域を出ませんが……おそらく今はバランスが保たれているのではないでしょうか」


「バランス……?」


「そもそも、その腕輪は支配権を持つ者が支配下の魔力を使用、制御することを目的とした魔道具ですわ。本来、魔力の交換や譲渡は道具がなくとも互いに了承していれば制約によっても成り立ちます。誓いの腕輪はそれを一方的に可能にするのです。ここまではよろしいでしょうか」


 アレットは屋敷の地下で見たコームの姿を思い出した。皆が苦戦を強いられたのは、彼がミレーヌの魔力を吸収し、使用していたからである。そればかりでなく、彼は肉体まで吸血鬼に変容していた。


「鬼は人の血や魂をエネルギーとするため、その魔力も変容し特異性を持ちます。あの御老人の身体にもミレーヌ殿の”魔性”が影響していたのでしょうな」


「思い返しただけでも悪寒がしてまいりましたわ。けれど、その通りです。なので、貴女と彼の間にも互いの魔力による影響がある筈です。一度でもそれを感じたことはありませんか?」


 そう聞かれて、アレットは遺跡調査の日まで記憶を遡った。強く違和感を覚えたのは水魔に襲われたときだ。腕輪が稲妻のような強い光を放ち、水魔の拘束が解けた。あの光はジャンの魔力だったのだろうか。


「相手に強い念を抱けば抱くほど、支配権を得ます。ですから離れただけで異常が起きていたのは、”離れたくない、離したくない……むしろ離してたまるか”と一方が相手を強く縛っていたからでしょう」


 途端に、火が点いたようにアレットの顔が赤く染まった。無意識に彼を縛ってしまっていたことに対する申し訳なさと羞恥心で脳が沸騰しそうだった。あまりの居た堪れなさに、アレットは両掌で顔を覆い隠した。


「ナイフが刺さったり、木の実が落ちてきたのも……私が原因だったんだ……」


 ミレーヌは腑に落ちない表情で嘆くアレットを見つめた。しかし、そんな彼女を牽制するようにクリスがアレットを宥めた。


「あの程度であれば彼には良い薬でしょう。話をまとめると、今はその支配権とやらが均衡しているということですかな?」


「ええ、おそらく。互いに対する念が均衡し、奇跡的に支配権が釣り合っている状態でしょう。まぁ、分かりやすく言えば”相思相愛”ですわね」


「え……っ、?! そ、そそっ、そう――」


「落ち着いて聞いてくださいませ。これは貴女のために言いますが、なにも腕輪による支配は”好意”の念だけではありません。実際、腕輪で他者を支配していた者達の多くは、相手へ好意を抱いていたのではなく、その魔力を切望していたにすぎません」


「……、……」


 深く呼吸を繰り返し、アレットはミレーヌの言葉を反芻した。彼女の忠告が浮ついたアレットの思考を現実に戻した。思えば、腕輪の異変がなくなったのはアレットがドラゴン退治への同行を了承した時からである。ならば、彼にとってアレットの戦力が必要になったから支配権が均衡したと考えていいだろう。アレットは相思相愛というミレーヌの言葉に我を忘れてしまったことを恥じた。


「そっか。そうだよね……」


 アレットは長い溜息を吐くと、まだ少し赤い顔でクリスとミレーヌへ交互に視線を投げた。


「以前、クリスは必死にフォローしてくれたけど……もう誤魔化せないと思うからちゃんと話しておくね。私、人を好きになったのが……いや、きっとその気持ちを自覚したのが初めてなんだ。大人としてきちんと自分の気持ちに折り合いをつけていこうと思ってるけど、気持ちが落ち着くまで暫くは二人にも迷惑をかけるかもしれない。もし私の所為でジャンに危険が及ぶようなことになったら、フォローをお願いします」


 そう言い切って、アレットは二人に対して深々と頭を下げた。


「もちろんですわ。貴女が向き合うというのでしたら、むしろ応援させていただきます」


「よくぞ言いました。あとはジャン殿の腹の内が分れば解決するのですが――」


「あ、いや……それはまだ知りたくないと言うか……傷つく覚悟まではまだしてないから、ジャンには何も言わないで欲しい」


「いえ、しかし――」


「神官様。わたくし達はただ見守るべきじゃありませんこと?」


 クリスは猶もなにか言いたげな顔をしていたが、結局はミレーヌの言葉に黙って頷いた。


「もうご存知だとは思いますが、腕輪は譲渡が可能です。実はわたくしも、それ以外に外す方法を知りませんの。片方が絶命すれば、それを修復しようと腕輪がもう片方の魔力を吸収し続け、やがて朽ちる……そうやって持ち主が死ねば腕輪は形を失い、最後に”血の契約”が行われた場所に還ります」


