プロローグ
不定期連載。
ガタンガタン。
乗り心地がいいとは言えない馬車に、俺たち五人は揺られていた。
「ねぇ、これマズいんじゃないの?」
三日目の朝、何事かを考えていたサツキが口を開くなりそう言った。
それは目覚めてから俺たちがずっと考えていることでもあった。
「さすがに到着するまでに死ぬようなことはないと思う」
この中でリーダー格のショウが答えたが、
「じゃあ勝っても負けても、どの道帰れないじゃない!!」それはサツキの不安を掻き立てるだけだった。
「落ち着いてよ、サツキ」
レンが優しく声をかける。ギュッと杖を握っている様子は、少し震えているようだ。
「竜を追い返しさえすれば、それは僕らが彼らにとって有用だという証になるだろ?
だから大丈夫さ」
そこまで言われると少しは安心したのか、サツキが口をつぐんだ。
けれど……
俺も自らの腕を見つめる。
血管が青い光を帯びていた。
不安と絶望に押しつぶされそうになりながらも、俺たちは干し肉を齧る。
何度食べても慣れることがない、嫌な味だ。
馬車を取り囲むように隊列を組んでいる兵士たちが、嫌悪を孕んだ瞳で俺たちをこそこそと盗み見る。
まるで犯罪者にでもなったような気分だ。
いや、彼らからしたら俺たちは特赦を受けた犯罪者のようなものだろう。
別に食べたくて食べてるわけじゃない。
誰にともなく言い訳をして、肉を齧る。
こんな世界で生きていたってしょうがない。
けれど……異世界転生して来て、適応できなかった奴らを思い出す。
その死にざまが余りに恐ろしいものだったから、俺たちは生きることを選んだんだ。
……たとえ、人間を喰ってでも。
俺たちは生きるためだけにこの世界の人を殺す。
そうしないと、徐々に血液が青くなっていき死んでしまう。
つまらない魔法を使えるようになった代償が、人の尊厳を奪い取るような制約だった。
控えめに言って、この世界は俺たちに対して地獄のような仕打ちをしてくれる。
何も考えたくなくて、食事の時以外は目を閉ざして眠ることだけに集中した。
その後も数日馬車に揺られていると、ある夜隊長らしき人が話しかけてきた。
「明日、国境付近に到着します」
その瞳には何の感慨も浮かんでいない。
俺たちが生きようが死のうが関係ない、といった風情だ。
「……そこに竜がいるんですね」
ショウが問いかけると、隊長が首を縦に振る。
「この先は、皆様だけでお進みください」
曰く、兵隊が国境を越えてしまうと、隣国に対しての挑発行為になるのだとか。
そもそも竜が跋扈している国に、挑発もなにもないだろうに。
まぁ言いたいことはわかる。
誰だって死にたくないのだ。
「で、どうするよ」
「どうするもこうするも、行くしかないだろ」
ショウが袖をめくる。
血液が更に青いものとなっていて、夜の闇の中でも光っているように見えた。
どうも俺たちが召喚された城には、血液の青化を防ぐなんらかの結界が張られているのだろう。
俺たちに時間なんて残されていない。逃げる選択肢すらない。
急がなくては。