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星屑の英雄譚(ヒロイック・サーガ)

作者: まと。

 5才の誕生日の時、アルスは父アベルに連れられ家の地下へ幽閉された。「この星を……頼む」そう言い残してアベルは分厚い扉の向こうへ消えた。扉が閉まるとその上のデジタルに315360000という膨大な数字が表示されカウントダウンが始まった。地上から数十メートルは潜ったであろう場所にあるシェルターに閉じ込められたアルスは、アベルの作ったメイドロボ「テラ」と共に、星を救う為の英才教育を受ける。


 この星の(コア)はコロナタイトと呼ばれる物質で出来ており、それはこの広い宇宙(そら)の中でもとても珍しい物質で、周囲のエネルギーを吸収し膨張するという特徴を持っている。星はその吸収し蓄えたエネルギーを放出することで緩やかに成長していた。しかし、人類が急速に発展し、その科学により、放出するエネルギーを生活に利用していた。結果、吸収するエネルギー量が増えていき、徐々に放出が追いつかなくなっていく。(コア)は膨張を続け、近年地上では地殻変動が繰り返され、このままでは星が爆発し消滅してしまうというころまで来ていた。


 そんな時、太陽系を航行していた星間旅団『アストラ』により、この星の危機を知らされる。彼等が星を調査した結果、そう遠くない未来この星は消滅すると断言され、彼らは人類の旅団コロニーへの移住を約束する代わりに、巨大なコロニーレーザーによりこの星の外殻を吹き飛ばし、コロナタイトを取り出すと言った。彼らの技術はこの星の技術力の数百年先を行くもので、抵抗も虚しく、地上は彼等に制圧されてしまう。だが、アベルを始めとする抵抗勢力「星の翼」はこの星を奪還する為の作戦を秘密裏に実行していた。


 十年間の地下生活により、この星の現状とアストラと戦えるだけの知識と技術を身に付けたアルスは、扉の前でカウントダウンされる数字がゼロになるのを待っていた。そしていよいよその数字がゼロになった時、アベルからのメッセージが流れた。メッセージの内容は、すまなかったという謝罪と、この映像を観ている時既にアベルはもうこの星には居ないだろうという事、地下へ閉じ込めたのはアストラの目を欺く為にした事、星の寿命が尽きかけている事、それに伴いコロニーレーザーが既に発射準備段階に入っているであろう事、そこでこれからアルスがやるべき事、そして最後に『誕生日おめでとう』と入っていた。映像が終わった時、重い扉がゆっくりと開いた。アルスはテラに「必ず帰ってくる」と約束し、テラの弟的人工知能「テムジン」と共に、自作した二輪型のマシンに跨り、地上へと出る。


 この星は主に東西南北四つの国によってそれぞれ統治されており、アベルは東の国の統治者であると同時に、世界一の科学者でもあった。アルスに出された最初の指示は、世界各地に潜伏している「星の翼」のメンバーを探しに行く事だった。まずは西へ向かい、アベルと旧知の中である西の科学者ロットの元へと向かった。


 地上の荒廃は想像以上に進んでおり、頻繁に地震も起きていて、いつ星の崩壊が始まってもおかしくはない。マシンを走らせていると、突如上空から巨大なバンカーが数本降ってきて勢いよく地面に突き刺さる。これは地殻変動を抑える為にアストラの監視衛星から放たれた物だ。このバンカーにより、辛うじてこの星は崩壊を免れている。バンカーを避けながら目標ポイントまで到達すると、地下へと続く通路が現れた。この地下通路を使い、一気に西側へと到達する。地下通路の終点にはアルスを地下に閉じ込めた扉と同じ物があり、網膜認証、指紋認証、音声認証、身長体重、最後にパスワードの入力を求められた。全ての認証を終え、扉が開きエレベーターに乗ると地上に向かって動き出した。地上が近づくにつれ、何やら懐かしい匂いが漂ってくると共に、テムジンが生体反応を確認し、アルスは銃を構えた。


