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第24話 井村家への輿入れ

 次晴(つぐはる)に呼ばれ、私は家臣たちが揃っている座敷に座った。

「ななか様、今、この柊里(しゅり)城に危機が訪れていることはご存知でしょうか?」

次晴(つぐはる)が険しい顔で私に尋ねる。

私が(はやて)の顔を見ると、(はやて)は大きくうなづいた。

(はやて)さんから聞いています。戦が近いんですか?」

「そうです。この城も郷野貞宗(ごうのさだむね)の標的にされようとしています。しかし、我々の戦力ではとても郷野に敵いません。そこでですが……」

次晴(つぐはる)はそう言うと、私を真正面から見つめる。

「ななか様、井村家へ嫁いでいただけませんか?」

「へっ?嫁ぐ……?」

(嫁ぐって、結婚ってことだよね???)

「お家のためなのです。わかってくだされ」

次晴(つぐはる)を筆頭にそこにいる全員が私に頭を下げた。

「いや、みんな顔を上げてください!」

私は慌ててみんなに声をかける。

「あ、あの、井村家ってどんな家なんですか?」

「この城から1番近い葵山城(きやまじょう)の当主が、井村直良(いむらなおよし)殿です。その長男の直政(なおまさ)殿の元へ嫁いでいただきたいのです」

「政略結婚ってことですよね?」

私ははっきりと次晴(つぐはる)に尋ねた。

「はい……」

次晴(つぐはる) は申し訳なさそうに下を向く。

「わかりました。私、井村家に嫁ぎます」

私が覚悟を決めなければこの城が危ない。

私は決意を固めて宣言をしたのだった__。


 数日後。

葵山城(きやまじょう)へ向かう駕籠(かご)に私は乗っていた。

綺麗な着物を着せられ、胸元には守り刀。

「なんか、みんなの手前、嫁ぎます!なんて言っちゃったけど大丈夫かな?心配になってきた、はぁ……」

ため息をつきながら駕籠(かご)に揺られる。

弱小城のため、お供は数人。

いつもお世話をしてくれた侍女たちが着いてきてくれたのがすごく心強かった。

しばらく行ったところで、徒歩で移動している従者が私に声をかけた。

「ななか様!あれを!」

私は駕籠(かご)御簾(みす)を少し上げて外を覗く。

そこには、馬に乗って高い丘の上から私の乗る駕籠(かご)を見つめる(はやて)の姿があった。

「何かあればすぐに駆けつける!お前は何も心配するな!」

(はやて)はそう言って手を振っている。 

「わかりました!行ってきます!」

私も手を振りながら、大きな声で(はやて)に答える。

その間にも私を乗せた駕籠(かご)は移動していく。

小さくなり、だんだん見えなくなっていく(はやて)の姿を、私はいつまでも見つめていたのだった__。


 葵山城(きやまじょう)は城下町と豊かな田畑を広い敷地に取り込んでいる城だった。

敷地の周りをお堀でぐるりと囲んでいる、惣構(そうがまえ)という作りらしい。

敷地に入るための門をくぐると、民たちが普通に生活をしている。

「わぁ、広い!!!」

山から降りて来たため、余計にここが広くみえる。

感心しながらしばらく行くと、天守閣が見えてきた。

(ここが……)

私は急に緊張し、身体が震えてしまう。

(大丈夫、何かあったら(はやて)さんが来てくれる……)

そう自分に言い聞かせ、到着を待ち構えていた井村家の家臣たちのほうを向いたのだった__。


「お待ちしておりました。ななか姫」

出迎えてくれた、井村家の家老、大川嗣久(おおかわつぐひさ)が私に声をかけた。

直良(なおよし)様と直政(なおまさ)様がお待ちです。どうぞこちらへ」

そう言って嗣久(つぐひさ)は私の前を歩き出した。

私は緊張の面持ちで後ろをついていく。

「ななか姫がいらっしゃいました」

嗣久(つぐひさ)が座敷の中に声をかける。

案内された座敷の上座に直良(なおよし)が座り、その横に控えるように直政(なおまさ)が座っていた。

「ななか姫、よくぞお越しくださった。愚息ですが、直政(なおまさ)のことをよろしく頼む」

「は、はい。こちらこそよろしくお願いいたします」

私は、挨拶をしながら隣の直政(なおまさ)を覗き見る。

直政(なおまさ)は私に興味のない様子でボーッと何かを考えいるような態度だった。

(相手も結婚に乗り気じゃなさそうだな)

少しホッとしている自分を感じながら、私は挨拶を済ませるとその場を後にしたのだった__。














 












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