「……血の契約」


 アレットはその禍々しい響きを繰り返した。祭壇での儀式もそうだが、譲渡の時も互いの手を切って血を混ぜ合わせた。おそらく、血の契約とはその行為を指す言葉なのだろう。


「わたくしの知る限りでは、譲渡にも条件がございます。少なくとも譲渡される側の二人組も、片方を支配できるだけの強い念を抱いていなければなりません。ただ、腕輪の支配力が互いにどう影響するかは、力量の差や相性も関わっているのだと思います。それも断定できず申し訳ないのですが……」


「ありがとう、十分だよ。ただ、そんな危険な代物が婚約の祭事に使われてたなんて不思議だよね。どういう経緯でいつ頃からそうなったんだろう?」


「ふむ。確かに……夫婦間での契約や譲渡ならリスクは少ないとはいえ、危険なことには変わりありませんな。しかし、そちらは教会本部に戻れば調べがつくでしょう」

 

 回り道の多い旅路ですっかり忘れていたが、アレットとジャンは腕輪を外すためにクリスと教会の本部に向かおうとしていたのである。しかし、偶然にも200年前の人物に協力を仰げたおかげで、その必要はなくなった。よって、アレットの疑問はおまけのようなものだった。それに今は別の問題も発生している。異常が起こらなくなったのならば、腕輪の件は一先ず現状維持でも問題はないだろう。

 だが、譲渡以外にも外す方法があればそれに越したことはない。アレットは自身の手首にピッタリ嵌った腕輪を見つめた。

 

「例えばだけど、お互いに相手に対する気持ちがなくなったらどうなるんだろう? その場合も均衡状態になるだけなのかな」


「それは分かりませんが……望みはあるかもしれませんわね」


「しかし、人の心というものはそう簡単にどうにかできるものでもありません。無理にコントロールしようとすれば、別の異常が起こり兼ねん」


「万一の時は、わたくし達が預かりますわ」


 ミレーヌの言葉に、クリスは目を丸くした。


「……私達には譲渡できなかったはずでは?」


「あの時はそうでしたわね。けれど、今はどうか分かりません」


 ミレーヌの提案は有難いが、それでは根本的な解決にならない。ジャンとアレットが互いに無事なまま、腕輪を壊すか、祭壇に還す(外す)方法を見つけなければならない。しかし、眷属の血から無尽蔵に魔力を得られる吸血鬼と防戦に長けた神官である二人が互いに腕輪の効果で魔力を交換し合えるなら、かなりの戦力強化が望めるのではないだろうか。


「二人が腕輪をしたら、攻守ともに最強のバディになりそうだね……」


「忌々しいことには変わりありませんが、使いようによっては優れた魔道具であることを認めなくてはなりませんわね」


「既に契約で繋がってる場合、より強固になるか上書きされるのか――ちょっと気になるよね?」


「確かに……いやしかし、我々に移せると決まったわけでは……」


 腕輪の譲渡が可能か否かを気にしているのはクリスだけであった。その時点で答えは出ていたが、アレットは敢えて何も言わなかった。彼等の繋がりは一般的な男女のそれとは明確に違う。少なくとも恋慕などという未熟な感情ではないのだろう。


「やっぱり戦士と魔導士じゃ相性悪いのかな? 腕輪でジャンを縛ってた割には、あまり恩恵を感じたことはないけど」


 思い当たる節が、水魔に襲われた時のみである。ジャンの魔力が少ないにしても、体力強化ぐらいの効果はあって欲しいところである。そんなことを考えていた矢先、部屋の戸が開いた。


「俺がなんだって? 人を除け者にして話を進めちまってねーだろうな」


 どうやら劇団には上手く話をつけて来たようだ。親し気に並んで登場したジャンとカルラを見て、アレットの胸がチクリと痛んだ。


「問題の中心が何を言ってるの。話はこれからだよ」


 アレットは胸の奥が痛痒いような初めての感覚に襲われた。同時に呼吸が止まりそうな鬱陶しい閉塞感を覚えたが、それを無理やり押し殺して場を仕切り直したのだった。


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