 エレベーターが止まりドアが開くと、アルスは銃を構えながらゆっくりとエレベーターから降りた。ここはどうやらパン屋の厨房のようだ。奥の方へと進んでいくと、生地を捏ねている太った男がいた。その男は生地を捏ねながら「そろそろ来る頃じゃと思っておったよ」と言った。男の名は「ポム爺」。ポム爺は「星の翼」の一員で、アベルから十年後のこの日、アルスがここへ来る事を伝えられていた。その声と、パンの懐かしい香りから、小さい頃によくアベルに連れてこられたパン屋を思い出した。そして、二人の幼なじみがいた事も思い出す。一人はロットの息子である「キラ」。もう一人は南の海底都市『アトランティス』に住んでいる機械技師「ヴァルカン」の娘「ルナフレア」。小さい頃このパン屋の前でよく三人で遊んでいた記憶が蘇る。そう、このパン屋は昔から「星の翼」の密会の場所だったのだ。


 アルスが思い出に浸っていると突然背後から「動くな」と何者かに頭に銃を押し付けられた。少し低くなってはいるが聞き覚えのあるその声に、アルスはニヤリと笑いながらゆっくりと両手を上に挙げる素振りを見せた。が次の瞬間、ひらりと身を返し、CQCで銃を奪い、その者の腕を固めた。

「いててて、参った!降参だ」

「久しぶりだな、キラ」

 十年振りの再会を果たすアルスとキラ。キラもまた、地下で英才教育を受けていた。ポム爺に別れを告げ、二人はルナフレアの行方を捜す為、海底都市へ向かう。


 再び地下通路へと戻り、分岐地点を南へと向かう二人。キラも自作した二輪型のマシンとナビゲーターの人工知能「ライデン」を携えていた。ライデンはテラの姉的存在であり、テラを地下室へ置いてきた事に対してアルスへの怒りをあらわにしている。単調な道が続く中、二人はお互いのマシンの性能を競い始めた。アルスのマシンのエンジンは燃焼型のターボファンエンジンのような物で吸気した酸素を圧縮して燃焼する。一方キラのマシンはエンジンではなく、電気モーターで走る。どちらのマシンも軽く音速を超え、もう少しでマッハへ届くかと言う所で、テムジンとライデンが止めに入った。どうやら行き止まりのようだ。エレベーターを上がり地上へ出ると、周りは海に囲われていた。二人のマシンは水上バイクの様な形態へ変形し、海上を走る。初めてみる海に興奮していると、数十メートルはある高波に襲われる。巨大な波を超え走っていると海上に都市が見えてきた。


 南の都『ノア』は海上に浮かぶ巨大都市で、唯一アストラの支配下に置かれていない中立都市である、表向きは。テムジンとライデンの案内により、指定の地点へと行くと、海底へ続く軌道エレベーターが現れた。全ての認証を済ませ、パスワードを入力するとエレベーターが動き出し、海底へと二人を運ぶ。


 『海底都市アトランティス』ここは、水深約一万メートルの深さの場所にあり、アストラの技術を持ってしても制圧する事が出来なかった程の要塞都市である。分厚い扉が開き、中へと進むとそこにはとても海底とは思えない、地上と変わらない景色が広がっていた。二人の到着を待っていた近衛兵の案内により、二台のマシンを軍用トラックに乗せ基地へと向かう。基地へ着き、軍用トラックを載せたエレベーターは更に下へと降っていった。


 海底都市アトランティスの都市部から更に深部へと降りた先には軍用施設が広がっていた。マシンをドッグに置き、二人は司令室へと案内された。部屋へ入るとそこには十年前によく二人の世話をしてくれていたヴァルカンの姿があった。ヴァルカンは、感傷に浸りたい所だが時間がないと、早速今回の作戦の説明を始めた。今回の作戦での最優先事項はコロニーレーザーの破壊。その為には宇宙(そら)へあがる必要があるのだが、アストラの軍勢は、月の裏側を占拠し、そこを拠点としてコロニーレーザーのエネルギーが充填されるまでの間この星を監視している。このアストラの監視の目を欺き、宇宙(そら)へ上がるのは至難の業である。だが、アベルの考案した作戦によると、数年に一度、太陽から放たれている磁気嵐により、ほんの数分ではあるが監視衛星の通信が途絶える瞬間がある。その隙をついて宇宙(そら)へ上がり、磁気嵐に紛れながら火星の前哨基地へと向かう。ヴァルカンが伝えられている作戦の内容はここまでだ。アベルの予測通り、太陽の黒点の動きから、近いうちに大規模な太陽フレアが発生するという。


