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第14話 ルビーの過去

 足音がどんどん近くなってくる。

私はレオンにきつく抱きしめられたままどうすることも出来ない。

足音は私たちの目の前で止まった。

「あら、あなたたち……」

誰かは見えないがよく知った声が聞こえてきた。

ルビーだ。

「へぇ、あなたたち、そういう関係だったの?」

少し怒りを含んだとげとげしい声だ。

(ちょっと!どうすんのよ〜!)

私が焦って動こうとするのを抑えながらレオンが答える。

「お恥ずかしいところをお見せいたしました。実は(わたくし)とななかは恋仲でして……」

(は?何言ってんの!)

ジタバタする私の耳に口を近づけてレオンが小声でささやく。

「話合わせろ」

(え〜〜〜!)

私が拒否する隙を与えずにレオンは優しく私に語りかける。

「もう遅いから部屋に戻って。おやすみ、ななか」

チュッ

レオンは私の額にキスを落とすと私を部屋に行くように促す。

「へっ?!あ。お、おやすみなさい……」

(な、なっ、!!!)

レオンは外国人だから額にキスなんて挨拶程度なのだろう。

こんなことで動揺してはいけないがたぶん顔が真っ赤だと思う。

私はルビーに顔を見られないようになるべく下を向いたままお辞儀をした。

「ルビー様、失礼いたします」

そして足早に自分の部屋に戻ったのだった。


 次の日。

(昨日眠れなかった……)

私は昨日の出来事を思い出す。

とっさの出来事とはいえ、レオンの自分勝手な行動に振り回されっぱなしだった。

「あーもう!仕事して忘れよ!」

余計なことは考えないようにしよう。

私はメイド服に着替えて今日の仕事のことだけを考えるよう自分に言い聞かせた。


 ローラと一緒に朝の準備を始める。

今日着る洋服をあらかじめルビー本人が選んでおり、それを朝ルビーの部屋まで持っていく。

コンコン

ルビーの部屋をノックすると返事が聞こえてきた。

「どーぞ。入って」

いつもと変わらない様子にホッとする。

「おはようございますルビー様。御召し物をお持ちしました」

私がルビーの洋服を持って部屋の中に入る。

ルビーはそれを確認すると私に指示を出す。

「そこに洋服を掛けてちょうだい」

私はルビーに言われた通りに洋服を掛ける。

するとそれを見たルビーが絶叫した。

「何よこれ!洋服がところどころ切られてるじゃない!」

私とローラはあわてて洋服に近づく。

よく見ると洋服のレース部分や裾の部分が細かく切られている。

「申し訳ございません。すぐに新しい御召し物をお持ちいたします」

ローラがあわてて洋服を持ち帰ろうとしたがルビーがそれを手で制す。

そして私のほうを見て怒鳴った。

「あなたの仕業でしょ!(わたくし)がいつもレオンと2人でいるから嫉妬してるんじゃなくて?」

(え?どういうこと?)

一瞬何を言われているのか理解できなかったがすぐに昨日のことを思い出した。

(もしかして、昨日のことで私に嫌がらせを?ルビーが自分で洋服を切り刻んだの?)

考え込む私に容赦なくルビーは続ける。

「もうあなたの顔見たくないわ。出てって!!!」

そう言うとルビーは近くにあったぬいぐるみを私に投げつけた。

(痛っ、)

それを見たローラがすぐに私の手を取りルビーにお辞儀をした。

「失礼いたしますルビー様。……行こう、ななかちゃん」

ローラは呆然と立ちつくしている私の手を引き、足早にルビーの部屋を出たのだった。


 ルビーの部屋を出てメイドたちの集まる部屋まで戻ってきた。

ローラは心配して私に尋ねる。

「ななかちゃん大丈夫?ケガしてない?」

「うん、大丈夫。ありがとうローラ」

先程の仕打ちの後にローラの優しさが嬉しくて泣きそうになる。

しかし私は涙をぐっとこらえた。

そんな私を見てローラが話し出す。

「ルビー様、なんでこんなふうになってしまわれたんだろう。やっぱりあのことで……」

「あのこと?」

「うん、実はね……」

ローラは過去にあった出来事を話し出した。


 2年前、ちょうどローラがこの屋敷に来て1年が経とうとした頃。

ルビーの家であるウィリアムズ家と隣国にあるハリソン家が領地争いを起こした。

それまで両家は円満な関係を築いており、ハリソン家の次男であるノアとルビーは結婚まで決まっていたのだった。

しかし、戦況は増すばかりでルビーとノアは会うことすら許されなくなってしまった。

その頃からルビーが別人のように変わってしまったという。

「ルビー様はとてもお優しい方だったんだよ。ノア様もとても素敵な方で」

ローラは当時を思い出して悲しそうな顔をする。

「そんなことがあったんだね……」

私はローラの悲しそうな顔を見てあることを思いついた。

「そうだ!ノアさんに会いに行かない?2人を会わせてあげようよ!」

私の提案に驚くローラを前に、私はどうやって2人を会わせようかと作戦を考え始めるのだった……。



























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