表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

第6話 第2のドア

「終わった?…」

息を切らせながら黒呂(こくろ)の姿を探す。

澄みきった青空にはトンビが一羽、餌を求めて旋回(せんかい)している。

いつもと変わらない日常の光景だ。

「良かった〜。終わった〜」

急に力が抜けてその場にへたり込んでしまった。

「ななかさーん!」

少し離れたところにいたカエデが駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか?ケガはありませんか?」

「うん、大丈夫だよ。怖かったねぇ」

私が苦笑いをするとカエデが泣き出した。

「え、ちょっとカエデちゃん、どうしたの?」

「ごめんなさい。お客様をこんな目に合わせてしまって。どうしよう、また怒られる……」

カエデは下を向いて泣きじゃくっている。

「私はカエデちゃんが一緒にいてくれてすごく心強かったよ。ありがとう」

「本当ですか?」

「ほんとだよ!1人だったらきっと逃げ出してた」

私はカエデに手を差し出す。

「本当にありがとう、カエデちゃん!」

「ななかさん……」

カエデは私の手を取り、2人で固い握手を交わした。

しばらく手を繋ぎながら微笑みあっているとカエデのオールが鳴り響いた。

ピーッ!ピーッ!

カエデはオールを確認するとハッとして私を見る。

「ななかさん!予想外の出来事が起こったためこの時代からの緊急撤退命令が出ました!ここから撤退します」

「え、そうなの?」

「はい。すぐに次のドアのところにお連れしますね!」

そう言うとカエデはオールを操作し始めた。

私は遠くの神社で歓声をあげている村人たちを見ながら願う。

(幻想の世界かもしれないけど、みんな幸せに元気に生きてね!ありがとう。さようなら)

「撤退します!」

カエデの声と共に光に包まれていく。

1つ目の前世体験が終わった……。


 フッと目の前にドアが現れた。

次のドアだろうか。

「ななかさん、お疲れ様でした。第1のドアの前世体験はこれにて終了となります。第2のドアでもお気をつけて!ありがとうございました!」

カエデが深々とお辞儀をする。

私は寂しい気持ちを抑えて笑顔でカエデと向き合った。

「こちらこそありがとう!カエデちゃんが相棒で良かったよ!行ってくるね!」

そう言って2と書いてあるドアを開け中に入る。

バイバイと声を出さず手だけを振りお互い目で(またね!)

と会話する。

そして私は次の前世への期待を込めてドアを閉めた。


「ななか様、お疲れ様でございました」

ドアの中ではリンが私を待っていてくれた。

「リンさーん!」

私は見知った顔を久しぶりに見て思わず駆け寄る。

「疲れたよ〜!でも楽しかった!」

「危険な目にあったと聞きましたが大丈夫でしょうか?」

「大丈夫!カエデちゃんもいてくれたし、あんな体験は普通じゃ出来ないから!」

私は現地であったことを事細かくリンに話す。

リンは笑顔になりながらそれを聞いてくれた。

「ななか様が楽しく過ごせたなら(わたくし)共も嬉しく思います。ではまた次の前世に到着するまでお部屋でお休みください」

部屋に通され、ベットの上に横になると疲れのせいだろう、すぐに眠り込んでしまった。


「うーん。よく寝た〜!」

私は目覚めると伸びをした。

どれくらい眠っていたのだろう。

眠い目をこすりながらボーッとベットの上に座っていると頭の中に声が聞こえてきた。

「ななか様。今よろしいでしょうか」

なんだかすごく懐かしい声がする。

「トキヤ!大丈夫だよ!」

「お元気そうで安心いたしました」

トキヤは少し面白がっているように笑い、そしてすぐにいつもの真面目なトキヤに戻った。

「さて、第2のドアでの前世の簡単な説明でございます」

「あ、うん、なんだろ」

私は期待で前のめりになった。

前回のように部屋のテレビをつける。

「時代は18世紀頃のフランスでございます。その当時、ななか様はエマという女性で怪盗をしておりました」

「え!怪盗!!!」

「はい。それほど有名ではなかったものの、高価なものも数点は盗んだんだとか」

真面目にひどい言い方をするトキヤを笑ってしまう。

「有名じゃないほうが気が楽だよ!」

私が笑いながら言うとトキヤが続ける。

「次回もお楽しみいただけると幸いでございます。では、(わたくし)はこれで。失礼いたします」

そう言うと、トキヤの声が聞こえなくなった。

「相変わらず事務的なんだから!」

私は笑いながら18世紀のフランスの様子が流れるテレビの画面を見る。

画面の中では綺麗なドレスに身を包んだ貴婦人やシルクハットの紳士が街を行き交っている。

「怪盗ねぇ…。大丈夫かなぁ……」

私はベットに姿勢良く座り直し、これからまた訪れるであろう波乱を予感する。

そして怪盗とはどんな感じかイメージをふくらませるのであった……。
















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