第5話 大蛇討伐
黒呂を倒すために作戦会議を開く。
村人たちにはこのことは内緒にすることにした。
私とカエデは朝の祈祷の後はずっと部屋にこもっていた。
もう時間がない。
「大きな蛇の化け物なんてゲームとかアニメとかでしか見たことないんだけど、どれくらいの大きさなんだろうね?」
「情報が全くないので分からないんですけど、かなり大きいと思いますよ。子供を生け贄にするくらいですから」
私はどうすれば黒呂を倒せるのか思い悩む。
(そういえば日本の古い神話にこういう話があったな)
「ねぇカエデちゃん。日本の神話で8つの頭を持った大蛇を倒す話があるよね。それやってみない?」
「ちょっとオールで検索しますね」
カエデが検索したものを教えてくれる。
「えーっと、人間に倒せない大蛇を神様が倒したお話ですよね。強いお酒を大蛇に飲ませて酔ったところを剣でグサッと……」
「そうそう。もうそれしかないよ!」
「分かりました!やってみましょう!」
こうして不安だけを残して私たちの作戦は始まったのだった……。
三日後。
村の1番高い丘の上にある神社に立派な祭壇が高くそびえたっている。
ここで祈祷をしながら黒呂を待つという。
私はこの日に合わせた豪華な衣装を着せられている。
祭壇の前には大きな棺が置かれ、その中には家で隠れている律に代わり、カエデが衣装で顔を隠して横たわっている。
村人たちには作戦を告げないまま、黒呂をもてなすと嘘をついてたくさんの食べ物と強いお酒を用意してもらった。
いよいよだ。
緊張でドキドキしているところに長老がやってきた。
「旭陽様。そろそろお願いいたします」
長老は険しい顔でそれだけを言い残すと後ろに控える村人たちのほうに歩いていった。
祭壇の横の松明に火がつけられる。
パチパチと火花が散る中を衣装に忍ばせてあった超小型最新スピーカー(カエデ談)を起動させて録音された祝詞を流した。
私はあたかも祝詞を唱えているように振る舞い、葉っぱのついた木の枝を振り回す。
どれくらい経ったのだろう。
私の額に汗がながれ始めた頃、さっきまで晴れ渡っていた空が急に真っ黒な雲に覆われ出した。
村人たちは恐怖の声をあげて地面につけていた頭をますます低くして震えている。
そんななか地響きのような音と共に低くくぐもった声が聞こえた。
『生け贄を差し出せ!』
そう言いながらそれは祭壇の前に現れた。
この村の全てを覆いかぶせてしまうのではないかというくらい巨大な黒い蛇が祭壇の真上から私を見下ろしている。
(こ、怖い!でもやらなきゃ!)
恐怖の中、カエデとの村探索や律の笑顔、村人たちの働いている姿などがよみがえってくる。
私はありったけの大声で叫んだ。
「その前に美味しい食べ物とお酒をどうぞ!!!」
私の言葉に黒呂は一瞬戸惑ったが機嫌が良さそうに笑い出した。
『面白い巫女だ。そのもてなし受けてやろう』
そう言うと用意してあった食べ物を食べ尽くし、置いてある強い酒も全部飲み干してしまった。
その後、少し眠くなったのか黒呂の目がだんだんと閉じていく。
しばらくして完全に眠ったのか、頭を祭壇のほうにもたれかけてきた。
私はチャンスだと思い、棺の中にいるカエデに声をかけた。
「カエデちゃん!今がチャンスだよ!そこから逃げて!」
「は、はい!」
カエデは起き上がると棺の中から飛び出した。
私は祈祷用に備えられていた昔からこの村に伝わる剣を手に取ると豪華な衣装を脱ぎ捨てそれを持って黒呂の首めがけて走る。
祭壇の上に駆け上がり、剣を振りかざそうとしたその時だった。
『貴様、何をしている!』
黒呂が目を覚まし、私の持っている剣を尻尾で叩き落とした。
「あっ!」
その弾みで体勢を崩した私をカエデが支えてくれた。
「大丈夫ですか!ななかさん!」
「ありがとうカエデちゃん!」
その間にも怒り狂った黒呂が攻撃をしかけてくる。
攻撃を交わしながら、村人たちに被害が出ないように神社と反対方向に走る。
『オレから逃げられると思うな!』
黒呂の尻尾が近くの地面に叩きつけられるのを見た私はとっさにその尻尾にしがみついた。
『人間ごときが!振り払ってやる!』
黒呂がもう一度尻尾を振り上げ、しがみつく私を投げ飛ばす。
投げ飛ばされた私は宙に舞い上がり、黒呂の頭上を捉えた。
「カエデちゃん!!!聖剣出して!!!」
思い切り叫ぶ。
「はいっ!!!!」
カエデがオールを使うと私の前に聖剣が現れた。
それを掴み、黒呂の眉間をめがけ剣を振るう。
「はああああああ!!!」
『ギャアアアア』
聖剣は黒呂を真っ二つに切り裂いた。
咆哮をあげながら黒呂は消えていく。
黒呂の姿が完全に消え去ると辺りに静けさが戻ってきた。
村人たちが見上げる空には黒い雲が消え去り、明るい青空が何事もなかったかのように眩しく輝いていたのだった。
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