 ヴァルカンは二人をカタパルトデッキへと案内し、ハンガーに保管されている二機の機体を見せた。

決戦兵器NOVA(ノヴァ)』と呼ばれるこの二機の機体は、全長約18m、ヒトの形をしている。アルスの搭乗する機体は白と赤をベースとし、その背に大きな翼を持つ『SUPERNOVA(スーパーノヴァ)』。キラの搭乗する機体は黒をベースとし、背中には一本の長い超電磁砲(レールガン)が携えられている『LUMINOUSNOVA(ルミナスノヴァ)』である。この二機のNOVAを操り、火星を目指す。


 アルスがコックピットに乗り込みノヴァを起動すると、テムジンの声がした。ナビゲーターとしてインストールされたらしい。同じくキラの機体にもライデンがインストールされている。テムジン達に機体の説明を受けながら発進の時を待っているとき、アルスがヴァルカンにルナフレアの行方について尋ねた。しかし、ヴァルカンの口は重く、キラが問いただすと絞り出すような声で「奴らに……攫われた」と言った。生死も不明だと言う。これから星の運命を託す二人に自分の娘を助けてくれなど言えるはずもなく、しばらく沈黙していると、呆れた顔をしてアルスとキラが口を開く。

「まったく、アイツは昔っから変わんねーな」

「星を救うついでに、ルナも捜してくるさ」

 その二人の発言に、ヴァルカンは目を覆いながら小さく「頼む」と呟いた。


 突如館内に警報が鳴り響く。地上の観測地から太陽フレアが観測されたそうだ。太陽フレアによる磁気嵐はものの数分でこの星に到達する。二人を載せた機体はハンガーからカタパルトデッキへと向かい、発進の時を待つ。まもなくして星に到達した磁気嵐により通信が乱れだす。そして完全に磁気嵐に覆われた時、「オペレーション・モーゼ」の合図とともに深海が割れ、地上からの光が降り注ぎ滑走路が出現した。シグナルがレッドからグリーンに変わる。

SUPERNOVA(スーパーノヴァ)、アルス、出ます」

「LUMINOUSNOVA(ルミナスノヴァ)、キラ、出るぞ」

 掛け声と共にカタパルトから発射される二機。数秒もしない間に地上へ到達し、二人の機体は人型形態から飛行形態へ可変し、更に加速して一気に大気圏を突破した。磁気嵐を抜け一息つく二人。アストラの監視網を抜け、小さくなっていく母星を後ろに見ていると、暗く静かな宇宙(そら)が眠気をさそう。地上へ出てからずっと気を張っていた二人にテムジンとライデンが「あとは俺たちに任せて少し休め」と言葉をかける。二人はノーマルスーツのヘルメットを外し、火星到着までの少しの間、仮眠を取る事にした。


 数時間後、アルスはひと足先に起きていたキラに起こされた。テムジンとライデンの計算によると、太陽フレアの大きさがアベルの予測よりも大きなものだった為、このままでは磁気嵐の後から来る太陽風に二機は飲み込まれてしまう。太陽風は速度こそ磁気嵐程では無いが、数百万度の熱風である。飲み込まれたら数分と持たないだろう。目標ポイントのワープ地点まで、どれだけ軌道修正と再計算をしても足りなかった。アルスも何か方法はないかと模索するが、どう足掻いても避けられない事実に「クソ親父!! 」と拳を叩き声を荒らげた。


 取り敢えず火星基地へ超高速救難信号を発信し、助けが来る事を祈るしかない二人。苦肉の策は、太陽風をギリギリまで引き付け、残りの燃料を全てぶつけて少しでも加速する事だった。少しでも時間を稼ぎ、火星からの救助を待つしか無かった。


 一方、火星前哨基地『マーズベース』でも太陽フレアが確認され、二人からの救難信号を受信した。直ぐに救助に向かうべきだと進言されたが、基地司令官の「ボルゴ」はそれを却下した。本作戦は隠密作戦の為、火星から救助隊を出せば敵に気付かれ、今までの努力が水の泡になってしまう、と冷徹な判断を下した。ボルゴの治めていた北の都市「ノーデン」はアストラの猛攻にあい、その技術力の差に圧倒され制圧されてしまった。その現実を知っているからこその判断である。この程度の事で二人がここまで辿り着けないのならば、どの道アストラには勝てないと言うのだ。


 二人の行方を見守るしかない状況の中、カタパルトデッキのハッチが開き、「私が出るわ」と一人の少女がNOVAに搭乗していた。『AURORANOVA(オーロラノヴァ)』と呼ばれるこの機体は、全体に特殊なコーティングが施されており、敵の目に映らないステルス機体である。本来この機体は二人が間に合わなかった時用の秘密兵器だった為、ボルゴは発信許可を出さなかった。しかし、少女は強引に発進する。

「二人は絶対死なせない!! AURORANOVA(オーロラノヴァ)、ルナフレア、出るわ」

 機体に搭乗していたのはルナフレアだった。金色に輝くその機体は瞬く間に飛び立ち姿を消した。


 アルスとキラの機体の後ろには目視で確認出来る距離まで太陽風が接近していた。徐々に機体が振動しだし、コクピット内温度が上がっていく。「まだだ」とギリギリまで引き付け、タイミングを見計らい「今だ!」とテムジンとライデンの合図に、残りのエネルギー全てを使い、一気に太陽風から脱出を試みる。みるみるうちにエネルギー残量が減っていくが、太陽風を引き離す事ができた。だが、それもほんの数分先延ばしにしたに過ぎず、無常にもエネルギー残量はゼロになった。次に飲まれればもう脱出するエネルギーは残っていない。アルスが真後ろに迫る太陽風を見ながらその姿が以前に海で遭遇した巨大な波の様にうねっている事に気付く。ならばと、機体を飛行形態からヒト型へ戻し、装備してるシールドを足場にした。キラもそれを見て「なるほど」と同様にヒト型へ変形したが、アルスの機体のような大きなシールドが無い為、スキー板のように背中のウイングを足場にした。後方から太陽風が迫り、シールドで受ける。太陽風に押され、機体が加速する。さながら波乗りの様に太陽風に乗る事が出来た。アルスは「ヒャッホー」と叫びをあげ、このまま行けば何とかなるぞと軽快に波乗りを続けていたが、直ぐにアラートが鳴り出す。太陽風を受けているシールドが熱に耐え切れなくなり、装甲が溶け始めた。先にキラの機体が太陽風に飲み込まれそうになると、アルスは必死に手を伸ばし、キラの機体と手を繋ぎ「大丈夫、きっと助けは来る」と言い聞かせた。しかし、無情にもシールドの装甲板は剥がれ足元から離れ吹っ飛んだ。二機とも太陽風に飲まれ、コクピット内の温度が上昇し、意識が遠のいていく。薄れゆく意識の中、二機の前に金色の機体が姿を現す。その機体は二機を引っ張り太陽風から脱出すると、目標地点のワープポイントを経てマーズベースへ帰還した。


 ベッドの上で目覚める二人。イスにはルナフレアが座って本を読んでいた。聞きたい事は沢山あったが、今は助けてくれた事に感謝をした。アストラに攫われたと聞いていたルナフレアが何故ここに居るのかと尋ねると、なんとアベルとロットに助けられたと言う。アベルとロットはアストラに捕まったふりをして内部からコロニーレーザーを止める計画を立てているらしい。敵の隙を見てルナフレアを助け出し、民間輸送船に乗せてマーズベースへ送ったと言う。クソ親父に騙されたと怒るアルスとキラ、それを見て笑うルナフレア。そこへドアが開きボルゴが入ってきた。アルスとキラの顔を見てフッと笑い「ふんっ、あやつらと同じ目をしおって」と言い、二機の修理と武装の換装が済み次第、直ぐに最終決戦へと向かうと告げ、それまで暫し休んでおけと言って部屋を後にした。


 武装の換装が終わり、決戦母艦『ラーミア』に載せ複数の艦隊と共に火星を出発する。母艦のブリッジで最終決戦の内容が説明される。作戦名「ミーティア」の内容は、こちらの艦隊を月面基地の直前へワープさせ奇襲する。だが、これは囮であり、その間に三機のNOVAでコロニーレーザーを目指し、迅速に破壊する事である。しかし、アストラの艦隊との戦力差は明らかであり、ボルゴは決死の覚悟をしていた。座標を月面基地近郊に定め、ワープを展開する。いよいよ最終決戦が始まる。


 月面基地『エクリプス』。アストラに占領されたこの基地は本来星の翼の拠点の一つだった。アストラの総司令「ゴルゴナ」を始めとするこの星間旅団の本性は、星々を渡り歩き、有用な資源や人材を略奪し、勢力を拡大しながら宇宙を旅している宇宙海賊なのである。司令室に一報が入る。月面後方より、空間の乱れが発生し、ワープゲートが発生した事が伝えられる。「やはり来たか」とゴルゴナは待機中の艦隊に出撃命令を出す。さらにゴルゴナは精鋭「サバイン」を呼び、念の為コロニーレーザーの防衛に当たるように命じた。そしてオペレーターにコロニーレーザーの発射準備に入るよう命じた。


 ワープゲートからラーミアが姿を現すと同時にその巨大な銃口から主砲の陽電子砲が発射される。敵艦隊を薙ぎ払い、戦いの火蓋が切って落とされた。激しい撃ち合いになり、その隙をついて三機のNOVAが出撃する。目標であるコロニーレーザーを確認し、その映像を見たボルゴは焦りを見せる。アベルの計算ではまだ発射までのエネルギーは溜まりきっていないはずだったのだが、映像ではコロニーレーザーの羽が開き、回転を始めていた。既に発射段階に入っているのである。急いで破壊するように指示をし、キラが超電磁砲を構える。しかし、放たれた弾は何かに弾かれ、その次の瞬間にはキラの眼前に真紅のNOVAの様な機体が現れビームサーベルを振りかぶっていた。その早すぎる動きに、キラは反応出来ずにいたが、その機体の横っ腹にアルスが蹴りを入れる。真紅の機体は吹き飛びながらもビームライフルを打ち返したが、ルナフレアのビットバリアがアルスの前に展開され弾いた。

「この星の技術もなかなかやるな」と感心するサバイン。「だが、その程度ではこいつを破壊するどころか私を倒す事さえも出来まい」と、再びビームサーベルを構え突進してきた。それをアルスが防ぎ「こいつは俺が引き受ける、ルナはラーミアの援護を、キラは最大出力でアレをぶっ飛ばせ」と言った。キラはアルス達から距離を取り、小隕石に隠れエネルギーを充填し始めた。激しい戦闘が繰り広げられる中、機体の性能差で押されはじめるアルスに、サバインが語り掛ける。

「出来れば君達とは戦いたくないのだがね」

「だったら何故、こんな略奪みたいな事するんだ!」

「それは君達の自業自得だろう。コロナタイトは貴重な宇宙資源だ。これだけの大きさならば今後数十年分のエネルギーにはなるだろうに。星の崩壊は既に始まっている。もう止められんよ」

「それでもっ!俺達はこの星で生まれ育ったんだ! 」

 アルスの叫びに呼応する様に機体が光り出す。SUPERNOVAの動力源にはコロナタイトが使われているのだ。出力が上がった機体はサバインの機体を捉えはじめる。

「これが、この星の意思だと言うのか」

「今だ!キラー! 」

「しまった」

 アルスがサバインの機体を押さえ込んだ時、隕石群のひとつがキラリとひかり最大出力の超電磁砲がコロニーレーザーへ向けて放たれた。サバインがアルスを振りほどき、射線に入りシールドを構えるが構えた左腕ごと貫通した。

「これ程とは……だが」

「行けー! 」

 しかし、サバインにより威力と軌道を逸らされた超電磁砲はコロニーレーザーの羽根一枚を破壊するにしか至らなかった。コロニーレーザーの回転は止まらず、いよいよ発射段階に入ってしまう。それならばと、直接斬り掛かるアルス。しかし高エネルギーを纏ったコロニーレーザーに弾かれてしまう。「そうなってはもう止められんよ」と言うサバイン。途方に暮れるアルスとキラに、乱れた通信が入る。

「もうギブアップか」

「俺達の星の力はそんなもんじゃあないぞ」

 声の主はなんとアベルとロットだった。二人はコロニーレーザーの内部に潜入し、ギリギリまで止めようとしていたのだ。そして、SUPERNOVAとLUMINOUSNOVAに搭載されている裏コマンドを教えられ、実行すると、二機が変形合体をし、コロニーレーザーの発射口の正面に立った。巨大なエネルギー砲がコロニーレーザーから放たれる。星を背にエネルギーを貰い、巨大な剣で正面からレーザーを受け止める。しかし、剣は壊されてしまい、両手を広げ機体全身で受け止める。大きな爆発の末エネルギー砲は星を避けて分散され、星の破壊は阻止された。


 月面近郊で戦闘していた両軍にもその爆発は確認され、星の破壊は免れたと安心したボルゴ。しかし油断した隙にゴルゴナの乗る艦の主砲がラーミアのブリッジに向けて放たれる。死を覚悟したボルゴ達だがAURORANOVAがブリッジ正面に立ちそれを防いだ。


 こうしてコロニーレーザーを失ったアストラは、これ以上の戦闘は無意味と素直に降伏をした。エクリプスを奪い返し、アベルとロットが合流する。アストラによる星の危機は取り敢えずは去ったが、依然星の寿命が残り少ない事に変わりはなく、このままでは星は爆発してしまう。何か方法はないかと模索している所に、負傷したサバインが現れアストラの技術を提供すると言った。「勝手な事を言うな」と言うゴルゴナにサバインは容赦なく銃口を突き付け「あなたの横暴には付き合ってられん」と引き金を引いた。サバインはこの星の生きる意思をNOVAを通じて感じたと言い、その可能性に掛けてみる事にしたと言う。


 地上を制圧していたアストラの軍も引き上げ、地上は解放された。海上都市ノアは浮上し、この星の全ての人類を乗せ、上空へと飛び立った。アストラの技術提供により、星全体を雨雲で覆う事で、外部からのエネルギーの吸収を押さえ、一度星を眠らせる。一度眠った星が次に起きるのは何年後になるかは分からないが、見守るしかないだろう。


-二年後-


 コロニーレーザーは稼働を停止し、エクリプスにより厳重に監視されている。その宙域をAURORANOVA(オーロラノヴァ)が飛び回る。

「ルナ、もういい加減諦めないか」

「いやよ!あの二人は絶対生きてる」

「もう二年も音信不通なんだ、分か-」

 無理やり通信を切るルナフレア。

「私は信じない。生きてるなら連絡くらい寄越しなさいよ…… 」

 あの爆発の際、二人の乗った機体は跡形も無く消し飛んだと思われた。しかし機体の破片一つすら見つかっていないのが逆にルナフレアには希望になっていた。そんな時、アストラの監視衛星の一つの当時の画像が解析され、ルナフレアの乗る機体に送られてきた。

「これって!! 」

 すぐにラーミアへと帰還するルナフレア。映像にはボロボロになった機体が高速で飛んでいく姿が映っていた。これだけではアルス達の機体と判断は出来ないが、拡大してみると肩の部分にうっすらと「NOVA」のロゴのような文字が描かれていた。


 星は眠りに着き、人類は宇宙(そら)へと上がった。再び地上に戻れる日を待ちながら。星を救った二人の英雄の還りを待ちながら。

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